獲られても、奪い返す 第22節 vs讃岐 ○4-3

獲られても、奪い返す 第22節 vs讃岐 ○4-3

もっとスッキリと、この試合を楽しみたかったが、
残念ながら今日は、審判が目立ち過ぎるゲームになってしまった。
そう言うものも含めてサッカーだとしても、
クリーンなプレー、フェアなジャッジの下、熱いゲームを楽しみたいものだ。

勝つにはかったけれども、問題は多いゲームだった。

讃岐の1点目、3点目のファインゴールは相手を褒めるしか無いにしても、
讃岐の2点目、高木和正に容易に抜け出されてしまった守りの緩さ、
ロスタイムのPKのピンチを招いた、也真人のミス。
こんなプレーをしていては、連勝は続かないだろうし、昇格はおぼつかない。
その事は、しっかり肝に銘じて反省し、次節に生かしてもらいたいものだ。

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この日のスタメン。
近藤が、コンディション不良でベンチ外となり、代わりに大久保。
高橋壱晟に代わり、負傷の癒えた羽生がリーグ戦初先発となった。

リザーブでは、アランダがベンチを外れ、代わりに勇人。
また、古川大悟もベンチ入りした。
山本真や、指宿は、もう少しのようだ。

讃岐との試合は、僅差で終わることが多い。
実際、讃岐自体が、ここまでほとんど複数得点が出来ていない状況の中だったが、前半からゲームは目まぐるしく動いていった。

前半、その序盤は讃岐がやや前ががりに攻め込み、ジェフが受け止める展開だったが、
徐々にジェフのプレスがかかり始めると、讃岐は引き気味になって、ジェフがガードの上から殴りつけるような展開になる。讃岐の北野監督は、ジェフの強みを弱みに転換するには、引き込まなければならなかったと試合後に述べている。

耐えて、カウンターと言う狙いだったろうが、ジェフはそれを許さない。
セットプレーと、清武のロングスローと言う跳び道具で、じわりじわりと讃岐にプレッシャーをかけ続け、隙を伺っていく。

その効果は、意外と早く得点に繋がる。
13分、セットプレーからのこぼれ球を羽生がダイレクトボレーでロングシュート。
相手キーパー清水がファンブルしたところにラリベイが詰めて、先制点を奪った。
前節、前々節とゴールを決め、調子を上げて来ていたラリベイが早速結果を出し、さらにジェフが押し込む展開となる。

しかし、攻め込みながらも、あまりスペースが無いため、シュートまで効率的に持ち込めない。
クロスを上げようとしても、特に乾が警戒されているようで、なかなか良い態勢でボールが上げられない。右へ左へ、的を外れたボールが飛び交い、戻して仕掛け直すもどかしい展開に。

逆に少ないながらも讃岐がカウンターを仕掛け始めると、34分。
乾の裏のスペースを衝かれ、一度は攻撃を弾き返すも、こぼれ球を馬場に見事な、
地を這うような弾道のシュート(キャプテン翼の松山君のイーグルショットのような)を、
ニアサイドに突き刺されて、同点となってしまう。

前半は、このままスコアが動かず、1-1で終了する。

後半も、ゲームの入りは穏やかで、ジェフが押し込み、讃岐が守る展開だった。
ただ、イエローカードが多く、選手達もベンチも神経質になっているのは見て取れる。
ゲームが動かない中、ジェフはサリーナスと、高橋壱晟を投入、
一方の讃岐は高木和正と、木島徹也を投入。
昼間の熱気が残り、夏特有の蒸し暑さがフクアリを覆う中、互いに攻撃の駒を切って打開を図る。

そして、ここからが、一気にゲームは良くも悪くもヒートアップしてしまった。

まず65分、讃岐陣内からのフリーキック。
大きく蹴り出されたボールが前線の高木に届けられる。
このボール、普段の佐藤優也なら、前に出てクリアしてても良いようなボールだったが、この日はまだゴールマウスの中で構えていた。ボムヨンも、乾も、何も出来ないまま、高木は余裕を持ってキーパーの位置を見定めてゴールに流し込む。あっさりと、失点を許してしまった。

