8/13(土)ナビスコ杯準々決勝・磐田戦

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千葉2(1-0、1-2)2磐田
<得点>
千葉:巻(山岸)、阿部(直接FK)

<ニッカンスコア>


TOTAL
千葉5(3-2、2-2)4磐田


痛快だ。


磐田のサポーターは、発表されたジェフのスタメンを見て勝利を疑わなかっただろう。ハースが、ストヤノフが居ない。櫛野も、羽生も、水本・水野も居ない。対して、自軍には、代表6名が戻ってくる。ホーム・ヤマハ。得失点差はわずかに「1」。
けれども、勝利したのはジェフだった。トータル5-4、代表の巻・阿部のゴール。ジェフにとって最高の結果。これでまだ何か言い訳が出来るか?雨のせいにでもしますか?出来る訳が無いわな。つまり、あらゆる状況で「村井と茶野を抜かれても、ジェフの方が強い」事が改めて証明された、そう言う意味のある一戦だったと言う事だ。


サッカーが戦いだと言うのならば、より強く「勝ちたい」と言う気持ちを持ったチームにプラスアルファの力が働くのはある意味当然と言える。この日、ヤマハに集ったジェフサポはアウェイスタンドを黄色く染め抜き、降りしきる雨も全く意に介さず、ピッチに立つ選手たちを力強くサポートした事で、共に勝利を勝ち取った。
一つだけ敵将・山本監督に感謝する事があるのなら。長くジェフにこびり付いていた、残留争いの時代の「負けちゃいけない」と言うネガティブな勝利への欲求を、「絶対に勝つんだ」と言うポジティブな勝利への欲求へと昇華させてくれた事だろう。そしてこの試合で、「勝たなければならない試合で勝つ」と言う大きな成功体験をジェフは得た。大きな勝利だ。


この日も、試合前からこの試合に賭ける「熱」が違った。
バスで、車で、電車で。次々にヤマハへ意気揚々と駆けつけるジェフサポ達。この一戦への想いは並大抵ではない。7年前の敗戦に想いを巡らすもの、山本ジュビロへの対抗心をあらわにする者、ナビスコ制覇へ願い、村井・茶野への想い、代表帰りの阿部・巻への期待・・・様々な感情が試合前から入り乱れる。
そこに飛び込んできた、「ハース負傷欠場」の一報に表情が曇る。空気が沈んでいく、困難の暗示か、にわかに立ち込める雷雲。しかし、その沈んだ空気が「覚悟」へと変るのに、そう時間は必要なかった。目の前で戦う選手たちを全力で応援する。隙間が無い程に埋め尽くされたアウェイスタンドは、万雷の拍手でピッチに現れた選手たちを出迎えた。


「熱」の差を示す出来事。
磐田にとっては、チームの象徴たる中山の先発は大きな出来事だったのだろう。しかし、その中山のコールを改めてバックスタンドに向けて練習する必要があったのだろうか?知っていて当然じゃ無いのか?一週間前の菊池の件といい、どうも磐田は目の前の敵を潰そうと言う前に、俺からすれば「ズレた」気合の入れ方をしてしまうようだ。


ウォーミングアップから、ゴール裏は熱い。
命綱片手に、リードを執ったのは実に7名。長くジェフを見ているが、これほどのリード、初めてではないだろうか?「磐田には、負けられない~」の例のフレーズを延々と歌い上げ、この試合の意味を確認する。選手が控え室に引き上げ、一瞬の静寂には「千葉!」のコール。高くそびえたバックスタンドに跳ね返り、気持ちの良い余韻を残す。
そして、選手入場。黄色いスタンドがさらに黄色く染まる。



スタンドと、フィールドの選手たちが気持ちを一つにして、キックオフ。
「後半」90分のスタートだ。


苦しいスタメン。
GK立石、DF大輔・中島・結城、MF阿部・勇人・坂本・山岸・ガビ、FW巻・林


これだけメンバーが欠けると、さすがに4月の完勝の再現は難しい。展開は劣勢となった。それでも、リベロに入った中島をはじめ、選手たちは思いのほか落ち着いていた。試合前から磐田が攻めてくるのは当然とも考えていただけに、劣勢は想定内。
むしろ、キープはされるものの、磐田の攻撃に怖さは無い。時折、前田に単騎突破は食らうものの、シュートコースは切っているし、真裏から見ていても失点の予感はしない。サイドアタックも、左から突っ込んでくる村井のみ。丁寧に潰せば問題は無かった。
驚かされたのは、名波だけでなく中山にも怖さが無くなっていたこと。気持ちは痛いほど感じる。けれども、もう身体が追い付いて来ていない。喰らいついてもシュートにすら持ち込めない。それが現実だった。


攻める磐田。茶野の意地か、強烈なミドルも食らうが枠外。
潰すジェフ。中盤では阿部が存在感を見せて、名波を封殺。彼を起点に、徐々にボールが回り始める。ただ、ガビがいまいち噛み合わない。ボールを簡単に失う場面があり、シュートまで持ち込めない。それでも、0-0はジェフのペースだ。


磐田の攻撃をかわしながら、じりじりと時間が過ぎていった35分。
ジェフのゴール前から始まったカウンターが磐田ゴールを襲う。右サイドでボールを受けたガビが、ふわりとしたボールを村井の裏に走り込んでいた前線の山岸へ送る。山岸は、間髪を入れずに中へクロス。これを、待ち構えていた巻が身体ごと叩き込む!通算の得失点差を「2」に広げ、俄然試合展開を優位にする。
スタンドは「オブラディ」の大合唱。今が旬の巻のゴールにこれ以上無い勢いがつく。


