偶然ではない。ミスを呼び込んだ木山監督。 第29節 vs山形 △2-2

偶然ではない。ミスを呼び込んだ木山監督。 第29節 vs山形 △2-2
今年は天候不順の為、いくぶん暑さは和らいでいるとは言え、
真夏の連戦、身体への負担は大きい。

水曜日、フクアリで湘南相手に見せた90分の猛烈なプレスも、
中三日で同じクオリティを見せるのは至難の業だ。

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アウェイ山形に乗り込んだ一戦は、出場停止の乾の位置に比嘉が入る以外は、
メンバーを変えずに臨んだ。徳島戦以来、メンバーの固定が続いている。
エスナイデル監督の中では、これが現時点のベストと言う事なのだろう。
(現実、湘南戦と言う内容的にベストのゲームを見せつけている)

DAZNの解説では、ピッチには水が撒かれていないと言う。
山形もボールを回す事を意図しているチームながら、
木山監督が、ジェフとの現時点の力関係を考えて、濡らさない選択をしたのだと言う。

試合が始まると、前節とは打って変わって、
なかなかシュートまで持ち込めない苦しい戦いを強いられた。

山形の前線のチェイスが厳しい。
滑らないピッチも影響して、ボールをすいすいと回す事は出来ずに、
荒れたピッチで引っかからないよう、慎重に、強めに蹴らなくてはならない。
必然的にテンポは落ちる。

そこに、佐藤、阪野の2人が猛然とつっかけるので、
ボールを後ろへ戻すシーンが増える。
普段よりもラインは押し下げられ、ハーフェーラインを挟んだぐらいの位置に、
両陣営が密集する状態が続く。ジェフの狙いからすれば、もう一段階ラインを高くしたい。

そうはさせじと、山形のチェイスが続く。
前節はほとんど無かったが、慎重に蹴ろうと持ち直した佐藤優が、
プレスに引っかけられそうになるシーンが前半早々にあった。

試合が終わってみれば、伏線となるシーンだったし、
木山監督としては、試合を通じて、ジェフの得意とするパターンを封じ込めようとすると同時に、プレッシャーを掛け続ければ、ジェフのディフェンスラインが『ミスを起こす確率が高い』事は、過去のジェフの試合を見て、十分分析していただろう。

苦労して崩すよりも、労せずして得点できる可能性が高いのだから。
つまり、ジェフとしては、その狙いを覆さねば、勝機は乏しかった。

前半、ある程度はジェフが攻め込みながらも、決定機がなかなか作れない。
ここのところ、また得点を獲る事に苦労し始めているのは、
連携が上がり、フィニッシュへのスピードが増した分、
最後の部分ではより正確なプレーをしないと、合わせられない事の裏返しかも知れない。

かといって、慎重になり過ぎれば、フィニッシュの前で網にかかる。
監督の言う「自分を信じること」は、慎重になり過ぎ、相手の守備に遭う前に、
シュートまで打ち切る事を伝えようとしているように思う。

思うに任せない展開の中、またしてもセットプレーでゴールをこじ開けられる。
37分、山形のコーナーキックからのこぼれ球を、
狙い澄ましたミドルを叩きこまれて失点。
さらに終了間際にも攻め立てられるも、佐藤優のファインセーブでこれを凌ぎ、
0-1で前半を終える。

迎えた後半の前に、監督からは「戦士になれ」と、猛烈な檄が飛ぶ。
カメラの前では温和な笑顔だったが、ベンチではいったいどんな形相で選手達にこれを伝えているのだろうか。監督の中でも、相当に前節の悔しさをこの試合で晴らしたいと言う想いがあったんじゃないだろうか。

が、後半になっても、展開は大きく変わらない。
木山監督にアウェイでリードを許したなら、粘り強くこちらの良さを潰して来るのは自明。
なかなかシュートシーンは増えない。
疲労も溜まっていく。

流れの中からチャンスが創れないジェフだったが、打開したのはセットプレー。
後半11分。右サイド矢田のFKからラリベイが頭で合わせて、同点ゴール。
試合を振り出しに戻す。

一気に畳みかけたいところだったが、状況は膠着。
潰しあい、競り合いの中で、也真人が、清武が、ラリベイが、イエローカードを受け、
それぞれ次節出場停止になってしまう。恐れていた事だが、これは仕方が無い。
とにかく、この試合で勝利をと言う想いが強くなる。

監督の交代策は、

船山  → 為田
也真人 → 指宿
比嘉  → 若狭

このうち、也真人の交代が興味深い。
過去に試した、ラリベイ、指宿のツインタワーにしたこと、そしてイエローが出ていたとはいえ、也真人を下げて、矢田をトップ下に残したこと。監督の矢田への信頼が、急速に深まっているのではないかと感じさせる一手だった。

