4/21(土)・第7節・大宮アルディージャ戦

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飛車角落ちの大宮相手に、一方的に攻め込みながらも突き崩せない。
1点をもぎ取るために、恐ろしいほどにパワーが要る。水本・水野を強行出場させ、岡本を外して立石を先発させても、どんな形でも良いから、とにかくこの試合は勝たなくてはならなかった。掴んだはずの「きっかけ」を失ってしまった、ナビスコのガンバ戦と神戸戦の結果を受け、正に背水の危機感がチームに宿っていた。


試合前から、ピッチに現れた立石に大きなコールが起こる。
いつもより大きな歓声は、誕生日や久々の出場へのものではなく、「なんとかして守り抜いて欲しい」と言う願いを込めたものだった。スタメンは、いつも通り。五輪組の二人が居る事が、ある意味では「異常」だったが。


ゲームが始まると、ややゆっくりとした展開。
大宮は、攻撃の主軸となる藤本や吉原、守備の要のレアンドロを欠く苦しい布陣。攻めには積極的でなく、後ろの枚数を多くしてジェフの攻撃を停滞させる、カウンター狙いの布陣の見えた。最初は出方を伺っているように見えたジェフだが、相手が出てこない事が分かると、一気に潰しにかかる。羽生・工藤が巻の後ろで縦横に動き、一旦戻しては、ジョレの右サイドから、ピッチを最大幅使ったサイドチェンジで智へとボールを振る。


この「ゆさぶり」が効いたか、徐々に陣形を乱していく大宮。
中盤のプレッシャーが弱く、易々とボールを奪う事が出来る。1点さえ奪えれば、これは快勝した横浜FC戦と同じようにハメて打ち倒す事が出来る。流れが大きく、ジェフへ傾いていた。だが、この日は、1点が遠かった。浩平のダイビングヘッドがわずかに枠を捉えず、羽生のカウンターシュートも枠外。セットプレー、インタセプト、繰り返す波状攻撃。完全にサンドバックにはしているが、大宮の頑張り、と言うよりもジェフ自身の攻撃に今ひとつキレと精度が無い。いつもと違って攻撃が左寄りになるのも、やはり晃樹にいつものようなキレが無かった事と無縁ではないだろう。


結局、チャンスはありながら、決め切れなかった前半。
タテさんの出番もほとんど無く、あと一人、シュートに専念できるFWが居れば、決めきる力、それが欲しかった。ただ、流れが良いだけに、誰を外すかと問われれば難しい。飛び抜けた選手が居ないだけに、調子の良い選手に任せると言うのは、合理的な戦い方だ。


交代の無かった後半開始時。流れは変わらない、ジェフのペースだ。そして、ゴールを奪えない事も。いやな予感、悪い展開を不安に思う中、均衡を破ったのは、選手達の執念だった。
中盤でボールを受けた水野が、やや遠目からシュートを放つ。GKがファンブルしたところへ、羽生が猛然と突っ込んでボールを奪う。そのまま、体制を崩しながら身体を限界まで捻って上げたボールは、GKに触れられながらも、中央へ走りこんだ工藤の真上にあった。DFに囲まれながらも、小さな身体をタテに捻ってオーバーヘッド気味に右足を振りぬくと、ボールは真新しい黄色のゴールネットを突き破った。
スタジアムの興奮が、待ちに待った先制点に、アクロバティックな執念の一撃に頂点に達する。工藤。正に、調子の良さを信じた、アマル監督の賭けの勝利だった。


意気消沈する大宮だが、大型FWを次々に投入して何とか同点で終わろうと、遅まきながら反攻を開始する。それでも、この日のジェフならば、押し切る事が出来たはずだ。だが、ようやく奪った1点を余程守り抜きたくなったか、残り時間はまだまだあるのに、気持ちが守りに入ってしまった。そこに隙が出来た。
橋本のロングシュートがバーを叩き、立石がすんでのところで足でブロックする。プレーは荒れ、途端に泥仕合の様相を呈す。


なりふり構わない時間稼ぎで、何とか耐える時間が続く。
時間を稼ぐために選手を変え、青木が前に行きたい気持ちを抑えてドリブル突破でサイドへと流れて時間を潰す。スマートなやり方じゃないが、それでも今必要なのは、一つでも多くの勝ち点。勝つことで、自分達に自信を取り戻したかった。ようやくタイムアップの笛がなった時、ピッチに伏し、笑顔で抱き合う姿に、この試合の重圧の重さを感じずにはいられなかった。


ゴール裏だけでなく、メインスタンドでも、でんぐり返しをして喜びを分かち合う選手達。
束の間の一息。さあ、川崎・浦和との上位対決。柏との千葉ダービーだ。