2016年J2第1節 ○2-1 徳島ヴォルティス

2016年J2第1節 ○2-1 徳島ヴォルティス

image

あのまま負けていたら、監督も、GMも大きな批判に晒されていたかも知れない。
けれど、ロスタイム2分が過ぎてからの逆転劇。
長くジェフの試合を観ているけれど、そうそうお目にかかれるものじゃない。
最後まで諦めず、同点を、勝利を掴む為に戦って得た勝ち点3は、きっと大きな意味を持つだろう。
しかし、劇的な展開を喜んでばかりもいられない、厳しい試合だった。
試合を通じてみると、ジェフ対策をしっかりと施した徳島の守備に苦しみ、敗戦一歩手前まで追い込まれた。

image
 

スタメンは、ちばぎんからボランチの山本が富澤に、センターバックが若狭から近藤に代わった以外は同じメンバー。1年前、このチームに居たのは井出のみ。サブも含めても、彼と勇人だけと言う凄まじい変わりよう。
正直、まだ相変わらず顔と名前が一致しない。

試合は、静かな入りだった。
お互い、出方を伺うような展開で、チャンスの一歩手前までは行っても、シュートまでは撃つ事が出来ない。ちばぎんの時は、もっとタテにシンプルに、速かったのだが、右の小池も、左の井出も、ボールを持つと二人で対応されて、なかなかスペースに抜け出ることが出来ない。

徳島は、しっかりとジェフのサイドをケアしつつ、シンプルに前にボールを運ぶ戦術を徹底していた。
手元の記録では、両チームのファーストシュートは、17分の徳島の攻撃。FKを25番の冨田が頭で合わせたもの。

ジェフも19分に阿部翔のクロスをエウトンが落として、アランダがミドルシュートと言うシーンを作る。試合を通じてだが、エウトンはポストプレーが非常に巧み。足でもしっかり繋ぐし、ヘディングでもスペースを狙ってパスが出来る。必ず、「次」に繋げてくれる安定感がある。

その後も展開は一進一退。
ややシュートシーンはセットプレーから徳島の方が多い。
ジェフは、28分に船山のブレ球のミドルシュートがGKを強襲するも、弾かれてしまい得点ならず。結局、シュートは、アランダと船山の2本のみ。
消化不良な展開で前半は終わっていってしまった。
後半に入り、まず仕掛けたのはジェフ。
右の小池と、左の井出を後半頭から逆にしてきた。
このポジション変更で相手の虚を衝いて、まず1分にエウトンのクロスから、小池がヘディングシュート。さらに、2分にも、今度は井出のクロスから、エウトンが頭で合わせるも決める事ができない。

二つとも、惜しいシーンだった。
そうして、チャンスを逃してしまうと、流れは相手に移るもの。

迎えた11分、エウトンがややアフター気味に相手を倒してしまい、イエロー。
このプレーで徳島が得たFK。ジェフから見て、左サイドから放り込まれたクロスは弾き返すものの、そのボールが相手の冨田の前に。冨田が放ったシュートは当たり損ねのような感じだったが、運悪くディフェンスの体に当たってふわりと浮いてしまい、そのままゴールへ。先制を許してしまう。

流れを変えたいジェフは、17分に一枚目の選手交代。
16小池に代えて、10長澤を投入。ポジションはそのまま。

25分には、この日一番のチャンスを迎える。
阿部翔のクロスから、中央で船山が合わせてネットを揺らすも、オフサイドの判定。
正直、微妙な判定だったが、同点に追いつくことは出来ない。

直後に、9エウトンに代えて、18吉田を投入。
より、シンプルにパワープレーで点を奪いに行くと言うメッセージを送る。
だが、なかなか展開は変わらない。
徳島は、福元を中心に粘り強い守備でジェフの攻撃を潰していく。

31分には、キーポイントになりそうなシーンがあった。
阿部翔のコーナーから、捻じ込もうと、三連続でシュートを打ち込んで行ったプレー。
最後は、井出が当てて浮かしてしまい、ギリギリのところで点が入らない。
これも、入らないとなると、今日はゴールの運が無いんじゃないか、そうも思いもした。

37分、最後のカードとして、15富澤に代えて6山本が投入される。
しかし、流れは変わらない。徳島からすれば、アウェイで40分過ぎまでリード。徐々に時間稼ぎ的なプレーも出始めて、逃げ切りモード。そうやって、J2を勝ち抜いてJ1に上がった事のあるチームだ。至極妥当。時間的にも、逃げ切られてしまうかって状況だった。

それが。

まさか、こう言う展開が待っているとは。
ロスタイムは4分と表示され、それも2分が過ぎた頃。
右サイドのややインに流れたボールを、交代出場の山本が軽く叩くようにボールをペナルティエリアに放り込むと、待っていた吉田が頭でドンピシャのヘディングシュート。あの叩き付け方、背番号も相まって、巻を彷彿とさせる、そんなシュートだ。

これで、フクアリが一気に沸き立った。
12,000人のサポーターの声援が、うねりとなる劇場の空気。
その空気に飲み込まれたように、最後の攻勢が仕掛けられる。いつ、笛を吹かれてもおかしくない状況だったが、吉田のゴールの後に多々良がイエローを貰ったプレーで少し時間が延びたのか、その時間が生まれた。

左を駆け上がった阿部翔のクロスから、山本がボレーでシュートを撃ち込み、弾かれたシュートを、さらにもう一度山本がシュートする。一度目はキーパーに、二度目はディフェンスに阻まれたが、こぼれたボールを、船山、長澤と繋いで、倒れ込みながら、長澤が押し込んだ。主審はセンターサークルを指し、ゴールを認める。

image 

選手達が折り重なって歓喜し、スタンドは二階まで総立ちでハイタッチをしている。
いやいや。滅多に無い、こんなシーンを、ホーム開幕で観る事になるとは。
びっくりした。

大脱走をする間もなく。
センターサークルに置かれたボールが動いてすぐ、試合終了となった。

わずか数分で、敗戦が勝ちに、勝ち点0が3に変わった。
まったく、なんてゲームだ。
得点を決めた吉田、長澤。これに絡んだ、山本、阿部翔、船山。彼らにとっては、最高の顔見世になっただろうし、ピッチに折り重なった彼らが作った歓喜の山は、新しいジェフが一番大切な勝利の部分で、これまでと違うと見せつけるものだった。

振り返れば、徳島が先制した事で、逃げ切りの為に徐々に相手が守りに入った事で、ジェフの攻撃の機会が増えて行ったことが、ジャブになって最後に効いたのだろう。
先制される、苦しい展開の中で、どう打開していくか。その為の武器がある事を見せてくれる戦いだった。
課題も多くある試合だった。
両翼を抑えられた前半や、前半の20分にイ・ジュヨンが中途半端に当たりに行って、簡単に交わされてしまったシーンなど、攻守共に改善すべき点は多い。

それもあった上で、後半の最後に、阿部翔がクロスを上げ、最後に泥臭く捻じ込むところまで、各選手がゴール前に殺到していた事は、運動量の面でも向上がみられた。
今日の試合を糧にして、また次に良いプレーを見せて欲しい。

最後に、期待と不安をごちゃまぜにされ、それでもフクアリに足を運んだファン・サポーターには、素晴らしい開幕戦となった。こうして試合を積み重ね、一年が終わった時に、これが俺たちのチームだと、また自分も言えるようになっていたいものだ。