激闘の果てのドロー。闘志衰えず、最後の3戦へ。-第31節・大分戦-

激闘の果てのドロー。闘志衰えず、最後の3戦へ。-第31節・大分戦-

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千葉 0(0-0、0-0)0 大分

小雨の降る九石ドームは静かに熱を帯びていた。
九州での日曜開催にも関わらず、開門前から黄色い列をなすサポーター。前日、J1残留を争うライバル達が揃って勝ち点を伸ばした事もあって、皆、緊張感のある面持ちだった。「周りは関係ない」「今日勝てば問題は無い」そう声を掛け合いながら、開門のその時を待った。ここまでやって来る、そう言う気概のあるサポーターばかり。気持ちは一つ。求めるものは勝ち点3だけだ。

九石ドームは、開閉式のドーム球場。
この日、ドームは締め切られていた。スタジアムの中に入ると、完全な屋内ではない、吹き抜けになった不思議な空間が目の前に広がる。まだ、大分のサポーターもあまり入っていない。ここに来るまでに驚かされたが、ずいぶん駅から遠く、交通の便が悪い。恐らく、出足の分かっている地元のサポは、時間帯を考えながらやって来るのだろう。


ただ、客の出足に関係なく、ホームの空気は温かった。
それはそうだろう。つい先日、ナビスコ杯を制覇し、リーグ戦も上位につけている。何もかもが初めての体験。浮かれない方がおかしい。自分達もそうだったのだから、それは分からないでもない。けれども、その浮つきは試合にも必ず現れる。
勝機は必ずある。この緩んだ空気ならば尚更だ。

温い空気の中に、ピリリとした緊張感を孕ませて、ジェフの選手達が挨拶にやって来る。
誰もが、引き締まった良い顔をしている。どう言う試合になるかはわからない。けれども、自分が見たい「戦う意思」「強い気持ち」それを存分に見せてくれそうな予感はした。

勝たなくてはならない戦い。
ミラー監督も、その気持ちは同じだったのだろう。アウェイではあるが、攻撃的な陣容がスタメンに並んだ。

-----巻-----
谷澤--ミシェウ--深井
--下村--工藤--
良太-エド-池田-坂本
----岡本----


現時点のベストメンバーと言っていい、仕掛ける布陣。
驚いたのは、水曜日にフル出場していたミシェウが先発であったこと。意図は明確。とにかく、前でキープして、攻め抜くことだ。それが出来る布陣。勝ちきるための布陣であった。

対する大分もブラジル人3人をはじめ、ナビスコ杯を獲ったメンバーが並ぶ。
こちらも優勝するためには落とせない戦い。天皇杯を捨ててでも、リーグに賭けて来た。
しかし、どこまで選手達の手綱をシャムスカ監督が引き締めて来れるか。

ドームに両チームの声援が反響する。
ジェフも、少ないとは言え今日はよく声が出ている。「WIN BY ALL!」のコールから、「Let’s go JEF」へ。選手の背中をいつも以上に後押ししたい、その気持ちを声援に込める。
ユニフラッグと球団旗がスタンドを彩り、いよいよキックオフだ。

序盤から両チームは激しい攻防を見せる。
先に仕掛けたのはジェフ。両翼の谷澤・深井に、ミシェウ・工藤が絡んで、細かいパスを繋ぎながら前へ前へと押し上げようとする。しかし、良いところまで行くのだが、大分の最後の守りが厳しい。シュートまでは持ち込ませない堅い守備網。すぐに解った。シャムスカ監督はスタンドの緩さとは一切関係なく、このチームを、この試合に向けてしっかり引き締めて来ていると。
数的優位と、フィジカルの優位性を前面に出し、繰り出されるカウンター。前に運ぶまでに、かける手数の少なさが際立つ。一旦守っても、弾いた先には、ウェズレイに高松・金崎。押し込まれ、あっという間にコーナーキックを何本も奪われてしまう。

さすが、最小失点最小得点で勝ち点を積み上げて来たチームと言うべきか。
セットプレーに力強さがある。一発一発が、簡単には終わらせてもらえない。ボディーブローのように、じわじわと効いてくる。こぼれ球へのマークがずれ、フリーでシュートを撃たれる。しかし、寸でのところで、守備陣が踏ん張る。試合は、我慢比べの様相を序盤から呈しだした。

