2019年シーズン総括 チームとしての「芯」を再び求めて

2019年シーズン総括 チームとしての「芯」を再び求めて

年が明け2020年1月。
遅くなってしまったが、2019年を振り返ってみる。

その前にちょうど一年前。
2018年シーズンの振り返りは、『「理想」と「現実」との狭間で』と言うタイトルで書いていた。
エスナイデル監督の目指した理想のサッカーと、
チームとして目指すべき現実的に勝てるサッカー、
その折り合いをどうつけるか。

それが出来ずに過去最低の成績に終わった2018年。
2019年は、その反省を生かす年になるはずだった。


しかし、結果は伴わなかった。
エスナイデル監督は4節で早々に解任。
江尻コーチに後任を託すも、シーズン途中からチームを立て直すことは容易ではなく。
シーズン序盤にして、J1昇格と言う目標は絵空事になり、J3降格回避を現実的な目標として戦わなくてはならなくなった。
最終的に、J3降格こそ免れたものの、過去最低の成績をさらに更新。
再起は、2020年に持ち越しとなった。

チームの強化を任される高橋GMから、はっきりとした言及がない以上、
勝手な想像で語るしかないが、

エスナイデル監督を選任し、攻撃的な新しいジェフのサッカースタイルを作る。その上で勝つことを目指した彼は、それを放棄する考えは無かった。
おそらく、2019年を迎えるにあたって、エスナイデル監督続投に対する周囲からの異論が多々あった事だろう。
それでも、ジェフに欠けているのはチームの「芯」を作る事だと考え、継続し、積み上げる事を進めたのではないだろうか。

「攻撃的な新しいジェフのサッカースタイルを作る」
この考え方には、自分も当初から共感している。

攻撃への道筋の見えないサッカー、バックパスに溜息の出るサッカーでは、面白くない。
それに対して、
(あまりにイージーなミスを連発し、組織的な守備が皆無だったが)
守備の問題を抱えていたとはいえ、
攻撃的なサッカー、多くのゴールシーンは魅力的ではあった。

が、それも、
尹晶煥新監督の就任会見で、高橋GM自信が強調したように、
「勝てなければ」意味がない。

2-1、3-2、4-3、
相手よりも1点でも多く得点を奪って勝利する。
エスナイデル監督の理想を、現実と折り合わせようとしたとき、
エスナイデル監督はその術を持ち合わせていなかった。

『クラブ』として設定した、最低限の勝ち点ライン。
それを下回ってしまったのが4節。

解任時の後任の選択肢は、
果たして高橋GMが示したものだったのか、
それとも『クラブ』としての方針であったのか。。。
いずれにせよ、江尻コーチの名前しかなかった。


「良い部分は継承する」と語った江尻新監督。
それは、「攻撃的な新しいジェフのサッカースタイル」を作ろうとした高橋GMの考えを踏襲したものだったが、
前任者のサッカーに縛られた事で、江尻監督にも迷いが生じてしまった。

エスナイデル監督が陥った、理想と現実のサッカーのループ。

最初、現実的に守り勝つやり方に変更し、そこから再び攻撃サッカーへ。
理論的に問題点の潰し込みをかけ、段階的に改善を図っていたはずが、
後から振り返ると、戦い方が定まらず、メンバーも固まらない、迷走を辿ってしまっていた。

江尻監督には、江尻監督の理想とするサッカーがあったはずだが、
それを出す前に、J3降格の危機に飲み込まれ、現実と戦うことを余儀なくされてしまった。

そして、江尻監督が思うように勝ち点を積み上げられない状況が続くなか、
高橋GM、あるいは『クラブ』は、方針の大きな転換を行っていた。

「理想」の攻撃サッカー構築から、
「現実」的に勝てるサッカーへの転換。

手段が目的になっていた状況から、
目的の為の手段への回帰。

Jリーグで実績があり、厳しい練習でも知られる、
尹晶煥監督の招聘。

なぜ尹晶煥監督なのかと考えた時に、この3年間目指した理想をいったん封印し、
新監督の下で、現実を見据えて戦うと変化を選んだのだとしたら、合点はいく。ただ、高橋GMとしては、無念さもあったのではないだろうか。
エスナイデル監督のまま、サッカースタイルの確立と勝利が、昇格が出来ていれば、
彼の中に描かれていた、あるべきジェフの姿が実現できていたのだから。

以上が2019年のジェフに対する、自分の勝手な解釈だ。

『クラブ』は2020年から、尹晶煥監督の下、新たな方針でチームを作り直す。

2019年、チームとしての「芯」を貫こうとしたとき、現実問題、成績がそれを許さなかった。
チームとしてのスタイルを構築すること、
昇格を目指し、あるいは降格を回避し、一つでも上の順位を目指すこと。
どちらも大切な事だ。

スタイルを貫いて、J1優勝まで成し遂げたマリノス。
ジェフを破り昇格しながら、壁にぶつかって、現実へと回帰したグランパス。
同じ時期に、攻撃サッカーを目指しながら、それぞれ別の結果を辿った。

ジェフは、まだ迷っている。
ハイライン、ハイプレスを駆使した「攻撃的な新しいジェフのサッカースタイル」は、
エスナイデル監督/江尻監督では完成を見なかった。

が、「攻撃的な新しいジェフのサッカースタイル」を作る挑戦はまだ続いている。
尹晶煥監督の下、別のやり方で作り上げる事も出来るだろう。

新監督が成功するのかは誰もわからない。
『成功したやり方』をジェフの新しいスタイルにするとするならば、
成功するまでジェフは、監督を変え、選手を変え、あるいはGMを変え、
偶然に頼ってチーム作りをする事になってしまう。

それでは、これまでと同じだ。
何の積み上げもなく、変わる方針の犠牲に選手が、サポーターがなってしまう。
アカデミーの選手もトップに繋がりにくい。

だからこそ、「芯」は何なのかを走りながらでも形作っていかなくては。

2020年。
いかに勝つか。
そこから、走り切る姿であったり、激しいプレスであったり、
あるいはハイライン・ハイプレスに代わるような十八番の戦い方であったり。
『クラブ』に委ねるのではなく、新しいジェフらしさを、我々観る側も見出し、推していかなくては。

17位からの再挑戦。
チームの「芯」、土台を作る一年になる。
それぞれが、あるべきジェフの姿をもって、新しいシーズンに臨み、
今年こそ、成長と、上昇への手応えを掴めるシーズンにしなくてはならない。