GAME REPORT

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5/27(土)・練習試合・鹿島アントラーズ戦 2006年5月27日(土)18時24分31秒 deletemodify

久々の出稽古。鹿島でアントラーズとの対戦だ。
雨の予報だったが、幸い東関道を進んでいくほどに天気が良くなってくれた。



鹿島クラブハウスのグラウンド。前にサテライトで来た事があったはずだが、たぶん数年ぶりのはずだ。相変わらず芝は綺麗で、地元の観客もまた多い。自然にクラブハウスに人が集まってくる様子から、この地域とクラブの関わりの深さが垣間見える。
とりあえず席を確保すると、岩政やアレックス・ミネイロが軽いランニングで汗を流していた。リハビリなのかも知れない。

千葉1(1−1、0−1)2鹿島

【得点者】
前半38分:和多田[※練習生](左から楽山のクロスをヘディング)

【前半】
千葉:SH06/CK03/FK09/GK04/PK00/OFF03
鹿島:SH06/CK00/FK08/GK05/PK00/OFF02

<試合開始時>

−−要田−−和多田−
−−−−工藤−−−−
楽山−−−−−−水野
−−伊藤−−松ヶ枝−
−竹田−中島−藤田−
−−−−櫛野−−−−


結果は負けだったが、収穫のある試合内容だった。
トップ出場経験者の多いジェフがゲームの流れを全体的に支配しつつ、カウンターで鹿島が鋭い攻撃を仕掛ける展開。ジェフはパスを繋ぐ意識が強く、鹿島はまずドリブルで勝負して持ち上がって、詰まったらパスで打開を図る戦い方だった。

ジェフは、トップ同様のマーキングで相手の自由を奪い、奪ったら戻してから左右に大きく展開して、サイドから攻撃を仕掛ける。鹿島の両サイドは、かなりスカスカで、こちらは、基本的にウイングバックのラクか水野が1枚で構えているのに、簡単にサイドチェンジが足元に収まる。
そこから中に切れ込んで、シュートと言うシーンが試合を通じて多くあった。

序盤戦は、特に水野と藤田が絡んで右からチャンスを作るシーンが数回あった。藤田は、反対サイドのラクへの大きなサイドチェンジを何本か決めており、怪我からの復帰と同時に試合勘の回復も感じさせてくれた。

他の選手達も、全体的に運動量もまずまずで、ボールを奪ってから攻撃の枚数が少ないと言うシーンもほとんど無かった。ただ、前半の多くの時間で和多田と浩平は消えてしまっていた。和多田は、怪我の影響があるのか、身体が重い。自分の頭が「こうプレーしたい」と思うイメージに、身体がついていっていないように見えた。

流れを掴みつつある序盤戦、そろそろ先制点が欲しいと思い始めた時間帯、21分、逆にシュートを決められてしまう。鹿島のペナルティエリア左で、中島からのパスを受けたラクが、中に向けてドリブルを開始する。シュートコースを区切られ、パスの出し先を探していたところで、目の前にいた松ヶ枝にボールを預けようとする。
ところが、このパスが松ヶ枝に届かずに、一気のカウンターを受け、独走されて櫛野までかわされて失点してしまう内容がまずまずだっただけに、惜しい失点だ。ミスからの失点ではあるが、鹿島の選手のボールを持ったら勝負する・自分が決める意識も素晴らしかった。

反撃を試みるジェフは、24分にゴール前正面からのFKをコーキが上手く巻いて決めたかに見えたがサイドネット。さらに27分には、ラクがまたも左から中に切れ込みつつ、マルセイユルーレットのように一回転しながらシュートを放つものの、ブロックされる。こぼれ球に伊藤が詰めたところでファウル、FKをラクが狙うものの、失敗。惜しいチャンスが続くも、決定打が出ない。

ジェフ攻勢の間にも、鋭いカウンターが何度も繰り出される。
練習生の外国人選手は、たぶん左MFだと思うのだが、ほとんどポジションに縛られずに、自由気ままにやっている。キープ力があり、スルーパスを出せるので、ここにボールが収まると、少々厄介だった。連携が整っていないので助かったが。

ようやく同点に追いついたのは、38分。
左サイド、ペナルティエリアの角あたりからラクが中へクロスを上げると、それまで全く消えていた和多田がヘディングでゴール。



そして、このタイミングで、藤田に代わってミツキが出場。
プレーを観るのは本当にひさしぶり。チーム全体を引き締めるように、大きな声を出して周囲に指示を伝える。そして、ラクがボールキープすれば、それを追い越して一目散にオーバーラップを仕掛けていく。のっけから、いきなり“らしい”プレーを見せてくれて嬉しくなった。ここで、前半終了。


【後半】
千葉:SH10/CK01/FK09/GK03/PK00/OFF03
鹿島:SH06/CK02/FK05/GK06/PK00/OFF04

<試合終了時>

−−金東秀−和多田−
−−−−加藤−−−−
楽山−−−−−−松本
−−伊藤−−工藤−−
−川上−中島−松ヶ枝
−−−−岡本−−−−

<鹿島>
※後半開始時。前半不明。
※練習生はブラジル人と思われる、若手選手。

−佐々木−−田中−−
練習生−−−−−大道
−−吉澤−−中後−−
山本−−−−−−後藤
−−大岩−−羽田−−
−−−曽ヶ端−−−−

後半、ジェフは晃樹に代えて、まずマツケン(松本)を投入。
テクニカルに単騎での突破が出来る晃樹に対して、マツケンはまだ直線番長の突破だ。周囲に活かされて、初めてそれが活きる。投入直後は、コンビネーションも悪く、なかなかチャンスに絡めなかったが、時間の経過と共に、徐々に良さが出てくるようになる。