第一戦で痛い目に遭った残り時間も上手くやり過ごし、前半は1-0で終了。
上出来。これ以上望めない展開だ。それでも誰もが、「まだ何も終わっていない」と声を掛け合うゴール裏に、サポーターもまた痛い思いを数多くしている事を感じる。



後半、さらに雨は強くなり、稲光がメインスタンドの上空を走った。
それでも、スタンドの声援は少しも怯まない。試合も、雨を吹き飛ばすように熱を帯びていった。


磐田は、中山に代えてカレン。前線の運動量を増やして勝負に出る。
しかし、攻める磐田を2点の余裕を持って受け止めるジェフは、容易に守備を崩す事は無い。主導権はジェフ、だったのだが・・・主審・岡田の明らかな誤審が磐田にPKをもたらす。大輔の足が、名波のキープしたボールをとらえたフェアチャージを、まさかのPK。大輔の猛抗議も実らない。さらにベンチの岸本コーチは退席処分。
PKは、前田が沈めて1点差とする。
まさに岡田らしいジャッジ。「切り替えろ!」とスタンドからも大きな声が飛ぶ。ここで動揺したらおしまいだ。糞審判に負けてたまるか。


ジェフは引かない。今度は、巻が磐田陣内で倒されFKを得る。
ゴール裏からは「阿部勇樹」コール。もちろん、キッカーは阿部。誰もが壁を巻く鋭いキックを予想した瞬間、放たれたボールは低く地面を這うグラウンダー。一直線に飛んだボールは、GK川口をすり抜けてそのままゴールに吸い込まれた。濡れた芝を計算し尽くした一撃。川口は悔しさのあまり地面にひれ伏す。
スタンドはまたも歓喜の絶叫につつまれた。


これで、突き放す事が出来た!・・・ところが、このゲームはコレでカタがつかなかった。
歓喜も覚めやらない、阿部の一撃のすぐ後、今度は韓国代表・金がゴールエリアの外側から、有り得ないような強烈な一撃を左足で見舞う。
再びスタンドには緊張感が走る。磐田を生き返らせてはならない。今こそ、声を出し戦わなくては。スタンドは、さらに大きな声でジェフの選手達を後押しする。


そして、ゲームは撃ち合いの様相を呈した。
金のゴールの直後、ガビに代わり投入されていた工藤が、ループで川口を抜く。シュートは、バーに跳ね返えされるが、そこに詰めるのは、巻!しかし、これは川口が押さえる。
その後も、林が工藤が何度もチャンスを迎えるが、どうしても決められない。林が川口を抜いて決めたシーンでは、珍しくオシム監督が手で眼鏡のジェスチャーをして、線審に「ちゃんと見てくれ!」と訴える。
林は足を痛め、ついに交代。交代の林に、投入された要田にまた大きな声援が起こる。


対する磐田も、後半30分を前についにヨンスを投入。
ジェフサポにとって、名前だけで重みのある選手。いきなり角度の無いところから強烈なシュートを見舞われる。両チーム、ギリギリの戦いの中、時間がじわりと削られていった。40分過ぎからは、1点のリードを死守に入る。巻がコーナーで身体を張り、坂本がサイドでキープに入る。ただ、守りながらも、トドメを刺さんとする姿勢は失わない。
磐田の抵抗には思ったほどの激しさは無く、残り時間を使い切る。7年ぶりの準決勝進出を告げる笛が鳴った。


いつの間にか止んだ雨。そして、安堵。誰彼ともなく、手を叩き合った。
4月の試合よりも、少し落ち着いた様子で、最高の笑顔で選手たちがやってくる。でんぐり、勇人や中島は、サポと手を握りあって勝利を喜んでいた。殊勲の巻や阿部、ゴールを死守した立石にも大きなコール。選手達を握手で出迎える監督。そしていつもなら、さらりと受け流す「オシム」コールに、帰り際にほんの少し手を振って応えた監督にまた大きな歓声が上がる。
オブラディで全身で喜びを表して、万歳!誰もが笑顔で、一週間後、日立台での再会を誓い合った。なんとも言えない、素晴らしい一体感だ。



ジェフにとって大きかったのは、前述した成功体験だ。
勝たなければいけない試合で、これまで何度先に進めずに辛酸を舐めさせられて来たか。ともすれば、この試合も「万全ならば勝てた」と言い訳と後悔のつきかねない試合だった。このメンバーで勝った、このメンバーで勝てた事が、リザーブメンバーにも大きな自信を与え、チーム内の競争を激化し、チームを一段とレベルアップさせる事になるだろう。


ある意味、磐田との戦いがジェフのレベルアップのターニングポイントになっているかのようだ。磐田をナビスコ杯の舞台から降ろし、過去とも区切りをつけつつあるジェフ。リザーブの奮闘と、代表組の奮戦で一層の勢いをつけて、さあ次は浦和だ。残った4チームは、いずれも「オリジナル10」の一角。どこと当たってもラクな所は無い。相手にとって不足なし。駒場の大アウェーに耐え、無敗の臨海で国立への血路を拓いてみせる!