最初の天王山。生き残りを賭けた戦いを制す。 第23節 vsアビスパ福岡 ○3-0

最初の天王山。生き残りを賭けた戦いを制す。 第23節 vsアビスパ福岡 ○3-0

2019/07/20(土)18:00
フクダ電子アリーナ
J2第23節
千葉 3(1-0,2-0)0 福岡

<得点>
11分 千葉 10船山
54分 千葉 5増嶋
59分 千葉 9クレーベ

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3試合ぶりのホーム=フクアリ。
迎えるは、福岡。
踏み止まる為には、勝たなければならない試合。
今日は、間違いなく最初の天王山だった。

ここまで5試合勝ち星の無いジェフ。
思うに任せない戦績、試合内容に、試合前の空気は決して良くなかった。
空を覆う厚い雲のように重苦しい空気。

が、試合後にスタジアムDJのガマさんが
「フクアリは今日で梅雨明けです!」
そう叫んだ、正にその通りに、ビューティフルゴール3発を固めての快勝。
本当に久しぶりの勝利に、フクアリには歓喜が訪れた。


スタメンとサブは、前節と全く同じ。
(クレーベと船山は、タテ関係に図を修正)


岐阜戦はドローで終えたとは言え、特に前半はしっかりチャンスを作れていた。
攻撃面で久しぶりに良さの出た前節を、現時点のベストと見込んだ江尻監督。
「自由にやれ」と解き放った堀米をキーマンに、このゲームも攻撃的なアプローチでゲームに入った。

対する福岡は、ジェフと同様に成績不振に伴う監督交代を経て、現在は久藤監督が指揮を執っている。スタメンには、森本と松田力。前節は町田に勝利し、上り調子。
サポも、アウェイスタンドを埋めるほど。この試合の持つ重みを物語っていた。

序盤から攻勢を仕掛けたのはジェフ。
ラインを高く設定し、福岡に圧力をかける。
前節同様、「自由」な堀米が、右サイドというよりも、中から左に流れて、為田、船山、下平と絡んで、福岡のマークを撹乱していく。


(↑試合中、堀米が極端に左にポジションを取る。)

3分には、左に流れた堀米から、クレーベにクロス。
さらに堀米のヘッドからコーナーキック。増嶋のヘッド、こぼれ球に為田のミドル。
直後にも、船山のショートコーナーを堀米がクロス、クレーベのヘッド。
下平のクロスに、船山が飛び込む、、、とチャンスを次々に作っていく。

悪くない。
前節と同様に、攻撃でリズムを作れている。


するとジェフの攻勢に苛立ったのか、少し強めに当たって「挨拶」のつもりだったのか、為田が左サイドの攻略中に激しく倒される。これで得たFKを船山がセット。
浅めの角度。「狙うかな」、睨んだ通り、逆サイドネットを狙ったボールは、直接ゴールイン。去年、ホーム側で見せた一撃と同じ軌道を描く、強烈な先制点が決まった。

そしてこれは、「福岡を早々に前につり出す」大きな意味のある1点になった。

福岡も、一方的にやられていた訳ではない。
14分には、松田力の右クロスを、ダイレクトで木戸選手が合わせる決定的な場面。
21分にも、タテ一本でピンチを迎え、松田力がポストに、木戸がバーに当てる際どいシーンを作られ、「決定機」の数は両チームそう変わらなかった。

逆にジェフも、18分にはクレーベが中央でキープしたボールを、右を一気に駆け上がって来たゲリアに通し、キーパーと1対1のシーンを作り、その直後にも、為田→船山→為田→アンドリュー→堀米→シュートと、小気味良くボールが繋がってシュートを放つシーンを作る。

ジェフはこれまで、チャンスは作りながらも、決めきれずに、得点、勝ち点を落し続けている。「次の1点」が奪えぬままに時間と共に消耗し、相手の息を吹き返させてしまう。
その意味で、「追加点」が奪えなかった前半を、手放しで喜ぶわけにはいかなかった。

迎えた後半、福岡は「1点」を奪うため、ハーフェーラインあたりまで、ラインを上げてきた。開始早々、ジェフの右サイドを狙われて、立て続けにチャンスを作られ、シュートまで持ち込まれる。

が、前半、堀米が「自由」であるがために、留守の事が多かった右に、その堀米が通常のポジションに戻ってカバーに入るようになると、その攻勢も続かなかった。
最初の攻勢を凌ぐと、再びジェフのターン。

まず51分、下平のクロスからクレーベがヘッドを放つ。
そして54分、右からの船山のFKを増嶋がヘッドでつなぎ、クレーベがヘッド。
当たりに当たっているセランテスに阻まれるも、こぼれ球を左から展開。
最後は、為田のクロスに、増嶋が中央で合わせて、待望の、待望の追加点!