ジェフは、守りきったボールを前線の巻へと送り込む。
しかし、そこからが誤算だった。ボールを入れても、悉くがファールの判定となる。2005年のナビスコ決勝を裁いた松崎主審。この日はかなり神経質。少しでも腕を使ってガードしようものなら、すぐに笛が鳴る。いつも通りのポストをしようにも笛が邪魔をする。こうなると、起点は自ずからミシェウに限られて来る。大分は、それを見越したようにミシェウへのプレスを早くする。そして、彼からのパスを受ける谷澤・深井へのマークは厳しい。必然的にバックパスが多くなり、攻撃はスローダウンせざるを得ない。
圧倒的にやられている訳じゃないが、嫌な展開だ。

もどかしい展開を打開しようと、後半、ジェフはさらに一段ギアを上げる。
とにかく点を獲る。その思いが強く出た立ち上がり。谷澤・深井が1対1で勝負を仕掛けるシーンが多くなり、大分陣内に攻め込むシーンが多くなる。
前線だけでなく、下村や坂本・良太も攻撃に参加し、前線でのボールキープ時間を長くする。ルーズボールを奪う回数が増え、その位置も高くなる。

獅子奮迅の戦いを見せたのが坂本。
ボールを奪い自ら仕掛け、シュートを放ち、そしてまた戻って相手との1対1を制してカウンターの起点となる。その気迫に焚き付けられ、全選手が前へ前へと挑みかかっていく。いける。先制点は必ず奪える。実際、決定的と言う場面は何度も訪れた。
しかし、どうしてもゴールだけが奪えない。大分の守備陣が、最後の集中を切らさない。お互いの意地と意地が、大分のゴール前で交錯する。

それでも、もはやアウェイで勝ち点1ならOKなどと言っていられない。
谷澤が左サイドを切り裂く。深井が1対1になりかけるが、安全策を伺う内に潰される。そして、最大の決定的シーン。ミシェウが1人・2人と交わしシュート体勢へ。しかし、立ち塞がる青い壁にタイミングがずれたのか、地面を蹴りつけてシュートはミートしない。しかも、このプレーで足を痛めてしまう。何とかプレーを続けようとするが、結局、しばらくして大輔との交代となった。

ミシェウが下がったあたりから、大分の攻撃シーンも増え始める。
ジェフが枚数をかけている分、大分のカウンターは余計に鋭さを増す。
加えて、不可解なジャッジと、わざとらしい大分DF上本のラフプレーが、ジェフ側の集中力を削いでいく。スタンドからも、焦りを含んだ怒声が響く。

「時間が無い!グッピー、早くボールを出せ!」
巻が、そう叫んでいるように見えた。

残り時間との戦い。両監督とも、ベンチを飛び出して、選手達に激しく指示を送る。
お互いに欲しいのは勝ち点3だけだ。

最後の最後まで、ボールを激しく奪い合い、潰し合う攻防。
だが、スコアは動かないまま、試合終了の笛を聞いた。
「ああ!くそ!」
誰かが、タオマフを叩きつけて悔しがっている。叫び続けて、ふらふらとしている視線の向こうで、倒れ伏している選手の姿と、その選手に声をかけて、こちらに向かって駆けて来る坂本の姿が見えた。

081109_03勝てなかった。勝たなければならなかった。
しかし、今日で何かの結論が出た訳じゃない。選手達の目は、勝てなかった事への悔しさはあっても、後ろ向きなものは何一つ無く。残り3試合をしっかりと見据えていた。
その姿をしっかりと目に焼き付けて、そしてその背を声援で見送っ
た。

社長と島田さんが出て来て、まだまだこれからと声をかけてくれた。
順位は17位に落ちた。しかし、残り3試合がある。その中に、ホームゲームも2試合ある。苦しければ苦しいほどに、力を発揮するのがジェフと言うチームであり、追い込まれれば追い込まれるほどに団結するのがジェフと言うチームだ。

チームを応援していれば、良い時も悪い時もある。
それを何処よりも知っているのは、ジェフサポーターではないだろうか。
だから、今がどう言う時なのかがわかる。
残り3試合、やるしかない。戦う準備は、整っている。


追伸:大さんが、この試合でリーグ通算300試合出場を達成!
次のフクアリの横浜戦では、大さんを祝う意味でも必ず勝利しなくては。本当に、大さんおめでとうございます。