いま出来るコトと出来ないコト 第22回ちばぎんカップ ●0-2 柏レイソル

いま出来るコトと出来ないコト 第22回ちばぎんカップ ●0-2 柏レイソル

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球春を告げる、ちばぎんカップ。22回目を迎える今回は、AWAY日立台。
幸い、好天に恵まれ、絶好の観戦日和となった。
開門前から、多くのジェフサポが列を作り、新シーズンへの期待の程が伺える。

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長い列を終えて開門すると、席を確保して、とりあえず腹ごしらえとグッズの確認。
温かい牛串(500円)や、モツ煮(400円)などで軽食をとる。
新しいマフラーや、シャツの色がすごい。ユナパで見た公式ユニより、相当に強烈な蛍光イエローだ。そこらじゅうで、ラインマーカーで引いたようなイエローで、眼がチカチカする。やっぱり、個人的には去年までの落ち着いた黄色が良いなあ(苦笑)

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ゴール裏は完売御礼。
試合前には、昨年の航空機事故で亡くなった、シャペコエンセのケンペスやクレーベル、先ごろ亡くなられた、Jリーグ設立に尽力された木之本さんや、協会の岡野さんへの黙祷も捧げられた。
悲しいことだが、こうしてサッカー観戦が出来る日常に感謝しつつ、彼らの魂がどこかでサッカーを見守っていると願わずにはいられない。

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さあ、キックオフだ。
AWAYゲームなので、ジェフは2NDユニのホワイト×ピンク。
ジェフらしさは無いけれど、なかなかスッキリと締まったユニフォームだ。

さて、ここからは、ゲームの内容について。
今日のゲーム。勝ちを狙いに行きながらも、相当にテストの意味合いが強いと映った。

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スタメンは、上記の通り。
エルゴラなどの既報にあったように、アランダのシングルボランチを中心とする、非常に攻撃的な布陣になった。 新加入のラリベイとサリーナスはベンチ。高橋や、熊谷は軽い怪我との報道があり、羽生、吉田、菅嶋、岡野、大久保、岡本らは、ベンチメンバーからも漏れる形となった。

問題は、この布陣で狙いとする「前線からのハイプレス」「高いディフェンスライン」がどれだけ機能するか。

キックオフと共にラッシュをかけたのはジェフ。
様子見の柏に対して、最前線から練習どおりのハイプレスを仕掛ける。
面食らった柏は引いてしまい、まずはコーナーキックから若狭のヘディングでチャンスを作ると、新加入の清武が活きの良いドリブル突破を仕掛け、船山、新10番・也真人らと絡んで、攻撃の形を作っていく。最初の10分から15分くらいまでは、アランダのシングルボランチも大きな破綻を見せず、「高い位置でボールを奪い、手数をかけずに攻撃を仕掛ける」狙いのある攻撃が出来ていた。

この時間までは。

時間の経過と共に、レイソルはジェフの攻撃への対処が出来るようになってくる。
そして、形勢が変わるのに、大きな時間はかからなかった。

この布陣、素人目に見ても、前線に頭でっかちで、ディフェンスライン両脇と、アランダの周囲に大きなスペースが出来てしまう。
そこを破綻させないよう、「高いディフェンスラインでオフサイドを取り」、守備に切り替わったときには、二列目の山本や也真人が守備に戻って、アランダの周囲の「穴」を埋めていくことが必要なのだが。。。 そこに対峙するのは、柏のブラジル人3人。クリスティアーノ、ディエゴ・オリヴェイラ、ハモン・ロペス。もちろん、周囲の日本人選手も、個も連携もしっかりしている。

彼らにとっては、見るからに広く、そして自由に使えるスペースは、美味しそうな獲物に見えた事だろう。一発のパスで裏を衝かれ、個人能力の高いブラジル人選手との1対1に何度も持ち込まれれば、そうそう耐えられるものではない。

