奪われた先手 2023 J2第3節・ザスパクサツ群馬戦

奪われた先手 2023 J2第3節・ザスパクサツ群馬戦

2023/3/5(日)14:00
フクダ電子アリーナ
J2第3節
千葉 2(1-2,1-0)2 群馬

<得点>
4分 群馬 13武
36分 千葉 41小森(チェイスでボールを奪い、フェイントでDFとGKの逆を衝くシュート)
45分+3分 群馬 3畑尾
62分 千葉 14椿(チェイスでボールを奪い、中に切れ込んでシュート)

千葉公式
群馬公式
Jリーグ公式

当たり前だが、サッカーは相手がいる。
良い試合を見せれば、それを敵は研究し、どうやって打ち負かそうか分析して来る。
強みを消し、弱点を衝き、自らの強みをどう活かして優位に試合を運ぶか。

今日の群馬、まるで大槻監督に『殴られる前に殴って来い』と、送り出されたかのようだった。ホーム初勝利を期し、群馬対策を練り、気合と集中を高めて望んだはずのジェフだったが、群馬のそれはジェフの更に上を行っていた。出鼻を挫かれ、後手を踏む。


群馬は、的確にジェフの弱点を衝いて来た。
先発は矢口ではなく椿。明らかに攻撃的。矢口のように可変して4バックになるような事はほぼ無く、高い位置をキープする。その裏のスペースを狙う。そこは鈴木大輔が守るが、昨年から既に単純な走力勝負では優勢を保てない。

前半3分。狙われた。鈴木大輔が剥がされ、折り返しは守備に戻った末吉がクリアするものの、拾われたボールを再びミドルで撃ち込まれる。新井章太は掴み切れず、ボールを内側にファンブル。そこを、武颯に詰められた。

経験ある選手のミスが続けば、ゴールを割られるのもまた必然。
プランが狂い、群馬ペースに引きずり込まれる。
試合は落ち着きの無い展開へと揺れていった。

リードを奪い、守備に重心を置く展開にシフトチェンジする群馬。
5バック気味に構える彼らに、末吉、椿が抉るスペースを埋められる。
攻撃的であれば、引かれた時にどう崩すかと言う課題が合わせ鏡のように付いて回る。
攻めようにも、スペースが、ない。前に運べば、攻撃がノックしてしまう。

対照的に群馬は、縦にシンプルな攻撃で前がかりになったジェフの裏を狙う。

試合は大まかに10分間ごとに両軍の主導権が入れ替わった。
最初の10分が群馬、以降、千葉(~20分)群馬(~30分)千葉(~40分)群馬(~HT)。

20分までの最初のジェフの時間帯。
CKから鈴木大輔が頭で狙うも枠を捉えず。
小林祐介がこぼれ球を強烈なミドルで狙うも、相手のブロックに遭う。
前節の山形といい、今日の群馬といい。最後の最後で身体を張って来る粘り強さは標準装備。J2の厳しさを改めてまざまざと感じる。

30分頃までは再び群馬ペース。
プレーの選択がシンプルで、身体が強く、足が速い。
26分には、ボールがオフサイド無く裏に流れ、絶体絶命のピンチを迎えるも、長倉のシュートを新井章太が片手一本でセーブして事なきを得、29分には逆にカウンター。椿の中央突破から、見木が決定機を掴むも、シュートは櫛引に防がれてしまう。

嫌な流れではあったが、それをまたも「彼」が変えてみせる。
36分、前線のチェイシングから小森がボールをかすめ取って抜け出し、身体を反転させ、キーパーの重心の逆を奪って、ニアを撃ち抜く技ありの一撃。
リーグ3試合連発。ちばぎんカップから4試合連発のゴール。
そして、『ファブチャンネル』で予告されていたパフォーマンスでスタンドを煽る。
ヒーローの降臨。フクアリの空気は一気にジェフのペースへ。

しかし、どうしてこの空気を逆転へ繋げられないのか。
前半のラストプレー。ファウルを与えてFKから、3人で囲んでいた畑尾に頭で決められて、結局リードを許しての折り返しとなってしまう。

迎えた後半、攻めるしかないジェフは、後ろを衝かれるリスクを冒しながらも攻勢を強め、いくつかのチャンスを作った後、62分に椿がこれも前線のチェイスからボールを奪って持ち込み、再び同点ゴールを奪う。

2得点とも、崩し切った訳ではないが、前線からのプレスが功を奏してシュートチャンスを生み出したもので、狙い通りの形の一つと言える。


その勢いのままに逆転勝利で終わりたかったが、カウンターから、見木→呉屋と繋いでの一撃は。前半の見木同様に、櫛引に防がれてしまう。
最大の決定機を逃し、その後はスコアを動かせなかった。

疲労もあるのだろう。試合展開は、終盤にかけて大味になっていく。全体が間延びして、最終ラインとボランチの間に大きなスペースが空くようになる。そこを群馬に狙われると、途端に大ピンチだ。全員が慌てて戻って何とか身体を張ってブロックする。組織で守っているのではなく、気合と根性で守っているようなヒヤヒヤぶりだ。

交代も功を奏さず。
先発組がかなり消耗しており、交代組となかなかリズムが合わない。
壱晟は上手く試合に入っていたものの、ゲームを落ち着けるまでには至らず。
捲土重来を期す田中も、スペースが無く、サイドを思うように攻略する事が出来ない。
時間が、じわりじわりと過ぎていく。

ATは5分。
ラストプレー、田口が渾身のミドルを放つも、櫛引のセーブに遭い試合終了。
ホーム初勝利はならず、痛いドローに終わった。

落ち着きの無い試合をしてしまったと言うのが、試合後の印象。
群馬にしっかりと対策を打たれた上に、守備の要のミスから、早々に先制点を許して主導権を奪われたのが苦戦の要因。そこに持ち込んだ群馬・大槻監督の指示と、集中力を持って試合に臨んだ群馬の選手達をまずは褒めるべきだろう。
ジェフからすれば、1失点目も、2失点目も、絶対に耐えるべき場面、時間帯で耐えられなかった。

加えて、前節に続き今節も決定機逸が重なった。
前半の見木、後半の呉屋。これも櫛引を褒めるべきではあるが。
今のジェフが目指しているのは、誰もがゴールを奪うチーム。

見木、呉屋には少し焦りもあるだろう。入らなかったシュートを責めるのではなく、我々の応援が足りなかったと自戒したいものだ。初ゴールが何よりも特効薬。次節こそ期待したい。

そして、もう最後に。
いま、我々は新しいヒーローの誕生を目撃している。
フクアリから足が遠のいたサポも、ジェフを観た事が無い人も、観るなら今だ。