2023-2024

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2023

物事がひと段落着くと、あの時にああしておけばと、結果論で語りたくなるもの。

けれど、こと、今年(2023年)に関しては、果たしてそうだろうか?と思うことの方が多かった。ああいう状況があったからこそ、今、こうなっているのでは?と、成り行きの妙、因果、運命めいたものを振り返って強く感じた年になった。

そう感じた最たるものが、今年の開幕時の編成だった。

最後まで得点力不足で苦しんだ昨年。
その解消が命題であったにも関わらず、補強は呉屋のみ。
後は大卒新人の小森が居るだけ。
外国籍の助っ人はゼロ。
アカデミーの星、ソロモンまで放出。

初めて指揮を執る小林監督に、質量ともにあまりに不足。
いくら理想の高いサッカーを指向しても、結果が伴わなければ、また賽の河原だ。
そんな不安しかない新体制発表が始まりだった。

実際、その懸念は現実のものとなった。
シーズンが始まると、攻撃的で魅力的な戦いはするものの、肝心のゴールが決まらない。
一時は降格圏内にまで沈み、この序盤の出遅れが原因で、昇格には及ばなかった。
夏に、ドゥドゥが加入し、大きく得点力が改善したことからも、悔やまれた編成ではあった。

が、それは一面でしかなくて。

果たしてドゥドゥあるいは、彼ではない外国籍選手は、シーズン当初から加入していて結果が出せただろうか。
シーズン前半の試行錯誤を経て、進むべき方向性を見出し、そこに足りないものを持っているからドゥドゥが呼ばれた、そしてフィットしたと言う側面を外す事が出来ない。

何より、最初から助っ人が居たら、小森の開幕からのブレイクはあっただろうか。
ファブさんが最初から通訳としての仕事に専念していたら、「ジェフ三唱」は誕生していたのだろうか。

UNITED Onlineの小林監督によるシーズン総括には、獲得したかった選手に断られた事も現実問題としてあったと言うくだりもあった。

狙ってこうなったのではなく、思い通りにならなかった事も偶然と必然の産物として、今季のジェフが形作られていったと振り返る事が出来る。

ともすれば、バラバラになって、またゼロからやり直しにもなりかねなかった。
そのバラバラの矢印を一つの方向に徐々に収斂させる時間。手応えを、結果と確信に変える時間。何度となく繰り返された過去の苦い経験。それをようやく糧にして、フロントも、サポも、チーム作りに時間が必要である事を理解し、耐えた事が、殻を破り反転攻勢への道を拓いたのではないかと思う。

それが出来たのは。

各試合後のレビュー、選手コメント、紙面、webで丁寧にチーム情報を発信し続けたオフィシャルライターの細江さん、あるいは、試合後のアップされるsceneの映像制作スタッフ、ユナパレポのスタッフといった、公式の発信があったからだった。

それらを見ていれば、チーム内の空気が決して悪くない事が読み取れた。
苦しんではいるけれども、やっている事に対して批判的な空気はない。何かのきっかけさえ有りさえすれば、このサッカーで結果は出せるのではないかと。

ただ、本当に紙一重の状況であったと思う。

正直に言えば、自分自身は7月の大宮戦に敗れた時にかなり今季に対して冷めてしまっていた。ミスを繰り返し、メリットよりもリスクの高い、最後尾からのビルドアップに固執するサッカーに。得点力不足と言う、予想された課題に対しての無策に。

このあたりのタイミングで、チームの中では小林監督が何か吹っ切れた。
それまでは柄では無かった情熱的でストレートな言葉を選手にぶつけるようになった。
「このままでいいのか」と。

結果を出す指導者は、「理論」と「情熱」が両輪なのだろう。
小林監督は、自らが変わる事で、態度で言葉でチームに再び火を点けた。
そして、国立で行われた清水戦。スタンドを埋めた5万人近くのサポの下で戦った事が、選手の内面を変える一つのきっかけになり、その熱が選手にも伝播していった。