ジェフはすぐに追いつく。
68分、北爪が讃岐陣内に少し入ったところから、左足でタテに長いボールをペナルティエリア内に放り込むと、これを清武が頭で合わせて5試合連続ゴール。2-2の同点に追いついてみせる。

一気に逆転へ、と言うムードだったが、74分に事態は急変。
大久保が2枚目のイエローで退場となってしまう。
さらに、そのファウルで相手に与えたフリーキックを、木島が素晴らしい弾道で沈めてみせ、2-3と再びリードを奪われてしまう。

ビハインド、数的不利、状況は限りなく厳しいものになってしまった。
ここで、これまでのジェフなら、失点に意気消沈し、バタバタし、崩れていってしまった事だろう。
アウェイの横浜FC戦、ヴェルディ戦、そんなゲームばかりだった。

が、この日は、吹っ切れたように攻め込み続けた。
どうしても勝ちたい讃岐が、望外のリードを奪って、引いたこともあっただろうが、エスナイデル監督は攻撃態勢を整える。熊谷アンドリューを下げて岡野を投入。アンカーの居ない、4-2-3システムに切り替え、11人の時と変わらない攻勢を仕掛ける。

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失点のすぐ後の80分、PKの判定。
これをラリベイがレイナウド宜しく、ゴールネットの天井に叩き込んで、同点。
すぐさま、ボールを持ってペナルティスポットに戻り、同点では足りないと言うメッセージを送ると、フクアリのボルテージは最高潮となる。1人少なかろうが、残りが何分だろうが、関係ない。手拍子と歓声がフクアリの屋根に反響し、夕立のように降り注いでくる。

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久方ぶりに感じる、ここが劇場と呼ばれるが所以の歓声の波だ。
その歓声に後押しされるように、83分には、乾のクロスをサリーナスが折り返し、ラリベイが頭で押し込んで逆転。ハットトリックを完成させる。わずか数分の間に、状況が変わる。味方も、相手も、何が何だか分からないま
まに。

獲られても、奪い返す。
言うほど簡単じゃないが、エスナイデル監督は、「そういうサッカー」を目指している。
それを、スタンドも含めて、各々が理解して、相手を呑み込んだ結果がこの逆転劇だった。

その後、逃げ切りを図ったものの、冒頭に書いたように、也真人のあの時間帯では許されないミスもあって、佐藤優也のPKストップと言うおまけつきのエンターテイメント溢れるゲームが完成した。

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何で逆転まで持っていけたのか?
スタジアムに居ないと、なかなかそれが理解出来ないゲームの一つだった。
ジャッジも、歓声も、選手達の気持ちの昂ぶりも、監督の必死の指示も。

ジェフにとっては、得るものの大きな試合だった。
後半戦のスタートを、フクアリでの無敗を途切れさせず、三連勝として終えられたこと。
復調著しいラリベイのハットトリックという、反転攻勢に欠かせないストライカーの覚醒をみたこと。
そして、3点獲られようが、4点を奪って、勝って終わると言うメンタルの成長をみせたこと。

エスナイデル監督が言うように、課題は多々ある。
それは、監督が、指導陣が、選手達が、改善してくれればそれでいい。
必要なのは、このサッカーをサポーターが信じて後押しすることだ。
その気持ちがあれば、今日の逆転を生んだような、フクアリの空気は何度でも作れる。

シーズン始めに書いたように、今季はサポーターの覚悟が求められているシーズンだ。

失点して、ため息が響き、声援が聞こえないフクアリにするも。
まだまだこれからだ。走れ、闘え、奪い返せと伝えるフクアリにするも。

信じるも、信じないも、サポーター一人ひとりに委ねられている。
今季残り半分、今日のようなフクアリの空気であってほしいと願う。