戦術の浸透、深まる 2020 J2第12節 vsジュビロ磐田 〇2-1

戦術の浸透、深まる 2020 J2第12節 vsジュビロ磐田 〇2-1

2020/08/16(日)19:00
ヤマハスタジアム
J2第12節
磐田 1(1-2,0-0)2 千葉

<得点>
21分 千葉 44川又(24山下)
28分 磐田 9小川
35分 千葉 33安田

千葉公式
磐田公式
Jリーグ公式

超厳戒態勢継続の為、DAZN観戦。

しかし、まあ、何と言うか、、、
全然、ジェフらしくない試合(笑)

こんな勝ち方が出来るとは。
監督の手腕、選手達の戦術理解に脱帽です。

試合は、尹晶煥監督の試合後コメントに集約されています。

―― 攻められる時間が長かったのは想定内?

前半に得点をしてから押し込まれる時間が続いたのですが、相手のシュートがバーやポストに当たるシーンがいくつかあったと思います。そこで決められていたら、そのまま大量失点していたかもしれません。それが運良く失点につながらなかったので、最後は我々がしっかりと守備をやり通すためにああいう形を取らざるを得なかったですし、そういう部分を選手たちが理解してうまく対応できたと思います。

序盤から磐田の攻撃は凄まじく、いくつかのミスもあった中で、失点を小川の1点だけで乗り切ったのは、正直、運もあった。
一歩間違えれば、、、と言う試合を、勝利と言う結果にまで結び付けたのは、試合全般を通じた高い集中力と、試合に出た全員の高いレベルでの意識共有、そして、少ないチャンスを得点に結びつけた「個」の力が噛み合ったからでした。

メンバーは、前節から章太とゲリア以外の9人を変更。
アンドリューや、堀米など、ちょっと気になる欠場はあるものの、連戦を考慮したターンオーバー。

前述の通り、序盤からホームの磐田は波状攻撃。
球離れがよく、ダイレクトやワンタッチでボールを回し、サイドを大きく使っては切れ込んでクロスを上げる。そうかと思えば、リトリートボールを今度はナナメに突き刺して、ディフェンスを揺さぶる。最後はシュートで終わる意識が徹底されていて、2トップの小川、ルキアンが次々とシュートを撃って襲い掛かる。

防戦一方。
磐田のシュート数ばかりが増える中、ジェフの守備にもミスが出て、危ういピンチの連続。
完全に崩された場面もあったものの、バーやポストにも助けられ、かろうじて失点だけは免れてゆく。
磐田の攻勢にひたすらガードを固め、ガードをの内側から、隙を伺う。

すると21分、カウンターが発動。
駆け上がりながら、敵陣に入ったところで川又がボールを受けると、その左前を走っていた山下に預け、再びリターンを受けて、磐田DF藤田と対峙。トラップで藤田の体制を崩すと、左足で素早くシュート。
コースを衝いたシュートにキーパーも動けず、1本目のシュートでゴールを奪ってみせた。

この一点で、ゲームプランが定まり、落ち着きを見せるかと思いきや、思わぬ形で失点。新井一耀がボールをキーパーまで戻すと、間近までプレスをかけて来ていた、磐田FW小川航基にクリアボールを当ててしまい、それがそのままゴールに。
まったくらしくないプレーで同点に追いつかれてしまう。

正直、落胆したし、失点後はそれを見透かされたように、集中力が落ちたところへさらに波状攻撃を受けてしまった。磐田からすれば、ここが勝負どころ。一気にリードを奪って、自分たちの元のゲームプランに戻したい。

その状況を打開したのは、またも「思いがけない」プレーだった。
35分、コーナーキックの守備から、こぼれ球を左サイド深くで安田がボールを受けると、ドリブルを開始。ぐんぐんスピードを上げ、カウンターに移行すると、一人、二人、三人、四人と、安田のドリブルに合わせて、全速力で選手たちが駆け上がってくる。