と同時に、この頃に後の今季ベストメンバーと言える布陣が固まっていった。
ドゥドゥは7月最後のゲーム・山口戦で加入後2試合目で初ゴールを奪い、その後もゴールとアシストを量産して見せた。

例年、成績が落ち込む鬼門の8月も、徳島に引き分け、山形戦にこそ敗れたものの、藤枝、磐田に競り勝ち、そこから連勝街道が始まった。

決定的だったのは、9月16日に行われたアウェイ・栃木戦だったろうか。
退場者を出し、PKを与えるも、凌いで、攻め続け、ラストプレーでもぎ取った勝ち点3。
その試合後、小林監督から投げかけられた「サポーターの底力をみた」「サポーターの力を借りたい」と言う言葉。

サポーターは敏感だった。
これまで、ずっと長い間、一方通行で、片想いな応援が果たしてチームの力になっているか、自分自身に対して懐疑的だったジェフサポが、はっきりとその力を求められていると自覚した出来事だった。

クラブも、監督の言葉に応えて、9月21日に『今こそ WIN BY ALL! 2023』を宣言。
フクアリにはついに10,000人を超えるサポーターが戻り、アウェイにも大挙してサポーターが駆け付けるようになった。

プレーオフ圏内、あるいは自動昇格圏内すら視野に入り始めたが、、、
そこから先が、一筋縄では行かなかったのは、やはりJ2と言うリーグの難しさ。
気の緩みも無く、何の油断もなく、目の前の一戦に全力をかけて戦っても、壁はまだ厚かった。

5-0で岡山に勝利した後、中断明けの水戸をホームで崩し切れずに痛恨の引き分け。
ここで勝っていれば、順位が入れ替わる可能性もあった上位・東京Vとの直接対決に、2-0とリードしながらの大逆転負け。

かろうじて、プレーオフ圏内こそ確保したものの、ホーム最終戦も敗れ。
そして、プレーオフ準決勝では、ベストメンバーで臨みながら、決めるべきところで決めきれず、ホームチームの地力に屈して、シーズンを終える事となってしまった。

思い返してみても、紙一重の可能性を信じて戦い抜いた、本当に苦しい毎日だった。
と同時に、こういう何か目標がある終盤戦は、久しく迎えた事が無かった。
2017年以来だったろうか。楽しく、充実した日々でもあった。

が、またしても、何も勝ち得る事は出来なかった。
どんよりと重たく、足下から寒さの来る味スタで、首を垂れる選手、スタッフ。もうこのメンバーで戦うことは二度とない。何度も見て来た景色。また来年もJ2で戦う事だけが決まって、シーズンは終わっていった。

日本平遠征はなくなり、国立で行われた決勝の結果を傍目に、あと一ヶ月もすれば、誰が残り、誰が去ったのか分かる。そう自分に言い聞かせて、後回しにしていた溜まった仕事や身の回りの事に向き合っているうちに時間は過ぎていく。

2024

新年と共に飛び込んで来た、小森の契約更新に歓喜し、オフシーズンを経て固まった陣容と、新体制発表で語られた監督の言葉に、新シーズンへの思いを新たにする。

今年(2024年)は勝負の年、
目指すのは「優勝」なのだと。

もうあと二週間で、2024シーズンが始まる。
各チーム、侮れない補強をし、それぞれが「優勝」を目指している。
きっと今年も、一筋縄ではいかない、難しい一年になるだろう。

22チームから、20チームに減った事で、昨年よりも4試合少ない38試合。
一試合の価値は、昨年よりも更に重い。

開幕戦での勝利も、最終盤の勝利も、どの対戦相手に対する勝利も、勝ち点は同じ3。
重さは同じ。

昨年の悔しさを忘れてはいないか。
それだけではない、これまでずっと味わって来た日々への悔しさを忘れてはいないか。
今年こそ全員の力で掴み取る断固たる決意を、優勝の瞬間まで保てるか。
一つの方向を全員で向かい続ける事が出来るか。

本気と覚悟が求められる一年になる。