また、比嘉が交代した際には、ボムヨンがサイドバックへポジションを代えている。

監督からすれば、残り時間と疲労も考慮して、
前節、前々節同様にパワープレーで、「ボールが良いところにこぼれてくれれば」と言う狙いだったろう。しかし、なかなか良い形は出来ない。

伏線が、徐々に、本線に重なっていく。
時間が少なくなり、ホームでの勝利を目指す山形の攻勢。
放り込まれたFKをクリアしようと、前に出た佐藤優が近藤と激しく衝突する。

治療の時間がかなりとられ、長いアディショナルタイムへと繋がった。
もしこの接触が無かったら、もしかしたら、最後の失点の前に、ゲームは終わっていたかも知れない。その意味でも、この接触も伏線の一つだった。

双方が消耗激しい中、ジェフも前に向けて大きくボールを蹴りだす。
前線に残っていた近藤が競り、指宿が合わせようとするものの、ミートせず、
ボールはラリベイの足元へ。
シュートが振り抜ける体制ではなかったが、これをアウトサイドで合わせ、技ありのシュート。バーを叩きつつ、ゴールへ流し込む。後半42分。

今日はラリベイの誕生日。
自身で祝砲2発上げ、残り時間も僅か。
後は何とか守りきれば、と言うところまではこぎ着けた。

が、そうは問屋が卸さなかった。
アディショナルタイムは6分。

粘っ
凌ぎたかったが、あまり上手に時間を潰す事が出来なかった。
前線で思うようにキープできず、コーナーキックを奪えず、逆にゴールキックを許し、そこから山形の攻撃を食らってしまう。

3分が過ぎた頃、ジェフ側に大きなボールが送られる。
なんでもないボールに見えた。

ところが、観ている側からすれば、「なんでそんな高い位置まで?」と思うくらい、ディフェンスも十分いる密集の中に、佐藤優が突っ込んできた。近藤と交錯し、ボールに触れない。こぼれたボールが、山形に流れ、ガラ空きとなったゴールに、シュートを流し込まれてしまった。

呆然とする佐藤優。
監督も、サポも、同様だった。

勝ちたい気持ちが、強く出過ぎてしまったのだと思う。
それが痛いほど分かるだけに、かえって、その姿が痛々しかった。
彼を責める事は出来ない。
現地に居た、サポーターからの佐藤優也コールと、彼を励ますチームメートだけが、
このプレーに関われる。

試合はドローに終わった。
正直、痛い。

最後のプレーを責めるつもりはない。
が、チームとしてミスはミス。
そして、偶然のミスでは無く、敵将・木山監督の明確な狙いによって誘発されたミスだ。

これを、どうやって防いでいくかが、
勝ち点を上積みする為の大きな課題になっている。
木山監督が、最初から狙っていたように、ディフェンスラインと、キーパーとの連係ミスを誘発することは、相手チームにとって極めて有効な、ジェフから点を奪う為の作戦になってしまっているのだから。

ここまで、ジェフは、佐藤優の恐らく期待以上の戦術への適応と、成長で助けられてきた。
シーズン前、強化部としては、海人を正GK候補として獲得していたはず。
強化部の想定以上の特殊な戦術に、キーパー陣が四苦八苦する中、佐藤優が一番に伸びた。
戦術への適応、数々のファインセーブ、PKストップもあった。
もし佐藤優がここまでやってくれなくては、もっと成績は悪かったろう。

が、チームとして、より勝ち点を積み重ねるには、
今日のゲームのようなミスは、限りなくゼロに近くしなければならない。

なぜなら、ハイライン戦術が問題では無く、判断次第で防げた失点だからだ。
チームとしては貴重な外国籍枠を割いて、オへーダを獲得したあたりに、
ポジションの重要さと、危機意識を強く持っているようにみえる。

これから、オヘーダが使われていくのか。
それとも、佐藤優の一層の成長や、海人、大野、岡本らの巻き返しになるのかは分からないが、「チームとして」乗り越えなくてはならない課題ではある。

シーズンが進み、ワンプレー、ワンプレーが、
昇格や、あるいはプレーオフに向けて大きな重みを持つことになる。

勝利を掴み取るのもチームの力なら、敗戦の原因を突き詰め改善するのもチームの力だ。

このミスを乗り越えて、佐藤優が、昇格を争う紙一重のシーンで、今度はチームを救い、歓喜の雄たけびを上げる事を願って止まない。