きっかけになるべき試合 2021 J2第5節 vsFC琉球 ●1-2

きっかけになるべき試合 2021 J2第5節 vsFC琉球 ●1-2

2021/03/27(土)14:00
フクダ電子アリーナ
J2第5節
千葉 1(0-0,1-2)2 琉球

<得点>
72分 千葉 39見木(37ブワニカのカットから、39見木→16福満と繋ぎ、再び39見木が受けてシュート)
75分 琉球 16阿部(7田中のクロスを頭で)
80分 琉球 18清水(7田中のクロスを頭で)

千葉公式
琉球公式
Jリーグ公式

負けて、こんなに悔しいのは久しぶり。
勝って終わりたかった。そして、チームに自信をつけて欲しかった。
それができるまで、あと少しのところまで、試合をコントロール出来ていたのに。

結果だけを除けば、尹晶煥監督に代わってから最高に近い内容だったと思う。
これまで一向に装備されなかった「カウンター」がようやく形を見せ、
時間帯によっては相手に押し込まれながらもブロックを作って耐え、
ただ守るだけではないゲームの流れを作る事が出来ていた。

そして、粘り強く戦い、先制点をも、もぎ取った。
後は、この先制点を駆け引きに使って、勝ちきるだけだった。
それが。。。

最少得点で勝ちきる事を、勝ちパターンの一つとして目指すチームが、
75分、80分。
同じ形で失点し、逆転負け。
歓喜は、瞬く間に失望に変わった。

ステップアップするために、
その「なぜ」を克服しなければならない。

前節と同じスタメン


桜咲くフクアリ。
今日も天候に恵まれ、春本番。
日差しが厳しく、暑さすら感じる陽気。

緊急事態宣言が解け、アウェイ席が復活。
スタンドにも久々に活気が戻って来た。


送り出されたメンバーは、ベンチも含め、初勝利を挙げた前節松本戦と同じ。
ブワニカをはじめ、岩崎、壱晟。
これまでのジェフに比べるとかなり若いメンバーだ。

一方の琉球。
ここまで四連勝。
特に前線は厄介なタレントが揃う。
元ジェフの清武をはじめ、風間兄弟や、上里、阿部拓馬と言った実力者がスタメンに名を連ねる。


綺麗な円陣が解け、14時キックオフ。
この日のジェフは、見違えるように積極的さで試合に入っていった。

前半は大きく3つの時間帯に分かれる。
概ねだが、まず前半5分まで。次に5~35分までの30分間。そして35分から前半終了まで。

 

前半5分まで

驚いた。5分までに、実に4本のシュートを放ったのだ。
見木、小島、小田、壱晟。
セットプレーからもあれば、ミドルシュートも。

こねるばかり、戻すばかりで一向にシュートまで行かなかった、行けなかったジェフが、全く別チームのように次々とシュートを撃つ。これには、琉球も面食らったようだった。まともに、その「圧」を受けてしまったようだった。

が、連勝中の琉球は、すかさず立て直す。

 

前半5~35分まで

時計が5分を過ぎると、少しゲームが落ち着いた。
琉球にセットプレーの機会が増え、フィニッシュに至るケースが増える。
キッカーは上里に清武。少し対応を誤ればゴールをこじ開けられる。

が、この時間帯のジェフは、セットプレーでマークを外す事なく手堅く守り、流れの中でも、ブロックを作って相手を封じ込めながらも、カウンターの「刃」を残して、琉球の攻勢の裏を狙っていく。

18分には、見木から左の岩崎に繋ぎ、左クロス。福満に合わず、と言う場面。
さらに飲水休憩後の31分には、岩崎がペナルティエリア内から対角線上に決定的なシュートを見舞うも、キーパー・田口のファインセーブに遭い、決める事が出来ない。

一方的にやられているのではなく、狙いを持って守り、攻めているのが見て取れた。


その中心に居たのは、高橋壱晟。
前節の得点で、自信もつけているのだろう。プレーに迷いが無くなっていた。球離れがよく、ほとんどのボールをワンタッチで処理してボールを停滞させない。琉球は、壱晟に圧力をかけても、シンプルにサイドや、前方へボールを展開され、押し込むことが出来なくなっていた。

加えて、彼自身が、隙あらば遠目からでもシュートを撃ち込んでやろうという意識がある。
守備一辺倒にならなかったのには、彼の存在が大きかった。

そして、その壱晟をハブに、前半終盤にかけ、再びジェフが攻勢に出る。

 

前半35~試合終了まで

37分の、見木のFKから、伊東のミドルにはじまり、
この時間帯に、岩崎、壱晟、そしてブワニカが、次々にシュートを放ち、試合の主導権を再び握り直す。

前半は、0-0で終わったものの、見違えるような攻撃だった。
スタンドからも、引き上げる選手たちに大きな拍手が起こる。
ようやく、何か、攻守表裏の揃ったサッカーを見ている感覚があった。

 

狙い通りの試合運び、そして先制点

後半、両チーム選手交代は無し。
こちらが手応えを感じるという事は、琉球からすれば思うに任せない前半だったろう。

琉球にとって悪い流れを振り払うかのようにキックオフから鋭い攻撃。
右の伊東がかわされ、クロスで左右に揺さぶられると、中央から肝を冷やされるシュートを撃ち込まれる。

一進一退の展開が続く。
どちらか一方にペースが傾くのではなく、お互いにチャンスがやって来る。
56分には、カウンターから、見木そして、攻撃参加していた新井一耀へと繋げてシュートに至る。こういう、意外性のある攻撃参加は久しぶりに見た。