ジェフ最初のチャンスは浩平から。7分、右中から左前に走りこむ要田にスルー、完全な1対1だったが、枠にもボールを飛ばせない要田。さらに、10分にも中央でボールを受けた浩平が和多田を走らせようとするが、和多田は走らずに、引いて足元にボールを要求。逆にワンツーから浩平を走らせようとするが、時間をかけ過ぎてカットされてしまう。

このプレー直後、こぼれ球に喰らいつき、何とかカウンターを防いで攻撃に繋げるミツキ。
復帰直後なのに、やや飛ばし気味にも見えるプレーが続いた。

13分にも、ラクから和多田にボールが出てシュートまで行くが、曽ヶ端が落ち着いてセーブ。

16分、要田out→韻in 櫛野out→岡本in(たぶん)
この頃から、急に雨が降り出し、一斉にスタンドの鹿島サポが屋根つきのエリアに逃れる。傘を広げる間に、曽ヶ端から「雨降ってきたけど、集中切らすなーー!!」と大きな声が聞こえてきた。

19分には、韻のシュートからコーナーキック。さらに、マツケンからミツキに繋いでシュートと、チャンスを作るジェフ。ところが、良い時間帯にまたもカウンターを喰らってしまう。例の外国人練習生に抜け出され、ペナルティエリア深い位置で余裕を持ってキープされ、佐々木?が落ち着いて流し込んで勝ち越し点を奪う。手数が少なく、抜け目の無い攻撃だ。

このくらいの時間帯で、攻守の切り替えの不味さが目立つ。
特に近くに居たから目立ったのだろうが、松本が攻撃で力を使い果たして、戻ろうとしない。チーム全体が前がかりになって、守備の意識の少無くなった事が、致命的な失点を招いてしまったのだろう。

25分には、ミツキに代えてトンスが入る。
この交代で松ヶ枝がDFに入り、工藤がボランチ、韻がトップ下に入る。ミツキや藤田の出場時間が短かったのは、恐らくはコンディションを慮っての事だろう。
さらに、竹田が傷んだので川上が交代で入る。ポジションは、そのまま入れ替わっただけだ。これで、後半終了時の布陣になった。



膠着状態が続く中、若手の連携からチャンスを作る。
伊藤の右への展開から、マツケンが頭で落として浩平をフリーで抜け出させ、引いていた韻が強烈な重たいミドルシュート!しかし、曽ヶ端の正面をついてしまう。
さらに、直後にも、マツケンからトンスがボールを受けて強烈なシュート!これも、曽ヶ端の正面でキャッチされるものの、可能性のあるシーンにサテも少しずつコンビネーションが良くなって来たなぁと感心する。

反対にがっかりさせられたのが、41分のプレー。
マツケンが抜け出し、マイナスの決めて下さいと言わんばかりのプレゼントパス。これを和多田が決められない。左にあっさり外す。その1分後に、ラクからのパスをヘディングシュートしたシーンでは、「引っ張ったでしょ!」といつまでも文句つけていたし。ちゃんと決められるシュートを決めないからでしょ。

その後、3分ほどあったロスタイムもチャンスはあったものの、決めきれずに敗戦。
よく攻め、形も作っていただけに、フクアリでの試合の時のようになんだか負けた気がしないゲームだった。


レポート中にも書いたが、個々にもチームとしてもプレーはまずまずだった。

<スタメン>

GK櫛野:1失点だが、完璧な1対1だったので仕方ない。コーチングは変わらず良い。

DF竹田:負傷退場だが問題ない軽傷と思われる。相手のFWに速さがある中で、よく喰らいついていた。攻撃参加したシーンでは、伊藤とのポジションの受け渡しがスムーズで良かった。
DF中島:あまり目立たず。最終ラインから長いパスをサイドに散らしていた。
DF藤田:負傷明けだったが、プレーの判断が良くなってきた。右サイドで、晃樹とのコンビネーションは良好で、逆サイドもよく見えていて、サイドチェンジも数本あった。

MF伊藤:潰し役として粘っこく効いている。ミドルシュートも威力がある。数回ベンチにも入っているし、今季の新人では一番出場が早いかもしれない。
MF松ヶ枝:こちらも粘っこい。明治のカラーか?ボールを奪ってから、自分でボールを運んで、そして展開する意識がある数少ない選手。怪我はまだ100%治っていないようで、完全復活が待たれる。
MF楽山:この中では個人で打開できる選手として、貴重な存在。ただ、失点に繋がったシーンのように、やや独り善がりに感じるシーンも。後は、年齢相応のキャプテンシーも欲しい。
MF水野:慣らし運転といった感じ。和多田がもう少し動けていれば、クロスも決定的になっていただろう。前を向いたまま、スピードに乗って繰り出すクロスは、和多田の身体がついていかなかった。
MF工藤:前半は完全に眠っていた。後半、ようやく多少仕事をし始める。少し運動量が減ったように感じるのが気になる。羽生の半分くらいは、チェイシングでも目立って欲しい。
FW要田:よく動いてボールを引き出していたが、決定機を枠にも飛ばせ無いのは×
FW和多田:正直、動きが良くない。怪我上がりの影響も多分にあるのだろう、当たる事を恐れてしまっている。自分が考えている「あそこまで走ってボールを触りたい」と言う事に、身体がついていっていない。決定機まで外してしまっては・・・今日の出来では獲得の必要性は感じない。コンディションを上げて、納得できるアピールを。

