生き残る為に。狂え。覚悟を固めろ。 第27節 vs愛媛FC ●2-3

生き残る為に。狂え。覚悟を固めろ。 第27節 vs愛媛FC ●2-3

2019/08/10(土)18:00
フクダ電子アリーナ
J2第27節
千葉 2(2-0,0-3)3 愛媛

<得点>
33分 千葉 10船山(PK)
36分 千葉 9クレーべ
57分 愛媛 7近藤(PK)
59分 愛媛 39下川
90+4分 愛媛 15丹羽

ジェフ公式 試合結果
Jリーグ公式試合結果

痛すぎる結果。
1点ではなく、2点を先行しながら、後半ロスタイムに逆転負け。
それも、順位の近い愛媛に対して、ホーム、フクアリで。

順位は17位まで下がった。
鹿児島、愛媛と、降格の危機を抜け出す為に「勝たなくてはいけない」試合に連敗したと言う重い事実。

今日、この試合で、リーグ戦が終わるのならば、落胆に打ちひしがれていてもいい。
だが現実は、ここから15試合、さらに厳しい戦いが続く。

いま、ジェフに必要なのは、覚悟だ。
これが今現在の実力だと受け止め、
そして、顔を上げて前を向き、江尻監督、選手達を支えて、今季を戦い抜くこと。

2008年、J1に生き残ったあの年。
目の前の試合に勝つために、各々がやれる事をやった。
あの空気を、また作らなくてはならない。


琉球、鹿児島の大アウェイ連戦は1勝1敗。
フクアリに戻ってのゲームは、
お盆休みと言う事もあって、11,229人もの観客を集めて行われた。


スタメンで注目は、右サイドバック米倉。
5年半ぶりのジェフでの出場に、ミッキーマウスのチャントが響き渡った。
そして、浩平も久しぶりのスタメン復帰。
右の攻撃的MFに入った。

対する愛媛は連勝中。スタメンには、もちろん岡本。
円熟味を増し、ますますプレーが冴えわたる。
「笑顔の守護神」も、試合中だけは「鬼神」となる。

かつてのジェフを支えた選手達が、敵味方に分かれ、ピッチに散っていった。


(限定の「工場デザインユニ」着用の選手たち)

試合が始まると、最初にペースを掴んだのは愛媛。
立て続けにコーナーキックを獲得し、ジェフの出鼻を挫く。
ジェフのディフェンスラインの裏を狙う意図がハッキリとしている。

5分、愛媛の攻撃。
39下川選手のパスをジェフの選手達が触れず、スルーする形になってしまうと、それを受けた7近藤選手が、すかさずシュート。決定的だったものの、これは精度を欠いて事無きを得る。
11分にも、愛媛の右クロスに飛び出すことが出来ずに決定機をつくられかけてしまう。

ジェフは、堀米が先発しているときのように、左に偏った攻撃とはならない。
浩平は、内側に絞ってくるものの、位置が低いので、トレスボランチのよう。
その左上に、1人で為田が張っているような布陣だ。

そして、右には米倉が構え、何度と無くタテへのスプリントを狙っていた。
江尻監督の狙いは、左に偏った攻撃を、攻撃的な米倉の投入で、バランスをとっていくこと。
かつての米倉とケンペスのような関係を、クレーベとの間に求めているのだろう。

米倉は、確かに攻撃で力を発揮した。
が、守備面では?
手元のメモには「右がスカスカ」の一言が書き残されている。

ヨネが上がる。
スタンドが沸き立つ。
が、まだコンビネーションは整っていない。
奪われたボールは、ヨネの上がったスペースに放り込まれ、一瞬にしてピンチが訪れる。
カバーリングに入る選手が居ない、ルールが無い。
いいように、その「穴」を使われてしまう。

乾をWB/SBに置いたときにも同じように苦労したが、それが、右で繰り返されていた。
けれど、まだ前半は良かった。
ヨネに攻め上げるだけのスタミナが残っていて、攻撃≧守備くらいの収支になっていたから。
問題があるまま、右は放置されていた。


愛媛ペースで試合が進む中、唐突にジェフにPKが与えられる。
31分。為田の左クロスに合わせようとしたクレーベを、愛媛の選手が身体ごと空中で潰してしまう。
これで得たPKを船山が、右のポストを叩きながらねじこんで先制。

さらに、その直後には、右サイドで米倉、小島とボールを繋ぎ、小島がアーリークロス。
これにクレーベが頭で合わせ、岡本が必死に閉じようとした膝を叩いてゴールに流し込まれる。
2点目。

これまで奪いたくても、奪えなかった2点目が決まり、これは大きいと正直思った。
ホーム=フクアリで2点差。
危険なスコアとは言うけれども、これで選手も落ち着くだろう。
2点差を生かして、愛媛をいなす事が出来れば、勝機が見える。
そう思っていた。


しかし、まさか、後半にあんな展開が待っていようとは。
後半、愛媛は山瀬を投入。
開始直後、右、左、中と愛媛が繋いでシュートまで持ち込み、
一方のジェフも、船山のポストからクレーベのシュートと言う惜しいシーンをつくる。

