前を向け、巻誠一郎。

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最後の最後でやってきたW杯の舞台。
我らが巻誠一郎がこの舞台で、ブラジルと戦うなんて一年前は想像出来なかった。試合前、君が代を唄う表情に、ロナウジーニョと握手を交わす姿に、センターサークルに立ってキックオフを待つ姿に、自然と涙が出て、万感の期待を込めて応援をした。


世界王者ブラジルが相手。
日本代表は、現時点で出せるものを出し切ろうと懸命にもがいていたけれども、圧倒的な技術と連携の前にボールのキープすらままならない。当然、巻がボールに触れるシーンもそう多くは無い。苦しいゲームだったが、その中でも巻は全力を尽くしてくれた。いつも通り、前線から相手を追い掛け回し、ルシオにマークされながらもボールを頭で落とし、何度もオフサイドになっても懸命に相手の隙を伺い、これまでの日本に足りなかったシュートを気持ちを込めて撃ち込んだ。


高原と交代するまでの60分間。60分間で巻のW杯は終わった。
まだ動けた。倒れるまで使ってやって欲しかったと思う。けれど、やれることはやった。


試合後、一人ピッチに倒れこんで立てない中田の姿があった。
その姿を見て、この舞台、この雰囲気、この悔しさを巻はどう自らに刻み込んだのだろうか。
惨敗に終わったドイツW杯。この屈辱から這い上がる為に、これからの戦いが大切になる。前を向け、巻誠一郎。W杯出場選手として、これから何をプレーで伝えられるか。世界を知った事でより上を目指して戦う巻の姿が、日本が再び這い上がる糧になる。