エスナイデル監督は、このディフェンスライン裏の広大なスペースを、GKの飛び出しによって、ある程度カバーさせようとしているようだが、それにも限界がある。この日スタメンの山本は、何度も飛び出してクリアをするが、その範囲があまりに広すぎで間に合わない。
ペナルティエリア外で、相手と接触したり、バックパスや1人で処理しなくてはならないボールに余裕が無さ過ぎて、相手に詰められてしまったりと、ヒヤヒヤのピンチが増えていく。

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幾たびもの、柏のサイドからの突破。
CK、FK、前半だけでも数点失ってもおかしくないような展開だったけれども、柏の決定力不足や、山本や近藤の奮闘もあって、何とか、寸でのところで失点はせずに前半を終える事だけは出来た。

ただ、ほとんど15~45分までは、攻められっぱなしと言っても良いくらいだった。
ジェフが前線でボールを持つと、柏のプレスをはがせず、人が多く配置された前線は渋滞気味でボールが引き出せずに戻してしまう
かといって、サイドのプレーヤーへの配球も多くなく、たまに良い形でボールを受けても、クロスの精度がさっぱりで、チャンスに繋がらない。

予想された弱点を、そのまま晒したままに前半を終えてしまう。

後半頭からは、船山に代えてラリベイ。そして、乾に代えてサリーナスと、新外国人コンビを投入して巻き返しを図るジェフ。 その交代で入ったサリーナスは、攻撃でキレのある動き。速さを活かして、ドリブルを仕掛けてサイドからクロスを上げられる。

しかしいかんせん単発。
流れは変わらず、ラリベイにもボールはほとんど渡らない。
ピンチは、前半の流れのままに量産されてしまい、裏に抜けた柏の選手を捕まえきれず、後ろから追走するシーンが頻発する。ようやくボールを奪っても、狙い無く、ほうほうの体でのクリア。失点は、時間の問題だった。そして、60分、63分と、ついに守備が決壊。よくも2点で済んだもの。

点差がつき、ジェフは、次々に交代のカードを切って、最終的な布陣は下記のようになった。

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誤算だったのは、先発のディフェンス、西野と若狭。
2人とも、途中で足をつってしまい、西野はイジュヨンと交代。若狭にいたっては、交代枠を使い切った後のため、最後は10人で戦うことになってしまっていた。キャンプでの披露もあったろうが、ボスニア方面から苦言が飛んで来そうな話だ。

期待のラリベイも不発。と言うか、そこまでボールが入らない。
一回だけ、サリーナスからラリベイにスルーパスが出たシーンがあったが、相手の俊英GK中村にセーブされてしまった。1点でも入っていれば、だいぶ空気が違ったのだが、残念。

試合はそのまま、0-2で終了。
通算対戦成績は、8勝14敗。MIPは近藤、MVPは先制点のクリスチアーノとなった。

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改めて振り返ってみて、課題は明確。
予想された通りに、リスキーな守備。
もっとも、この試合は、それも織り込み済みで「試してみた」ように感じてならない。
どれぐらい攻撃が形になるのか、守備がどれほど耐えられるのか。どっちつかずの、モヤモヤとした試合内容だったら、課題も明らかに出来なかったろう。逆に、ボロボロにやられただけに、今のやり方から、守備面での修正が必要な事は明らかになった。開幕までに、首脳陣が「リスク管理」を施して来る事に期待をしたい。

逆に、前半10分までは非常に面白かった。
近年見られなかった、前から全員が追い込む守備。
そして、スピードのある攻撃。

これが形になり、ハマれば、相当に面白い攻撃サッカーが見られるだろう。
けれど、その為には前提条件として、色々なものがまだ足りない。
前線から追い込み、オープンスペースを埋め、攻め上がった選手の穴を補う、膨大なフィジカル。
どこに穴が出来、どこを埋めなくてはいけないか、予測する頭脳。

まるで、何足跳びもして、2006年夏頃にアマル監督がやろうとしていた、攻撃サッカーをし始めようとしているようにも映る。物事には段階がある。理想も、目標も必要。目指すサッカーに行き着くため、調整に調整を重ねて、今季をかけて成長していって欲しい。