コーナーでジェフのゴール前に人を集めていた磐田は、とにかく慌てて戻るしかない。
フリーの選手にボールを出されれば、失点に直結する。駆け上がってくる選手たちに、誰がどうマークするか半ば混乱状態。
安田は、ボールを離さない。誰にボールを出すのか。フィールドでも、誰もがそう思っていただろう。が、安田はそのまま中に進路を取ると、ディフェンスとキーパーの位置を見定め、ペナルティエリアの少し外から、右足を一閃。コースを衝いたシュートが、ゴール右隅に突き刺さっていた。

距離にして、70~80mを独走しての一撃。
滅多にお目にかかれないスーパーゴールが、磐田の戦意を挫き、ミスに責任と焦りを生じていた、両新井に、これ以上ない奮起をもたらした。
ゴールを決めた安田のスキンヘッドを田口が嬉しそうに叩き、「流れが変わった」事が、画面からもはっきりとわかった。

再びリードした後も、磐田の攻勢は続いた。
が、どこか焦りと、一気のラッシュをかけたせいか、心身両面での疲れを感じるようになっていった。ピンチもあったが、今度は新井章太がしっかりと防ぐ。
前半を、2-1とリードしてハーフタイムに入った。

後半になると、戦い方はよりはっきりとした。
ジェフは無理をしない。
磐田は選手を変えつつ攻勢をしかけるが、前半のようにはチャンスを量産できない。
ジェフの守備ブロックの周りでボールを回すものの、そこから先に容易には侵入できない。

時間は過ぎ、ジェフは72分、一気に3枚を交代。

山下→為田
米倉→矢田
船山→鳥海

布陣を、5-4-1に切り替え、磐田が頼みの綱にしていた、両翼を封鎖。
機能美溢れる3ラインが、磐田にスペースを与えない。

81分には、川又に代えてソロモンを投入。
前線でのボールキープ、ファウルの獲得、時間をすり潰す事を伝え、為田と共に、役割を全うして、守備陣の負担を軽減していった。

正直、後半全てを守備で乗り切るというのは、簡単なミッションでは無かったと思う。
どこかで、磐田のプレッシャーに屈して、ミスが出る可能性もあった。
が、見ているこちらの心配をよそに、選手たちは、ミッションを完遂してしまった。

2-1、スコアは動かず。
アウェイで勝利。

8月、この暑さの中、ターンオーバーを駆使し、3連勝を達成した。
全くジェフらしくない、これまでに無い力強さを感じる勝利となった。

とにもかくにも、しっかりと守備(土台)が出来てきた事が大きい。
そして、課題だった攻撃についても、選手間の意思統一が進んできた。

ハイライトは、やはり安田のゴールシーンだろう。
あの場面で、ゴール前まで駆け込む他に少なくとも4人の選手たち。
これまでならば、安田がドリブルを始めた後、どこかでスピードダウンしていただろう。

そうなっていれば、相手に戻られ、囲まれ、奪われるか、もしくはバックパスを選択せざるを得なかったに違いない。それが、あの場面では、そんな考えなど微塵も無いかのように、一直線にゴールへと向かっていた。

あのゴールは、安田のゴールであり、チームとしての意思が奪ったゴールだった。

それを、短期間で実戦での改善を見せた尹晶煥監督の手腕は素晴らしい。
試合後のコメントで挙げた課題が、実際に、メンバーを変えても改善をみせている。
今後もうまく行くかどうかは分からないが、少なくとも課題と、その解決がセットになって練習で改善されているのは間違いない。チーム作りは、進んでいる。

だから、大切な事は、この勝利に一喜一憂をし過ぎない事。
尹晶煥監督も話していたように、この勝利は運も味方し、紙一重の勝利だった。
これから先、上位と当たる中で、負けることもあるかもしれない。その結果、順位を大きく落とし、上位が遠く霞むかも知れない。その時、サポは、目先の勝敗ではなく、チーム作りが正しい方向に進んでいるかを見据えて、後押しをしなくてはならない。

ジェフはチーム作りの途上であり、挑戦者の立場。
良い流れにチームが乗りつつあるだけに、
その事を忘れてはならないと、思いを新たにした一戦でした。