7/13(水)J1-第16節・横浜戦

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千葉1(0-0、1-2)2横浜
<得点>
千葉:林
横浜:上野(山瀬功)、坂田(山瀬功)

 

<ニッカンスコア>

 

試合前、会社で見た「J’s GOAL」のスタメンに思わず吹き出す。
「中島ぁっ!?」
いや、中島が悪いんじゃない。イリアンの代わりに中島と言う順序付け、DFではなくMFを持って来る監督の考え方を何とか理解したくて、スタメンを何度もアタマん中でいじくっていた。
中断期間以降、監督は何らかの意図を持って、このチームに新しい課題を与えている。3バックだ4バックだ、と言うシステム論が、実際のゲームの中での流動的なポジションチェンジの前では如何に無意味かを教えてくれたのはオシム監督だ。ならば、この布陣を消化することで、どう言うレベルアップがあるのかを考えるのも、またジェフサポならではの楽しみ。
東京から電車を乗り継ぎ、新横浜に急ぐ間、この布陣の意図をずっと考えていた。

 


20分遅れでスタジアムに到着。すると、スタンドの雰囲気がいつもと少し違う。
布陣を見やると中島がリベロに入り、大輔と阿部を従えている。ボールが後ろの中島に戻るたび、スタンドから何とも言えない緊張感と言うか、どよめきと励ましの「こーじー!」と言う絶叫が飛んでいる。何と言うか「中島を見守る会」と言った空気。心臓に悪いゲームを、監督が作っているよなぁと苦笑いした。
中島は、中島。いきなりイリアンになれと言われても、そりゃ無理だ。それでも、慣れないポジションを懸命にこなして、なんとか最後の一線だけは越えさせないようにさせている。彼は、やれることを一生懸命やっていた。


-----巻----
ハース-----山岸

----ガビ----
坂本--勇人--羽生

-大輔-中島-阿部-

----櫛野----

流動的ではあるが、布陣はこんな感じ。
山岸を高めに置いて、ドゥトラにブツけて上がりを止めようとしたのだろうが、実際にはドゥトラの上がりはそれほどではなく、その逆サイドの田中隼に突破が冴えていた。山岸の突破はドゥトラに止められるので、サイドの主導権は完全に横浜。
加えて、手薄になった中盤では山瀬功がてぐすねをひいている。

むしろ問題は、昨年秋の対戦でも痛感させられた、個人個人の基本技術の差。半年経って、むしろ差が開いたようにすら感じる。巻が中沢に競り負けるのは、ある意味まだ仕方が無いとしても、局面局面での競り合いの強さ、その後のトラップの正確さには大きな隔たりがあった。
例えば、ボールが高く舞い上がって落ちてくる。ジェフの選手は、それを胸や足でトラップして、2m・3mずらしてしまうが、マリノスの選手は足の裏でピタリと止めて、次の瞬間には前を向いてドリブルに入って入っている。
こうした違いが、パスでもシュートでも、競り合いでも随所にある。体力で・機動力で上回ったとしても、それだけで基本技術に勝る相手に勝てるわけではない。だから、ジェフはチーム全体の連携で勝負しなくてはならないのだが・・・この新しい意図の布陣を消化しきれていない状態では、横浜の波状攻撃に耐え忍ぶ展開となるしかなかった。

10本以上のシュートが前半だけで撃たれる中、櫛野を中心とした守備陣は体を張ってよく耐えていた。特に至近距離からのシュートを止めまくった櫛野の活躍が無ければ、前半で勝負を決められていたかも知れない。敵将・岡田監督もイヤな流れを感じていたほどだ。

後半、監督の檄を受けて切り替えを図るジェフ。
けれども、今日は簡単には切り替わらなかった。ジェフが悪いのでは無く、マリノスが良いからだ。

マリノスはしかたかだった。
ゴール前の接触プレーで坂本がフィールドを離れたそのスキを見逃さず、一気に畳み掛けて先制点を奪って見せた。勝負を仕掛ける時間帯の意思統一、フリーのシュートチャンスを確実にゴールにするシュートの正確さもまた見事だった。