正直、結果を出すのには時間がかかるように思う。このやり方は。
もしかしたら、序盤戦相当に苦労するかも知れない。
でも、面白いことをやろうとしているのは分かる。
ここ数年無かった「戦う」要素が、見え隠れしている。

結果が出なくても、
選手は、自信を失わないこと。
サポーターは、ひたすらに応援すること。
フロントは、一度決めたなら、この方針を決して曲げないこと。

それが出来なくて、途中で迷い始めたら、それこそ危険でしょ。
新しい事をやるには時間がかかる。
そんなサッカー、本当に出来るの?と思うなら、出来るまでやり続ける。
その先にある、新しいジェフの形が一日も早く見られるように。

きっと今頃、選手、監督、指導陣は今日の試合を反芻しているでしょう。
この一敗が、リーグ戦への糧になると信じて、今季も一年間頑張ってゆきましょう。

<選手寸評・スタメン>

GK山本海 ディフェンスライン裏の広大なスペースを守る守備には、まだまだ戸惑い。
      相手との接触、かわされてシュートと、危ないシーンが多かった。セーブは安定。

DF若狭 前半のCKからのヘディングは、クリーンヒット。
     問題は守備とフィード。個の力で柏攻撃陣に後手をふみ、裏を狙われまくり、
     後ろから手を出す危ないシーンが多かった。
     クリアボールは、いっぱいいっぱいで、狙いが無い。足をつって最後はチームを10人に。

DF近藤 守備のリーダーで孤軍奮闘。MIP獲得も、柏の攻撃を止められず。
     フラット3気味の守り方自体が厳しいか。

DF西野 若狭同様、裏を狙われるシーンが多々あった。
     若狭よりも早い時間に足をつってしまい、コンディションを整えたい。

MFアランダ チームの中心も、あれだけ広いスペースを1人で守るのは無理。
       彼の負担を減らし、活かすためにも、今日の先発なら、
       山本真を下げてドイスボランチにするのがベターだったと思うが。

MF乾  左WBで先発も、柏のプレッシャーが早く、戻すシーンが多かった。
    攻撃参加がほとんど出来ず。

MF北爪 左よりも攻撃参加のシーンが多くあったが、せっかく抜けてもクロスの精度が無かった。
     位置を高くするよう指示を受けているとは思うが、
     守備時には最終ラインの両サイドの穴を埋めるよう、速く戻りたい。

MF山本真 前半10分まではハイプレスでボールに良く絡んだものの、以降消える。

MF也真人 今日は上手く相手に抑えられてしまった印象。
      序盤は攻守共に生き生きしていたが、こちらも時間と共に消えてしまった。

FW清武 ジェフ側では一番仕上がりが良かったのでは?
     度々、ドリブルで仕掛けてチャンスメイ
し、得点の香りを感じた選手。

FW船山 チャンスは巡って来なかったが、前線へのプレスをする今年のやり方は、
     船山に合っていそうな感じがある。

 <選手寸評・交代選手>

FWラリベイ 事前の情報どおり、単独での突破、ドリブルは見られなかった。
       足元は繊細で上手い。決定機1本を決めておきたかった。
       ヘディングが案外競り負けていたのは意外。シュート以外のヘディングは苦手?

MFサリーナス 左WBのち、トップ下に。
        どちらも、スピードを活かしてプレー、ジェフの中では異色。
        ラリベイの近くに置いて、チャンスメイクさせても面白いかも。 

MF勇人 アランダと交代して、ボランチに。柏の攻勢を止めるには至らず。

MF多々良 驚いた事に、ボランチに入った。勇人とドイスボランチを組んだものの、
      急造?ボランチのせいか、大きな流れは変えられなかった。
      今後もボランチ起用だろうか?

MF比嘉 左WBとしてもプレーも、柏の今井に手を焼いて、インパクトを残せず。

DFイジュヨン 足をつった西野に変わって出場。厳しい状況だったが、無難な出来。 


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試合後は、柏駅近くのラーメン屋で暖を取って帰宅。
居合わせた見ず知らずのジェフサポと、今日の試合のことでしばらく談義。
これもまた、サッカーの醍醐味ですな。