劇場再び 2023 J2第36節・ベガルタ仙台戦

劇場再び 2023 J2第36節・ベガルタ仙台戦

2023/9/23(土)18:00
フクダ電子アリーナ
J2第36節
千葉 3(1-0,2-1)1 仙台

<得点>
41分 千葉 22佐々木(16田中のロングスローを、9呉屋、77ドゥドゥが頭で繋ぎ、22佐々木が左足ボレーシュート。)

56分 千葉 9呉屋(22佐々木のロングフィードを、67日高がトラップして77ドゥドゥに預け、ドゥドゥからの縦パスを日高が再び受けてクロス。9呉屋が右足でゴール。)

85分 仙台 7中島

90+3分 千葉 11米倉(41小森がプレスからボールを奪い、クロス。右から飛び込んだ米倉が、スライディングシュート。)

千葉公式
仙台公式
Jリーグ公式

栃木戦後に小林監督は言った、
「ジェフのサポーターの底力を借りたい。」

監督が話したように、このクラブは難しい時間が長かった。

自分の応援は力になっているのか。
自分はこのクラブに求められているのだろうか。
そんな悶々とした思いが、もう何年も何年も続いていた。
そうして、距離を置いてしまった人も少なからずいる。

そんなジェフサポの心に、小林監督の言葉はストレートに響いたのではないだろうか。
チームは目指す目標に向かって結果を出している。そしてサポーターに助力を求めている。ならば、この言葉に応えなくてはならない。監督の言葉通りにフクアリを10,000人以上のサポで埋めなくてはならない。そのために、一人一人のサポが出来る事を考え、動く。クラブも「今こそ!WIN BY ALL!」キャンペーンを2008年以来に発動して機運を煽った。

家族に、友人、同僚に声をかけ、足の遠のいた仲間に力を貸してくれと呼びかける。
すると、前日夜から、あらゆる席種のチケットが次々と売り切れていった。

10,000人を超えるフクアリは全くの別空間だ。
「劇場」と呼ばれる所以。本気のジェフサポ。それを久しぶりに体感する事になった。

開門前からフクアリは慌ただしかった。
次々と来場するサポ。

そのユニやシャツはまちまち。hummelのユニもあれば、Kappaやミズノを着る人も。
黄紺に蛍光イエロー、「MAKI」「FUKAI」ネームもまちまち。
久方ぶりにジェフを観に来たと言う人も多かったのだろう。

あちこちに「今こそ!WIN BY ALL!」のポスターが貼り出され、コンコースにはサポの奮起を促す手書きの幕、お手洗いにまでメモが貼付けられていた。

徐々にスタンドは埋まり、それと共にピリピリとした空気が醸し出されていく。
GK練習、次いでフィールドプレーヤーもアップを開始。
応援が始まると、声と手拍子が音の塊となって降り注ぐ。

相手は仙台。
今季は苦戦しているものの、戦力は分厚い。

監督は過去にジェフのコーチも務めた堀さん。
秋山、若狭、氣田、小出、松澤と、縁のある選手も多い。

仙台サポも大挙してフクアリに駆け付け、スタンドを埋める。

スタメンは、前節からCB2人が変更。
鈴木大輔の出場停止はともかく、新井一耀の名前が無い。
左にメンデスが初先発、右には佐々木が入った。

それ以外のスタメンは栃木戦から変更なし。
ベンチには久保庭、そして小森が復帰。新明がメンバー外となった。

午前中までパラついていた雨も上がり、湿度はあるものの、気温は下がり過ごしやすくなって来た。今年最後のナイトゲーム。仙台からはカントリーロード。そして、サポーターで埋まり、ペンライトで彩られたスタンドから、ジェフのアメグレが響く。

18:00キックオフ。

最初から攻勢に出たのはジェフ。
開始1分。セットプレーの早いリスタートから左クロス。こぼれ玉に呉屋が詰めて、まず最初のチャンスを迎えると、素早い出足と球際の厳しさで仙台を自由にさせない。