<リザーブ>

GK岡本:交代直後の失点は不用意だったが、それ以外は大きな問題なし。

DF川上:目立つようなシーンはなし。
DF市原:怪我上がりで短い時間のプレー。それでも、らしさは随所に見せていた。コーチングにオーバーラップ、シュートに、接触を恐れないディフェンス。完全復活を期待。

MF松本:直線番長も、ようやく周囲が間合いを解って来た感じ。パスが出て来るようになった。「ラクさん!ラクさん!」と呼ぶのはいいけど、もっと大声出してアピールしよう。攻撃一辺倒で、戻る事を忘れているのは×。

FW加藤:持ち前のフィジカルを試合の中で活かせるようになって来た。ある程度なら、身体を当てられながらもキープが出来る。左右に流れて、チャンスメイクもこなし、前を向けば強烈なシュートが飛ぶ。短い時間限定でトップで見てみたい。

FW金東秀:巻の代わりが出来るとしたら、彼か。後半25分過ぎからのチェイシングは、相手の疲労を確実に増していた。良いシュートも一本撃った。最近の中では、良い出来。

5/6(土)・第12節・横浜Fマリノス戦 2006年5月7日(日)12時54分23秒 deletemodify

浦和戦の快勝から3日、敵は自らの気の緩みとばかり思っていたが、それ以上に選手たちの体を蝕んだ疲労の影響は大きかったようだ。浦和戦のような、素晴らしい試合も出来る。けれども、それを毎試合続ける事は難しい。ならば、自分達のサッカーが出来ない試合をどうやってしのぎ、自分達のサッカーで戦える試合の回数をどうやって増やし、34試合のリーグ戦をどう戦い抜くかが優勝するチームと、出来ないチームの差になる訳だが・・・その意味で、今日はしのぎきりたい試合だった。


南風が強く吹き付ける日産スタジアム。
試合前から、報道は巻・巻・巻・・・巻一色だった。浦和戦でアピールに成功し、この日地上波中継するTBSは「巻カメラ」まで設置すると言う。その喧騒に誘われたのか、アウェイ側には、連休中とは言え人・人・人。およそジェフ戦とは思えないくらいの多くの人が観戦に訪れ、1階席がほぼ満員に埋め尽くされてしまった。
曰く「フクアリのゴール裏をそのまま持ってきた」ような状態。代表を目指す、阿部・巻の最後のアピールの場、オシム監督65歳の誕生日と、テンションは高かった。

サポーターは、当然、浦和戦の再現のようなゲームを期待する。しかし、キックオフから間もなく、それが難しい事が判ってしまう。
ジェフの生命線である運動量が目に見えて少ない。サボっている訳ではなく、単純に動かない。前日に見た練習では軽やかにも見えたのだが、相手がいる試合では、そうも行かなかったようだ。鈍った動き、ぶれたパスを横浜に狙われ、前線の大島めがけ、サイドのハユマめがけて散らされる。

いきなりの危ないチャンスが数本。
いつも90分間良いわけじゃない、時間が経てば流れが取り戻せる。そう思いながらも、なかなかその時間帯はやってこない。浦和戦では上手く機能した巻の1トップも、松田・中澤をはじめ、那須・河合も含めた180cmオーバーの守備陣に囲まれてまともに機能しない。そうなると、ボールの収めどころはクルプニになるのだが、前日練習を回避していたように、いかにも身体が重い。そうなると、羽生の動きも攻撃面で活きて来ない。
囲まれ、ボールを奪われ、何とかDFが身体を張ってコーナーに逃げ込む。セットプレーでは、中澤も参加して空中戦で不利を強いられる。横浜らしい、現実的なサッカー。迷いが無く、勝利への最短距離で力強かった。

正直、このクルプニの出来ならば、ハースを使って欲しかった気もする。
良い流れの時は変えないと言うことなのか、それとも見た目以上に先発で使えないコンディションなのかは解らないが、結局ハースには声がかからないままだった。

劣勢の中、先制点は突然訪れた。
左からのクロスを羽生が中央へ送り込むと、そこに待っていたのは智!目の覚めるようなジャンピングボレーで豪快に横浜ゴールを突き破った。
試合展開云々が関係ない、豪快な一撃。これ以上ない“祝砲”だった。

この一撃が試合の流れそのものも変えてくれれば良かったのだが、残念ながら横浜はそんな事で動じるようなチームでは無かった。むしろ、吹き付ける南風によってぐんぐんと上がった気温に、ジェフの足はますます止まっていくばかりだった。
大島のヘディングがサイドネットをかすめ、清水や吉田の動き出しを封じきる事が出来ない。身体さえ動けばと言うもどかしい展開。

1−0でハーフタイムに入ったときには、「ようやく」と言う言葉が相応しかった。
疲労感を感じさせる重い足取りで引き上げる選手たち。打開のためには、何か変化が必要だったが、リザーブメンバーに動きは無いままだった。
しばらくして、前半と同じメンバーがグラウンドに戻ってくる。櫛野が一人一人を激励して出迎える。45分の残り時間が長く感じた。