これまでの苦しかった試合の分もとばかりに、寿人ばりのコーナーフラッグを掴むパフォーマンスで、歓喜の輪が広がる。

さらに攻勢は続く。
56分にも、下平のクロスに、クレーベがドンピシャで合わせるも、これもセランテス。
が、59分。アンドリューからの糸を引くようなスルーパスが、クレーベの足下へ。
セランテスと1対1になると、間を置かずに右足を振りぬき、逆サイドネットを射抜く。
さすが、元セレソンと言いたくなる、豪快な一撃で、セランテスに阻まれ続けたゴールをこじ開けてみせた。


3点のビハインドを負った福岡は、62分までに3枚の交代を終え、流れを変えようと試みるも、ゲームの流れは完全にジェフペース。

ジェフの3点目が象徴しているように、今日の福岡は悪い時のジェフのよう。
中盤でジェフがボールを持ったときのプレッシャーが甘く、余裕を持ってボールを回せる状態だった。サイドに走らせる、逆サイドに振る、あるいはタテパスを通す。
いつもだったら、考え迷っているうちに、戻さざるを得なくなってしまうところ、考える時間があった。

そして、ここからは、体力との自分達との戦い。
梅雨の、湿った、蒸し暑い空気が、選手達の足を奪う。

1枚目の交代は、堀米から小島。
この交代で、旭が右サイドへポジションを上げ、小島はボランチに入る。

前節の堀米交代と異なり、「もう1点」が欲しい場面ではなく、状況は「3点リード」。
小島を入れて守備を寄り安定させ、旭の攻撃力も活きる交代だった。

2枚目の交代は、増嶋からエベルト。
増嶋は体力が落ち、足もつるようになっていた。必要な交代だった。

そして81分、3枚目の交代はクレーベからアラン。
キープも出来るアランの投入。これも逃げ切りには妥当だった。

3点のリードを奪った事で、監督の采配にも余裕が感じられた。

残り時間、攻撃する姿勢も残しながら、上手く逃げ切りが出来ていたと思う。
84分には、船山が中央でボールを奪って、やや遠目の1対1からコースを狙ったミドルシュート。これも、セランテスにセーブされたものの、十分な牽制になっていた。

福岡は、完全に重心を前にかけることも出来ず、やや中途半端なライン設定になって、あちこちにスペースが生まれるようになっていた。その「穴」にジェフはボールを運び込んで、効果的に「時間」を使うことが出来ていた。


最後まで奮闘した鳥海をはじめ、中盤で防波堤となり続けたアンドリューら守備陣の頑張り、粘りもあり、
試合は、そのまま3-0で終了。

5試合ぶりの勝利。
そして、大きな意味のある、勝ち点6にも匹敵する勝ち点3を得る事が出来た。
福岡との勝ち点は、「7」に開いた。
負けていたならば、「1」とされるところだった。

この試合の勝利は、岐阜戦で江尻監督が掴んだ手応えが正しいものだったと証明するものだった。
スタメン、布陣、堀米の起用方法。
攻める形は出来ている、後は決めるだけだと。
前節では足りていなかった、あと一歩早い判断、意外性のあるプレーが今日はゴールに繋がった。

その一方で、相対的な要素の強い勝利だったとも思う。
ここまで、上手く噛み合う試合も、そう多くはない。
ジェフが主導権を持ち、福岡が前に出ざるを得ない状況を作ったのもあるけれども、福岡側の守備が未整備だったようにも思う。前節、町田に完封勝利した事を考えれば、まだ久藤監督の戦い方が浸透せず波があるのだろう。状況は、ジェフと似通っている。油断は出来ない。

快勝。
確かにそうだろう。

が、点差ほどの差はあったのだろうか。
「もし前半、バーや、ポストに助けられていなかったら。」
これを考えると、楽観は出来なくなる。セランテスに弾かれ続け、岐阜戦のように、ジェフの方に焦りが生じて、難しい試合展開になっていたかも知れない。

3-0、けれど紙一重のゲームだったと記憶したい。

他にも、気にかかる点はあある。
相変わらず、旭のプレー判断がボランチだとやや遅く、相手チームの「ボール狩り」のターゲットにされてしまっていること。サイドに上がった小島投入後の方が、旭の良さが活きているようだった。

また、セルフジャッジ、集中の途切れも見られた。
28分。船山と為田の2人のパスの場面で、思いがけずかかとにボールが当たって相手ボールになってしまった。この時、2人はボールを奪いに走るでもなく、パス交換が失敗した事を、顔を見合わせて「おいおい!」と言い合っているかのようだった。
相手は、ゴールに向けて走り出しているというのに。

全体としてナイスゲームだっただけに、「隙」の部分が気にかかった。
次節の横浜は4連勝中。
調子の良い、まとまったチームは、そんな「隙」を逃してはくれまい。
今日のゲームを選手達はきっと見返すだろう。
そのとき、修正点として次に生かして欲しいと思う。


それにしても、3-0は望外の勝利だった。
久しぶりに笑顔で帰れた試合になった。

「自分が行くと勝たないんだよなぁ」
「自分が行かない試合に限って勝つんだよなあ」
みんな、誰しも、そんなもん。
なら、結局、とことん付き合うしかない。


良い時も悪い時もある。
けれど、目の前のチームを信じて応援せねば、こう言う瞬間は味わえない。
スタジアムに行けば、フクアリに行けば、何かが起こる。
みんなで掴み取った勝利だった。

入場者数8541人。
来週の横浜戦は、もっと多くのサポで、この勝利を一緒に喜び合いたいものだ。
次も、勝たねばならない。
ホーム、フクアリなのだから。