CBのメンデスと佐々木は、実戦では初めて組んだものの、普段の練習では何度も組んでいる。すぐに馴染み、佐々木は次々とロングフィードを前線へ送り込む。メンデスも高さ、強さに加えて、要所で身体を投げ出して守るしぶとさもあり、安定した守備を見せていた。

そのメンデスが何度も大きく両手を広げ、ラインを高く保つように指示を送る。

全体をコンパクトに保ち、プレスをかけ、後ろへと下げるボールに更にプレッシャーをかけて、苦し紛れのパスを誘い、奪っては、ショートカウンターを繰り出す。

一方の仙台は、細かいパスでは容易に囲まれてしまう状況。
それに対応して、CBから長いボールをジェフの高いラインの背後へ送ろうと試みる。
その試みは半ば成功していて、齋藤学や、ホヨンジュンがシンプルにゴールを狙うシーンも。ただ、決定機は未然に防ぎ、流れは徐々にジェフに傾く。

22分には、仙台のセットプレーを防いだ後、カウンター。
見木から右前方のドゥドゥに縦パス。さらに左前方、ディフェンスラインの裏に抜ける呉屋へとボールが繋がるも、倒されてFK。田口のFKは枠を捉えず。

26分には、またもカウンターから右の田中に繋ぎクロス。
風間、日高、再び田中、さらにドゥドゥと波状攻撃。
が、優勢にゲームを進めながらもなかなか得点を奪う事が出来ない。

攻め続けて得点が生まれたのは41分。
右の田中のロングスローを、呉屋、ドゥドゥが競って、こぼれて来たボールを佐々木が左足ボレーで豪快に撃ち抜いて、J初ゴール。これで焦る事無く、精神的な余裕を持って前半を終える事が出来た。

後半に入り、さらに攻勢を強めるジェフは、カウンターに加えて、左サイド(仙台の右)を攻略して次々に決定機を作る。田中、ドゥドゥ、呉屋と決定機は作るものの、詰めを欠いてゴールが奪えない。

すると55分、目の覚めるようなプレーが飛び出した。
ジェフが奪ったボールを繋いで回し、最終ラインの佐々木にボールを戻すと仙台のゴール裏からは大きなブーイングが起こったが、直後、左足から糸を引くようなロングフィードが左のライン際にいた日高に向けて放たれると、ブーイングは驚きと動揺に変わった。

日高はそのボールを体勢を崩しながらトラップして前方のドゥドゥに預けると、猛然とゴールに向かってインナーラップ。その前方のスペースに向けてドゥドゥが右のアウトサイドで絶妙な縦パス。再びボールを受けた日高は、GKとDFの間のスペースに完璧なクロスを送り、最後は呉屋が楽々と流し込んだ。

佐々木のフィードから呉屋のゴールまで、相手に一切触れさせないファインゴール。
昔、国立の鹿島戦で見た、キーパーから一度も相手に触れさせずにボールを繋ぎ、最後はマリオ・ハースが仕留めたゴール。あのゴールを思い出す完璧なゴールだった。

ゴールした呉屋にはベンチメンバーも全員が飛びついて祝福。
そして、スタンドに向けてジェフ三唱。
長くノーゴールに苦しんだ呉屋も、これで重圧から解放されるのではないだろうか。

2点差となり、前に出ざるを得ない仙台だが、ペースは依然としてジェフ。
58分にはドゥドゥに代えて米倉。さらに68分には、呉屋に代えて小森。風間に代えて小林を投入してリフレッシュしつつゲームをコントロールする。