後半も、劣勢の展開が続く。シュートすら撃つ事が出来ない。
横浜は、疲れの見えた選手を次々と交代し、活性化を図っていく。のこり30分のところで、ついに久保を投入。さらに山瀬幸、ハーフナーと若手を投入する。時間の経過と共に、横浜の狙いがロングボールを最前線の選手に当てる、放り込み戦術になっていくのがわかる。

対するジェフは、クルプニに代えて中島を投下するものの、試合の趨勢にはほとんど影響なし。攻め込んでくる横浜にカウンターをあてるものの、どうしてもシュートにまで持っていけない。羽生→巻の決定的シーンも、巻にボールが渡る前に中澤がクリア。巻の局地戦は、残念ながら完敗だった。

そして残り5分を切ったところ、DFの集中が一瞬途切れたのか、ファーのハーフナーをフリーにしてしまう。194cmの高さからのヘディングを立石が何とかはじき出す。ボールは、ラインを割ったように後のビデオで見えたが、プレーオンでハーフナー→清水と繋がれて失点。そこからお互いに1点を取る為の打開策無く、ドロー決着となった。


判定に泣かされた部分があるとは言え、ゲーム全体としては横浜のゲームだったと言える。
如何せん動けなかった。身体も、ベンチも。
逃げ切れれば、今日の出来としては十分だったが。そうさせてくれなかったのは、横浜の戦術の徹底の賜物と言えるだろう。シンプルだが、現実的。それで勝ち点を積み重ねるのもまたサッカーだ。

試合後、オシム監督は長時間アマルコーチらと熱論。
勝ちきれなかったチームの戦いを、どう語っていたのだろうか?

65歳の誕生日を迎えたオシム監督。スタンドからの大きなコールに、手を振って応えた。いつまでもジェフの監督であって欲しい。けれども、いつまでも頼る事が出来ないのは皆分かっている。残された時間はあまり多く無いだろう。
リーグ戦は中断に入るが、選手・サポーターはこの引き分けの重みをしっかりと受け止めて、また前を向いて行かなくてはならない。

『(自分の誕生日よりも)ここまで選手たちがすごく頑張っていいプレーをして、勝利を重ねてきてくれたことのほうがうれしい。』
同じように、多くのサポーターがスタジアムを埋め、監督とその愛弟子達が描くサッカーを心から楽しむ、そう言う街を作っていく事が監督へ何よりもの報いになるはずだ。下を向いている暇は無い。12試合、3分の1が終わっただけだ。まだ、勝負はこれからだ。

5/3(祝・水)・第11節・浦和レッズ戦 2006年5月6日(土)23時13分6秒 deletemodify

「反骨心」それが、ジェフの力の源だ。
「弱小」と罵られた時代への、「不人気」と詰られる動員への、「落選」と決め付ける周囲への。「負けてたまるか」、そう誰もが強く思っていた。皆の気持ちを選手達は見事にピッチに描いた。これがジェフのサッカー。監督は四年前に言った「ジェフはジェフのサッカーをやる」と、正にそれだった。誇るべき一戦。強い気持ちの入った戦い。今改めて、このクラブを応援している事を誇りに思う。



快晴のフクアリ。
この日を向かえる前から、戦いは始まっていた。昨年秋、出来たばかりのスタジアムを、我が物顔で蹂躙された悔しさ、忘れてはいない。赤く染まったスタンド、二度とあんな光景は見たくない。ホーム・フクアリを黄色染め、最高のサポートをする。
そう願ったジェフに関わる全ての人たちの精一杯の意地が、6割黄色のスタンドを実現した。6割を少ないと言う人も居るかも知れない。声で負けていたと言うかも知れない。それでも精一杯を形にしたスタンド、選手達を迎える黄色いスタンドの準備は整った。

そしてもう一つ、忘れてはならない要素がある。
代表・ジーコ監督の視察だ。キリン杯代表の発表で、誠実過ぎるこの代表監督は、ワールドカップのメンバーがほぼ決まっている、当落線上の選手にはほぼ可能性が無い事を示唆してしまっていた。一縷の可能性を信じる選手達にとって、それがどれほどに残酷な事か。気持ちが切れてしまっても仕方が無い状況。
それでも、阿部は、巻は、諦めていなかった。それを周囲も感じていた。
「なにくそ」「冗談じゃない」どれほどの絶望と焦燥から、彼らは自分を奮い立たせたのだろうか。この試合のピッチには、沸き立つ反骨の心が漲っていた。


様々な感情が渦巻く中、かくして熱戦の火蓋は切って落とされた。
圧倒的な浦和の声量も、自らが全力で声を上げて居れば耳には届かない。

ジェフの布陣は3−6−1、出場が心配されたイリアンも強硬出場。ワシントンを大輔が、ポンテを水本が潰し、イリアンが一枚余る。中盤では、長谷部と小野に阿部と勇人が対応。攻撃陣は、羽生とクルプニのダブルシャドー。巻が最前線で身体を張る。
浦和はメンバーを少し欠いていた。GK都築、DF堀之内が怪我で欠場。MF鈴木が累積警告。その他の選手にも、万全とは言い難い選手が大く居た。ただ、選手層は極めて厚く、代わって出場したGK山岸、DF内館、MF平川、いずれも一線級の選手ばかり。サブにも酒井・相馬・永井らが控える豪華な布陣だ。