厳しいディフェンスにシュートを撃てない。ここまで、正直得点の気配は無し。先制点を奪われた事で前がかりにならざるを得ず、カウンターの恐怖に緊張感を高めながらの展開となる。
主審・穴沢氏は、以前とは打って変わってファウルを取らない。明らかに掴んでいるようなファウルでも、ほとんど流す。ボールが止まらない。針のむしろの上に座らされているようなカウンターが、何度も櫛野に迫った。

ここで監督は、ガビから水本にスイッチして阿部を前に出す。
さらに、滅多な事では交代の無い坂本を工藤に代える。痛んでいた事もあるが、劣勢の中でチームに危機感を知らしめる為の交代だったとも言う。
マリノスに安堵があったのか、少しずつジェフの時間帯になって来る。ただ、相変わらず前線は、厳しいディフェンスの前にFWが押さえ込まれている。明らかにハースの集中力が下がり、無用なイエローも呼び込んでしまう。すかさず監督は、3枚目のカードとして切り札・林を投入する。

林の投入で、ようやく「シュート」の気配が漂い出す。
最終ラインからの攻め上がりまで使って、なんとか同点に追いつこうと追いすがるジェフ。その攻撃が実ったのが、後半34分。林の鮮やかな右サイドからのシュートだった。この劣勢の展開からすれば、奇跡的な1点。
その勢いのままに、逆転を目指して走り続けるジェフ。最後は、撃ち合いになった。ジェフが機動力を活かして傘にかかって攻めれば、マリノスはハユマ・山瀬・坂田らがスピードのあるカウンターを仕掛ける。さらに、久保・奥が“交代で”投入されている。

試合後、監督のコメントにあったように、ここでジェフは気付くべきだった。自分達がアウェイで戦っている事を。同点に追いついて、ホームチームの焦りを誘う展開にすれば、逆にカウンターを仕掛ける事も出来たのに。
定石を破って、勢いのままに攻め込んでしまったのだ。結果、ラストプレーのほんの何秒か前まで、ジェフはマリノスゴール前に攻め込んでいた。林が絶好のパスを受け、持ち替えてシュートに行こうとした刹那、ボールは競り合ったDFに奪われ、山瀬に繋がれ、そして坂田の右足で勝負を決められていた。

もし、林のシュートが一瞬早く決まっていたら、結果オーライで大喜びしていただろう。
もし、攻め込まずに1点を守りに入っていたなら、ブーイングをしていたかも知れない。

だから、それは結果論でしかない。
結果が出た後なら、何とでも言える。チームとしての意思統一も、走り続けてテンションも上がった中で、全選手が冷静に状況判断するのは、口で言うのは簡単だが難しい事だ。
メンバーが変わっても、それが出来るのがマリノス。まだ出来ないのがジェフ。勝ち続けた経験を持つチームと言うのは、こう言う積み重ねが違うのかと、坂田の一撃の後には呆然と考えていた。

それは、布陣に関しても同じ。勝っていたら、称えられていたことだろう。負けたから、叩かれる。ただそれだけの事だ。
実際、中島をディフェンスに入れた布陣は、予想以上によくやっていたし、勝敗の原因はもっと別のところにあったように思う。マリノスの厳しいディフェンスに苦しみ、前が動かない、だから慣れない最終ラインからのボールも、相手に詰められたところに出さざるを得ない。結局、局地戦での厳しさの差が、チームとしてイリアンを埋めきれなかったのだ。誰が出ても、同じだったろう。

最後の割り切りは、監督・選手を信じきれるか、と言う事になる。
少なくとも、
のチームになってからの厳しい練習と、その後の躍進とをジェフサポは知っているはず。
悔しい敗戦だったが、信じて応援する事で、今日の負けの意味も解るようになるはずだ。

「うちはディフェンスラインからボールをしっかりと動かそうとした
。ボールを動かせない選手ではボールはつなげない。」

謎解きのように、監督のコメントから、このシステムの意図も少しずつ見えてきている。磐田戦のようなゲームが監督の理想ならば、この試みの先にはボールをしっかり動かし、攻めにも守りにも人数をかける、そんなサッカーがあるのだろうか。