失敗するケースも多いのだが、ジェフがカウンターを狙おうとしているのが分かる。
その際にキーになっている一人がブワニカ。
松本戦の得点もそうだったが、期待以上にボールに追いつく。
そして、ボールを奪う、あるいは圧力を受けながらもボールをキープして、「タメ」を作って、ボールを前に繋ぐ。試合を追うごとに、彼からボールが出る事を信じて走る選手が増えた。

琉球は61分に清武と池田を下げ、高さのある上原と、前線で機動力のある清水を投入。

目まぐるしい展開でなかなかボールが切れない。
69分には、右のクロスを中で受けた見木が、斜めに切れ込みながらシュートを放つも枠外。これは決定的なチャンスだった。スタンドから大きなため息。

ここで飲水タイムが取られる。
その直後だった。

再開直後72分、ブワニカが足を伸ばしてカット。前線にこぼれたボールを、見木が競り合って奪い、右の福満に預ける。見木は福満から再びボールを受ける。
先ほどと同じような形、今度はそれを豪快に突き刺した。先制点。
スタンドは総立ちとなり、声にならない声、ガッツポーズが溢れた。

瞬く間の逆転

ここから先の采配については、賛否両論はあるだろう。
が、私自身としては、尹晶煥監督の采配は、妥当なものだったと考えている。

先制点を挙げるまで、この日のジェフは非常に上手く試合をコントロールで来ていた。
最終的にガチガチに守るフォーメーションに切り替えるにしても、少しの時間であれば、メンバーを変えなくとも、1-0の状態をキープ出来ると考えられた。

まして、琉球は先日の松本よりも、攻撃に対する圧力がある。
残り20分間引き籠ったとして、こじ開けられる可能性も多分にあった。

現状維持のまま、時間をすり潰し、機を見て専守防衛の5バックへ移行。
そういう算段で居たと思う。

それがまさか、先制点の3分後。
左の岩崎を抜き切る前に、右SB田中がアーリークロス。
中で阿部拓馬が鈴木大輔の前に入って、フリーでヘッド。
あっさりと、ワンチャンスを決められて同点に。

そして、その5分後にも、ほぼ同じ形で田中にクロスを上げられ、今度は伊東がついていながら、清水に前に滑り込まれてまたもヘッド。

逆転を許すとは。。。
全く信じられなかった。

 

5枚替えの総攻撃へ

逆転され、ジェフは遮二無二攻めた。
見木が、岩崎が、強引にシュートまで持ち込む。


さらに、アディショナルタイム間際には、なんと5枚替え。

福満 → 櫻川
壱晟 → 小林
岩崎 → チャン
小島 → 船山
伊東 → 溝渕

伊東は、おそらく少し足を痛めたのではないかと思うが、それ以外は完全にパワープレー要員。新井一耀も前線に上げ、とにかくボールを放り込む。AT5分、攻めに攻めたが、こじ開けられず。

掴みかけていた勝利を、まるであの2つの失点の場面だけ夢の中にいたように、集中力を失ってしまって、ホーム・フクアリで勝利を上げる事は出来なかった。

琉球はこれで、新潟と並ぶ5連勝。
昇格レースを頭一つ抜け出る勝利となり、反対にジェフは、内容の伴ったゲームで結果を残して、波に乗る絶好の機会を逃してしまった。

 

きっかけになるべき試合

悔やまれる敗戦。
なぜここまでゲームを作りながら、集中力を欠いてしまったか。

先制点の後の残り時間、どう試合を終えるのか、選手間の意識が、、、とか言いようはあるかも知れないが、あの失点シーンは単純に、鈴木大輔が、あるいは伊東が、死に物狂いでボールに先に触れてクリアすれば良かったのではないだろうか。
もちろん、岩崎の身体のどこかにボールを当てられていれば、でもいい。
勝負どころの集中力、局地戦で琉球の選手を上回って欲しかった。
前節、泥臭く、無様でも、勝ち点をもぎ取ったように。

鈴木大輔であれ、不可侵の存在とはせずに、評価すべきだろう。

が、ゲーム全体を俯瞰した時、前向きな内容だった事は間違いない。
試合後、ゴール裏で頭を下げる選手達に、スタンドに残って迎えたサポから、大きな拍手が送られた事からも、それは明白だった。秋田戦の後とは、全く違う空気だった。


繰り返しになるが、若い選手を多く使いながら、長い時間にわたってゲームをコントロールし、先制点まで奪ってみせた。

壱晟が司令塔としてゲームメイクし、ブワニカが前線で起点として身体を張り、岩崎は持ち過ぎから一歩脱却して、あわや得点に繋がるシュートを何本も放ってみせた。そして、先制点を挙げた見木は、既に攻撃の中心としてドリルのように琉球の守備を抉ってみせた。

そうした若い力が、特色をみせる一方で、新井一耀の攻撃参加や、小島のスルーパスのような、際立つプレーもあった。

これまでの試合と比べれば、今日の試合は何倍も良かった。
問題は、こういうゲームを続ける事が出来るか、そして勝ちきれるかだ。

次節以降も、強敵との戦いが続く。
簡単には勝利を重ねる事は出来ないだろう。

が、そろそろ、守備一辺倒のサッカーは、「戻れるベース」として持ちつつも、その上に一段進まなければならない。その意味で、今日のゲームは、次の段階のベースとすべきゲームであったと思う。

「このサッカーで勝つ」ことで、階段をもう一つ上がれるはず。
そのきっかけになった試合として、この琉球戦が振り返れる事を願いたい。