試合開始から、ジェフの選手達は一気の攻勢に出る。
開始1分、いきなり巻が中央でボールを受け、体勢を整えてシュートを放つ。だが、DFが必死のクリア。さらに直後には、素早いリスタートから羽生が抜け出し、スライディング気味にシュートするも、GKにブロックされる。体力配分も何も関係ないような怒涛の攻め。予想通りの真っ向勝負。引いたら負けだ。「そんなサッカーなら試合をやらない方がいい」と話した監督の言葉のまま、攻めに攻め続ける。

とにかく、プレスが凄まじく速い。
昨年のヤマハでの磐田戦を髣髴とさせる、猛烈なプレッシングで、2人・3人がすぐに浦和のボールホルダーに襲い掛かり、ロクにボールキープすら許さない。特に阿部の気迫は凄まじいばかり。代表の小野・長谷部らと対峙する時には、厳しく身体を当てて、次のプレーに移る事を許さない。浦和の選手のフォローが後手を踏む中、局面局面で数的不利を作られた小野・長谷部は分断され、苦し紛れにボールを戻す事しか出来ない。
さらに阿部は、攻め上がってゲームを作り、シュートまで放って見せる。オフサイドになった飛び出し、GK山岸にセーブされた渾身のミドル、点にはならずとも攻守両面で頻繁に顔を出す。浦和は、何度阿部を突破できただろうか?

そして、最前線では巻が一人で身体を張り続ける。
ボールを追い、ハイボールを競り合い、正確なポストプレーで起点になる。その周囲を、羽生がクルプニが駆け回り、左からは山岸が攻撃参加して、必死にフォローする。何をせんとしているかが分かる。皆が巻にボールを集めようと、彼のためにシュートコースを開けようとしているのだ。「W杯に行くんだ」強い決意を伴ったプレーで、巻がそれに応えようとする。相手が誰だろうが関係ない。身体を当て、戦う。

その巻のプレーが次々とチャンスを呼び込む。
15分には、山岸の左クロスに頭から飛び込んでネットを揺らす。しかしオフサイドの判定。大喜びのスタンドが、判定に疑問を呈すブーイングに変わる。
しかし、流れはジェフ。どこまで時間が進んでもジェフ。プレスの網は途切れる事無く、織物のように鮮やかだ。一方的に、ハーフコートに押し込む。予想をしなかった展開。
さらに巻が畳み掛ける。左クロスを受けた坂本から、勇人がダイレクトに折り返して、ドンピシャヘッド!これはGK山岸の左手一本のスーパーセーブに阻まれる。

ピンチが無かったわけではない。
カウンターから、ワシントンの狙い澄ましたシュートをかろうじて立石が弾く。浦和の「個」の力は、分断されても時折鋭い牙を剥いて来る。
攻撃の連続に、あっという間に時間が過ぎていく。ハーフタイム、攻め続けながら点が奪えなかった事に嫌な感じを覚えなくもなかったが、それ以上に期待感と言うか、勝てるという強気な気持ちが沸いて来る。

そして後半。
浦和は、阿部に押さえ込まれた長谷部を下げて、DFに若い細貝を投入。内館をボランチに上げて、守りの内館と攻撃の小野で役割分担を明確にして、バランスを整えようとする。この交代は、一定の成果はあった。ジェフが押し込む展開は変らないものの、散発的だが浦和のチャンスも生まれ始める。
小野がフリーでコースを狙ったヘディングシュート、ポンテは裏に抜け出して後一歩のところで立石を破る際どいシュートを放つ。CKからワシントンのヘディングに肝を冷やす。
どれかが決まっていれば、流れは変わっていたかも知れない。けれども、この日のジェフは素晴らしく集中して、最後の一線は割らせない。

プレスの網は変わらず浦和を縛りつけ続け、足りないのはゴールだけ。
阿部のダイレクトボレーも枠を捕らえられず、時間が少しずつ減っていく。焦る浦和の隙を窺い、その一瞬を待つ・・・浦和のロングボールが、ジェフのゴール前で跳ねる。イリアンとポンテが激しくポジションの取り合って競る。ポンテが倒れ、FKを主張して主審に異議を唱える。その間に、ボールはハーフウェーラインに大きく戻される。羽生が競り合いながらボールをキープする。タテに素早く送られたボールは、少し下がり気味にしてボールを受けた巻が、素早くフォローに入ったクルプニに預ける。ダイレクトで上げられたクロスは、巻が下がった事で前線に空いたスペースに駆け上がっていた勇人の胸へ。その胸で丁寧に落とされたボールは、坪井の横をすり抜け、待っていた巻の前へ。迷うことなく、「気持ちを込めて」強く強く振りぬかれた右足の力任せに、グラウンダーの強烈なシュートが、左ポストを叩いてゴールの右ネットへ飛び込んだ。
その瞬間、フクアリが歓喜の声に揺れ、赤の声援を遠くに押しやった。
一番決めて欲しかった選手の、会心の一撃。巻も、どうだと言わんばかりにスタンドを煽る。感情を爆発させ、歓喜の絶叫が上がる。その絶叫は、スタンドで見つめる代表監督への反骨の叫びだ。見たか、見ているか?これが、巻誠一郎だ!