そして、試合の分かれ目となるラッシュをジェフが仕掛ける。
48分、まずヨネが右サイドから抜け出してシュートを放つ。
弾かれるも、こぼれ球を浩平が受けてシュート。
ブロックされ、船山がそれを体勢を立て直しながら、反転してシュート。
これも防がれ、最後はクレーベがシュートを放つ。

4連弾のシュートが、決まらず、弾かれ、ジェフは3-0にするチャンスを逸してしまった。

そのすぐ後にも、船山のシュート。
53分にはヨネのクロスにクレーベがヘディングシュート。
いずれも決められない。


すると、54分。
今度は新井が、愛媛の7近藤を倒してしまい、PKを与えてしまうと、
これを近藤が自ら叩き込んで2-1。

さらに59分。
愛媛の左からの攻撃にプレッシャーをかけられないまま進入を許すと、
39下川に強烈なミドルシュートを打ち込まれて、同点に持ち込まれてしまう。

後半、流れを掴めず。
流れを握られて、試合は一気に愛媛ペースへと傾く。

ジェフのスタミナが落ちているのは明らか。
そして、ジェフの右サイド米倉は、足が止まっているのに、高い位置を取ろうとし続ける。
こうなると、右サイドは愛媛に「使ってください」と、勝手口を開けたままになっているような状態になってしまった。

ここで監督は、早急に動くべきだったが、交代は70分になってようやく1枚目。
為田から、茶島へのチェンジ。
さらに75分には、浩平から旭へチェンジ。
この交代で、若干持ち直すも、右の穴はあけたまま。
残り時間は15分。試合はオープンな展開に。

84分、愛媛の決定機。
ヨネの上がったスペースを使われ、左クロス。ダイレクトで合わせられるも、GK鈴木の正面。
逆に、85分には、茶島のパスを受けてフィニッシュを船山が放つも、ゴールの上へ。

時間が少ない。
が、カードは残っている。
前がかりになった愛媛の背後を衝ける、強烈なカードがジェフには残っている。
が、そのカードがいつまで経っても切られない。


寿人。
寿人のコールがされたのは、アディショナルタイムに入る寸前だった。
外で待たされ、ようやく投入。
しかし、時間は残り4分も残されていなかった。
この時間で、一体、何が出来るというんだ。

ドローが見えつつあった、90+3分。
愛媛の最後の攻撃。
ヨネのサイド、左からのクロスが、15丹羽選手に合う。
残酷な結末だった。

歓喜に沸く、愛媛の選手達。
ガッツポーズの岡本のバックグラウンドで、青黒いシャツのジェフの選手達がピッチに崩れ、
そして、スタンドは、滝が逆流するように、観客が帰途につく。

試合再開。
最後の意地で、ヨネから、クレーベがヘッドを放つものの。
岡本にしっかりと押されられて、タイムアップ。
冒頭、書いたように、ジェフにとっては「勝たなくてはいけない」ゲームを落してしまった。


ゴール裏まで選手が戻って来たとき、スタンドはすでに空席が目立ち、
ブーイングも起こってはいたが、それよりも、無言で選手達の顔を見つめている人が多かった。
最後まで、小島が深く頭を下げていたのが印象的だった。
サポーターも苦しいが、選手達の苦しさも痛いほど分かる。
勝ちたい。勝ちたかった。

勝てるゲームを、コントロールできなかった。
後半、足が止まる。
後半、同じような形でクロスから点を奪われてしまう。
問題が繰り返されている。

やはり、2年半の間に、身体に染み付いた「特殊なやり方」の影響は大きい。
江尻監督は、前監督の遺産から、自らの嗜好に合う攻撃的なジェフを再構築しようとしているが、それは同時に、潰したはずの守備の穴を、またもう一度掘り返すような状況になってしまっている。

ヨネは、思った以上に良くやっていたと思う。
前への推進力は健在だったし、後半頭のシュートシーンのように自分で撃てる力がある。
が、スタミナは、年齢の分落ち込んだし、守備力は元々余り期待できない。
諸刃の刃。

今日は欠場だったが、堀米システムで、強烈に左に偏ったシステムを採ったときといい、ジェフは「極端なやり方」でないと、感じる事が出来ない、麻薬的なやり方しか、観客も、指導陣も受け容れなくなってしまっているんだろうか。普段、やりきれ、思い切りやれ、思うようにやれと、ここでも書いているけれど。

普通の攻守のバランスじゃ、「つまらない」と揶揄されてしまう土壌が千葉にはある。
スタミナがあろうが、無かろうが、守備のルールがあろうが、無かろうが。
攻撃的でエンターテイメントなサッカーこそが正義。

勝てないならば、せめて面白いサッカーを。

そんな空気がジェフに、あるいは応援する自分の心にもあるような感じがする。
それは、これから戦う、「残留争い」と言う、リアリズムそのものの戦いの中では、強烈に危険な思想ではあるのだけれども。

残り15試合。
心に決めるのは、どんな覚悟だ?

行き着く先は、極楽浄土の彼方か。
それとも泥臭い現実か。

「何しようぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂え」