交代で入った小森。恐らくだが、客が入れば入るほど。舞台が大きければ大きいほど。それを力に変えてしまうタイプなのではないだろうか。
出場するや否や、「決めてやる」とばかりにペナルティエリアの角あたりから、左足を強引に振り抜いて対角線のゴールを狙う。無理からのシュートなのに、もう少し落ちていればゴールになっていた鋭い一撃。さらに、終盤には日高のクロスにダイレクトに合わせる。キーパーのファインセーブに阻まれるも、本当に相手にとっては怖い選手だ。

一方、2点差で前に出るしかない仙台。
75分頃からは、疲れからからやや強度の落ちたジェフのプレスの網を潜ってカウンターを仕掛け反撃。鈴木椋大のファインセーブもあって無失点に押さえていたものの、85分にはボールを奪われて再びカウンター。中島元彦選手に豪快なミドルを決められて1点差に。

得点を奪われた後、ピッチでは選手達が集まって状況を確認し合う。
スタンドからは、大きな「WIN BY ALL!」のコール。

今季前半戦は、良いゲームをしながらも、勝てない試合が多かった。
それはもう繰り返さない。ゲームをクローズする為に再度集中をし直し、再び前からのプレスを強めて仙台を押し返す。
ATには、小森が相手のミスを逃さずにボールを奪うと、右から駆け上がって来た米倉にパスを通し、スライディング気味にシュート。駄目押しの3点目。
またもジェフ三唱がフクアリを包む。

仙台の戦意を挫き、最後の交代枠では久保庭をデビューさせ、3-1で試合終了。
13,686人を集めたフクアリで6連勝。
ホームに限れば7連勝を達成し、暫定ながら5位に浮上した。

何よりも、監督の呼びかけに応えて集まったサポーターの前で、堂々たるプレーを見せ、フクアリ劇場の魅力を存分に引き出してくれた。

試合後の円陣、場内一周、でんぐり、オブラディ、俺たちジェフ、写真撮影。
恒例となった試合後のセレブレーション。
応援でくたくたに疲れながらも、みんな笑顔だった。

きっと、今日のフクアリに足を運んだジェフサポは、残り試合もフクアリに足を運んでくれる事だろう。さらに家族、友人、同僚を誘ってくれるかも知れない。
そう思える事が、格別のゲームとなった。

連勝を重ねた事で、選手達のプレーから一層の自信を感じる。

最前線からのプレス時の選手の連動。カウンターの場面での複数選手の並走。
それらが迷うことなく、オートマティックに、一つのプレーとして繋がっている。
迷いが無いから、一つ一つの走りが効果的で、相手より走っているように見える。

それが、選手が代わっても質を維持することが出来ている。
攻撃面でも、シーズン当初のように小森一人が頼りのチームではもうない。
3点目に象徴されるように、小森をもチームの一員として活かし、チームとして得点出来るようになった。

課題は、シュートの精度と、攻め疲れの時間帯にミスを起こさないよう、どう乗り切るか。
前節栃木SC戦も、そして今節も、鈴木椋大のファインセーブが無ければ落としていた可能性がある、紙一重のゲームだった。

試合の締め方。より前に出るのか、試合全体の中でのON/0FFを明確にして、状況によっては最終ラインをブロックで固める戦い方に時間帯ごとに変化するのか。
想像するに、前者の方向性になるのではないだろうか。ナイトゲームではなくなるものの、これから10月に入って気温も徐々に下がって来る。退いて相手を引き込むリスクを取るよりも、こちらが攻める事で相手に攻めさせない選択するように思う。

残りは6試合。連勝するほどに次の一勝の意味が大きくなる。
次はアウェイで、7位・岡山との対戦。岡山が勝利すればジェフと順位が入れ替わる。
まさに天王山の戦い。ここまで岡山は直近6試合で5勝1敗。好調そのものだ。

昨年、プレーオフで涙をのんだ岡山。
その悔しさをこの試合にぶつけて来るだろう。
意地と意地のぶつかり合いになる。難しい戦いになるだろう。しかし勝たねば道は拓けない。
これもまた巡り合わせ。木山さん、勝負だ。