がっくりとうな垂れる浦和の選手達。残り時間は15分、最後の反撃はお決まりの闘莉王の攻撃参加。百も承知のこと。すると、巻がいつの間にかDFラインに居た。闘莉王をマンマークし、身体で押さえ込みにかかる。際どいシュートも放たれたが、チーム全体がドン引きの守備になったわけではない。浦和相手に時間稼ぎは通じないと意思統一が出来ていたのだろうか、時間が過ぎても攻めの姿勢を失わずにカウンターの機会をうかがい続ける。

監督が動く。
勇人に代え、中島浩司。この中島が大仕事をやってのけた。
守備要員として投入されたはずの中島だったが、右サイドのカウンターから羽生のパスを抜け、一気に抜け出す。浦和のディフェンスは3枚。ところがするするとゴール前まで進む事が出来てしまう。
スタンドの心配をよそに、飄々と放った角度の無いシュートはおよそ中島のシュートとは思えないような弾道を描いて、あっさりと浦和ゴールに突き刺さった。歓喜と同時に、「決まったんだよな?」と不思議な気持ちになるゴール。「中島らしいと言えば、中島らしいか」そんな、何とも言えない歓喜と笑いがまき起こる、決定的な一撃だった。

こうなると逃げ切りだ。
すっかり勢いの無くなった浦和の応援を、「大脱走」が圧倒していく。ハース、ラクも投入して完全勝利への余裕の数分間を過ごす。主審の笛が吹かれ、大脱走は歓声へと変わっていった。

素晴らしい勝利。ここまで90分間、ジェフらしいサッカーを体現して勝ったことは、そうそう見たことが無い。去年の磐田戦、一昨年・その前の年の横浜戦、そこと並ぶかそれ以上の戦いだった。何よりフクアリの雰囲気も最高。誰かが誰かの為に戦う、「WIN BY ALL」の精神を形にしたような一戦だった。
サポも、選手も、スタッフも、誰もが充実した笑顔で勝利を喜び合っている。最高の空気だ。

ヒーローインタビューは巻。
またこれがサポ泣かせだった。代表の事をしきりに尋ねるインタビュアーに、
「今はジェフのチームとして戦っているので、ジェフの一員として勝利できた事を誇りに思う」と力強く切り替えした。
なんつーかね。こう言う言葉が最高に嬉しいのよ。このチームに誇りを持とうと、戦っている選手・監督から、そう言う言葉が出るのは。そう言って貰えない、苦しい時代があったわけじゃない。このフクアリの雰囲気、頼もしく成長した生え抜きの選手。本当に最高だ。

スタンド前に来た選手達の歓喜のでんぐりに、ハースの音頭で万歳!
さらに遅れて来た山岸と巻も万歳!
歓喜のオブラディに、ラ・バンバ揺れるスタンド。最高の一日になった。



さて、歓喜はここまで。

それにしても、次回からの浦和戦は、さらに熱い戦いになりそうだ。このまま引き下がるチームではない。個々の能力を考えれば、ここまで圧倒的な差のつく試合ではない、何がそうさせたのか。
もちろん、個々の力を前面に出すばかりに、組織が二の次になってしまったとか、分かりやすい得点源が居る事でどうしても周囲が頼ってしまう、そう言う側面もあるだろう。しかし、もっと大きな要因はこの試合に対して心の隙があったのではないかと思う。

浦和は今、『ビッグクラブ』と言われている。多くのサポーター、彼らが生み出す膨大な広告価値・資金力、それに見合う成績。負ける方がおかしいと言われるほどの、圧倒的な戦力。彼らは、クラブが大きくなる中で、いつの間にか周囲を見下すような心の隙が出来ていてしまったのではないだろうか。

元々、J開幕時からジェフも浦和も下位に低迷して苦しい時代が続いた。
それを思えば、まだ両チームとも何も成し遂げていない状態といえる。浦和が、クラブの規模を忘れてチャレンジャーとして戦うとき、それは強烈な敵となっているだろう。半年後、今度は埼スタで戦う。その時にはお互い上位同士で、今日以上のサッカーをやって、そしてそれを打ち破って勝ちたいものだ。

いろいろな面で正反対な両チーム。
次も好勝負を。

4/23(日)・サテライト第2節・湘南戦 2006年4月29日(土)21時57分28秒 deletemodify

磐田戦で体力を使いきってしまったが、眠い目をこすりながら平塚へ。
首都高の分岐をボーっと通り越して、遠回りして行くハメになってしまった・・・。

さて、曇り空の平塚競技場。前に来た事があるような気がしていたが、どうやら前に来たのは別の場所だったらしい。初めて訪れた平塚競技場は、大きな公園と一体になった、千葉で言うと天台のような場所だった。公園の中には、レストランもある。天台以外だと、等々力あたりにも近い感じだ。

さてこの日はスタンドからまったり観戦。
仲間数人と、スタンド中段に陣取る。残念ながら、メンバー表が配られないので、湘南側の選手が良く判らなかった。ジェフ側のスタメン。

−−加藤−−要田−−
−−−−工藤−−−−
楽山−−−−−−松本
−安里−伊藤−松ヶ枝
−−竹田−−結城−−
−−−−岡本−−−−

サブに、ジェフクラのGK筒井、DF川上、FW青木・トンス

DFの数が足りてない為か、2−6−2の変則システム。・・・何と言うか、DFが竹田と結城だけと言うのも、ノーガード戦法のようにすら見えてしまう。松本・ラクの位置も高いし、カウンターを喰らうと相当に危なっかしい。
また、サブの青木は、高校選抜の遠征を終え、ヨーロッパから帰ったばかり。姉崎で寝かしてやっても良いくらいだが、体を動かしていた方が楽なのか、疲れを見せずにアップで身体を温めていた。

試合の方は、サテライトにありがちな展開になっていく。
お互いのレベルがさほど高くない事から陥る均衡と言う感じか。

とにかく、声が少ない。ゲームキャプテンの結城をはじめ、トップ経験者も黙々とプレーしている様子で、この次のナビスコに出てやろうと言う気概だとか、ここで何かを見せてやろうと言う気迫だとかが、あまりスタンドまで伝わって来なかった。
普段の練習でやった事を、パターン通りに出来るかどうかの確認と言うか、それはそれで悪くないのだが、淡々と時間が過ぎて行った。試合は一進一退、ジェフが攻めれば湘南も攻める、攻守の切り替わりがハッキリした展開。湘南は、ワリと遠くから早めでもシュートを撃ってくる。反対にジェフは、崩しきってからシュートを狙おうとする。

少し目に留まる動きをしていたのは、松ヶ枝と松本。
松ヶ枝は単純に運動量がこの面子の中で一番ある。膝のテーピングが相変わらず痛々しいが、もうかなり動けるようになってきたようだ。局面でもしっかり身体を張るし、ボールが奪われればきちんと追いかれるし、最後まで走ってゴール前に顔を出す。
トップの試合に出る最初の条件は満たしている。

松本は、日立台の時に比べ、周囲のプレッシャーが弱かった事も手伝って、前に前に抜け出るシーンが何度か見られた。確かに速い。短距離なら対面した相手を千切れるだけのモノは持っている。けれども、その速さは単純に速いだけで、ドリブルだとかフェイントだとか、クロスだとか、その後のアクションにスピードに乗ったまま繋げないのが辛いところだ。だから、一人目をスピードで振り切っても、「車は急に止まれない」そんな感じで、その先に控えるDFに潰されていた。トップはまだまだ。

その松本と、左のラクを工藤が使いながら、湘南ゴールに迫るものの、いかんせんトップと同じくこねるばかりでなかなかシュートにならない。こねて、ボールを奪われ、カウンターを喰らう→奪い返して、繋いで組み立てるの繰り返し。チャンスもあったが、そのまま前半終了となってしまった。

後半、選手交代も無く、まったりとした試合展開。
ところが、さあこれからと言うところで、綺麗に崩されてゴールを奪われてしまう。最後は、2バックが2人とも振られる、完全な崩しだった。
先制されて少しは危機感が出たジェフは、ここから攻勢。失点から数分後、左のラクの突破に、最後は要田が泥臭く合わせて同点とする。その後も、突き放そうとする湘南の裏を突いて、再三カウンターを仕掛けるものの、メインスタンド側の主審に悉くオフサイドを取られてシュートまでいけない。まぁ、この主審もサテライトでありがちな、何でもいいから旗を上げておけ、的な線審だった。素早いリスタートから韻の強烈な左足シュートもあったが、GK正面。ともかく、ジェフは逆転のチャンスをモノに出来なかった。

後半30分になり、韻からトンスへ交代。
再攻勢と行きたいところだったが、最後の時間帯は完全に湘南ペースになってしまった。動きに疲れの見えたジェフを運動量で圧倒、積極的にシュートを放ってくる。正直、いつ1点入ってもおかしい展開じゃなかったが、ここで立ち塞がったのが岡本。
前節・柏戦からの好調さを如何なく発揮。至近距離からのシュートを止めまくってゴールに鍵をかける。単純に「当たっている」だけなら、GK陣の中で一番ノッている。ナビスコで使ってみて欲しい存在だ。

その岡本の活躍のおかげで、残り10分の攻められまくりの時間帯を潜り抜けてドロー。
ジェフのサテライトチームであると言う自覚があるなら、勝たなくてはならない試合だったが、練習試合と同じようにこなしてしまったようだった。


個々の選手に足りないものはそれぞれたくさんあるけれど、チームとして足りないのはやっぱり「声」、そして「アピール」。スタンドからの野次がこだまして返って来るのが聞こえるような静けさの中でプレーしていたら、気分も乗らないし、連携も上がらないだろう。そう言う試合をやってしまっていた。
そこで、前述のトップ経験のある選手たちだ。特に結城、要田、工藤、楽山。このあたりの選手が、坂本やかつてのウィマンのように、声を出していかなくては。
加えて、若手は自分の存在を、もっと身振り・手振り・声でアピールしないと。それがあってこその、サテライトチームじゃないのか。トップに混じれば、周りが引っ張ってくれるからそこそこ出来ます、じゃぁ足りてない。トップに出ても、自分が引っ張る。ボールを呼び込むんだと言う強い気持ちが無いと、やっぱり上には上がれない。

静かな平塚のピッチが、気温よりも寒く・広く感じた。
サテライトからの光明は、まだ、見えない。

4/22(土)・第9節・ジュビロ磐田戦 2006年4月29日(土)21時55分57秒 deletemodify

「あれは終わった話だ」
「いや、終わってなんかいない」

この試合に臨む気持ちがまとまらないまま、迎えてしまってはいなかっただろうか?去年のような、悔しさがブーイングの刃になっていた事も無い。憎たらしいほどの強さを纏っていた磐田への、反骨の精神もまた無い。スタジアムを包む空気が、同じ方向を向いていない、特別でない試合のようだった。
『風化』いや『消化』と言うべきだろうか、この一戦に望むサポーター個々の捉え方は、大きく変容していたようだ。


それでも試合は始まる。
イリアンの不在は大きな穴をチームに開けていた。大方の予想は前田の1トップに対して、2バックで臨むと言うものだったが、実際は中島浩司をリベロ的に配置する3バックシステムとなった。前田には大輔がマークに付き、もう一人のストッパー・水本は、相手の左・村井を押さえにかかる。昨年の対戦で2アシストを決められた村井。オシム監督も警戒をしてきたか。

−−−−18−−−−
−−09−−22−−
16−−−−−−02
−−06−−07−−
−−03−−−−04
−−−−15−−−−
−−−−01−−−−

磐田の布陣は、欠場も噂された菊地が先発。
その菊地が穴を埋めたファブリッシオが欠場の他は、ほぼベスト。ベンチには中山・名波といったベテラン勢が控える。

試合は、激しい主導権の握り合いになった。
どちらかと言うと押しているのは磐田。ジェフは本来ならばイリアンの穴を埋めるため、全体が前に出てプレッシャーをかけていかなくてはならなかったが、悪い時は中島のカバーをする為に全体が意識を後ろに持ってきてしまう。今日は、その悪いジェフが出た。

磐田の攻撃の中心は、前節2得点1アシストを決めた太田。
予想を通り、右WBに限定されずにあちこちに顔を出してくる。必ずスピードに乗って勝負を仕掛けてくるから、厄介なことこの上ない。こういう姿勢は、ジェフの選手にも欲しいところ。中島が対応しなくてはならないシーンは、明らかにミスマッチで、何度も「やられた」と思わせられた。この太田のせいで、シュートは少なくても劣勢に思えてしまう。

しかし、それ以外の選手は大体押さえ込んでいた。
もう一人のキーマン・村井は、水本が密着マークで動きを封じ、前線で起点になるべき前田は、まだコンディションが整わないのか、目立った働きが出来ない。守備が持ちこたえる間に、間延びした布陣を押し上げ、徐々に反撃に転じていく。

反撃の中心になったのは、阿部・巻の代表組。とりわけ、この試合は代表のジーコ監督が観戦していただけに、目に見える活躍して代表へのアピールをしたいところ。特に巻は、前節2得点1アシストを決め、調子も乗りに乗っている。チーム全体が、この二人に何とかして点を取らせようと言う空気を持っていた。自然に、ボールが集まっていく。
そして、巻には何度か良い形でボールが入っていたが、この日はそれが悉くファウルとされてしまう。競り合っても競り合っても。ペースを掴めず、苛立ちの募る巻。羽生へのアシストかと思われたパスは、オフサイドと判定され、それならばと智の左からの突破に飛び込むが、触る事が出来ない。
阿部のFKも壁。攻め手を失ったまま、前半は徐々に膠着して終わっていった。

どうにも流れが悪い。
選手から必死さは伝わるのだが、どうも普段通りにいかない。磐田にやられていると言うより、身体が重くて動かないような違和感。イリアンの存在を、殊更に大きく感じてしまう。

後半、とにかく先制点を!
そう思ってゲームに入ったものの、流れは大きくは変わらない。むしろ、前半は攻められこそすれ、シュートは撃たれていなかったが、後半はシュートで終わられてしまう。決定的なピンチもあったが、立石が何とか止めたり、相手が外してくれたりで、失点までは至らない。
相変わらず前線では、巻が苦心。その周りを、羽生がクルプニがフォローに入るものの、肝心なところでパスが通らずにカットされる。勇人のシュートも枠外。徐々に双方の中盤のプレッシングがルーズになり、「攻め合い」の様相を呈しはじめる。

磐田は相変わらず、太田が厄介。
その太田が創ったスペースを埋めてくる成岡も厄介。技術はそこそこ、それをスピードに乗った状態で駆使しているから、どうしても後手になる瞬間がある。少しずつ劣勢を感じ始めた。

こう言うとき、切り札が居れば・・・そう思っても、まだ切り札は生まれていない。
ある中で何とかしなくてはならない。監督も、いまベストと思われる布陣を崩したくは無かったのだろう。交代は残り時間も少なくなってからだった。楽山が投入され、左翼から中に切れ込んでシュートを狙ういつものプレーだ。1回目は失敗。そして、2回目は完全にコースが空いたのだが、不発。ゴール裏からため息が漏れる。

磐田も、中山・名波を相次いで投入して反撃。
中山のとにかくドコからでも撃って来る泥臭いシュートが、福西のジャンピングボレーが、立石を強襲する。けれども、紙一重で何とか耐える。心臓に悪いったらありゃしない。残り数分は、両チームの総力を賭けた攻撃の応酬。ジェフも、羽生が水本が後一歩のところまで攻め込むが、決定打が打てない。
そして、そのままスコアレスドローで試合を終えてしまった。

最後の決定機の質を思い出すと、負けなくて良かった、そんな内容ではあったが・・・磐田相手にホームでこの不完全燃焼感・・・去年の出来事が「終わったこと」には思えない自分には、どうにも悔しくて仕方の無いゲームとなってしまった。磐田を叩く事でこそ、より勢いをつけて戦えると思っていたのだが・・・。

磐田は盛り返しつつある。
戦術よりも、「個」の芽吹きが著しい。今までとは違う「強さ」を認識しなくてはならないだろう。これが、太田をはじめ、選手が欠けた時に出来るのかは分からないが、斜陽のチームと切り捨てるのは危険だ。

『ただ、ジュビロがいいチームになるということに疑いはない。以前のジュビロのようなエレガントなプレーはしないかもしれないが、ガツガツいくような強いチームにはなるのではないか。ただし、忍耐は必要だろう。』
去年の対戦の後の、監督の言葉が妙に頭に響いた。

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PBS v.1.01