西京極最終戦 この一戦の重みの差が勝敗を分ける 第41節 vs京都サンガF.C. ●0-1

西京極最終戦 この一戦の重みの差が勝敗を分ける 第41節 vs京都サンガF.C. ●0-1

2019/11/16(土)14:00
たけびしスタジアム京都
J2第41節
京都 1(0-0,1-0)0 千葉

<得点>
84分 京都 14仙頭

ジェフ公式
Jリーグ公式

 

この試合で失うものがあるか否か、その差が出た試合ではなかったろうか。
京都は、まだプレーオフ進出の可能性を残している。
その可能性を最終戦へと繋ぐには、この試合に勝つことが最低限の条件だった。

対するジェフは、前節で来季のJ2残留が固まり、江尻監督の退任も発表された。
言ってみれば、この試合は消化試合にあたる。
いくら「勇人の引退」があると言っても、試合に対する集中力の差は大きかったと言わざるを得ない。

快晴の西京極=たけびしスタジアム京都。
これまで幾度となく戦って来たこのスタジアムも、サンガのホームとして用いられるのは、リーグ戦では今日が最後になる。来季からは、亀岡駅前に建設が進んでいる21,600人収容の球技専用「京都スタジアム」に本拠地を移し、新たな歴史を刻むことになる。
その新たな歴史をJ1で迎えたい。それは自然な願いだろう。


試合前からサンガサポーターの士気は高かった。
横断幕、ビッグフラッグ、一塊になっての声出し。
この試合で終わりにはならない、その想いがひしと伝わって来た。


スタメン。
ジェフはアンドリューが累積警告で出場停止。
代わって出場したのは負傷が癒えた小島だった。
そして、前節負傷退場してしまったアランの代わり、堀米がスタメンを飾った。
他の先発メンバーは変わらず、サブには、茶島、見木が名を連ねた。


浩平がボランチに下がって、船山がクレーベと縦の関係になるシステムは、徐々に機能してきている。
中央の守備の絶対的な強度は欠けるものの、浩平が幅広く動いてスペースを潰し、配給することでリズムが生まれている。
そして、ボールを奪うとサイドの為田、船山、堀米の三人が縦にドリブルを仕掛け、ハーフカウンターの形をつくる。

特に堀米が先発したことで、強引に前に運ぶシーンが増えた。
そして、船山はクレーベとのコンビネーションがいい。
彼ら2人の関係性で、シュートまで持ち込むようなシーンを作ることが出来る。

11分には、その典型的なパターンで、小島のボール奪取から、クレーベ→船山→クレーベと繋いでシュートまで至るも、GK清水のセーブに遭う。さらに14分には、左の為田の突破から、折り返しに小島が合わせるも、これも清水がセーブ。さらに、その攻防の流れの中から、堀米→裏に抜け出した小島がもう一度合わせるも、これも清水がブロック。
序盤、ジェフはいくつかのチャンスを作るものの、GK清水を中心とした京都の粘り強い守備を崩せず、得点を奪えない。

一方、京都はチャンスの数自体はジェフよりも少なかったと思う。
が、7分の庄司→金久保の縦の崩しから、最後は一美に繋いだシーンや、32分の黒木の強烈なミドルシュートなど、決定的なシーンでは劣っていなかった。ジェフがほうほうの体でカバーしていたり、相手が外してくれたりで、点にはならなかった。


後半に入ってもチャンスを多く作り出していたのはジェフだった。
49分には船山がカウンターからドリブルで一気に持ち上がるも、ペナルティエリア手前でファウルで止められる。
これで得たFKを堀米が蹴るも、合わせることが出来ずにファウルを取られてしまう。

51分にも、小島→堀米→船山と繋いでシュートに至るも仕留められない。
ここまで、チャンスのシーンに何度も「小島」の名前が出てくる通り、10試合ぶりのスタメンの小島は、攻守で効いていた。

その後、ジェフは左の為田から崩しにかかるが、どうも今日は歯切れが悪い。
ボールを受けても、こね回して相手に食いつかれてしまい、クロスを上げられない。戻す。もしくは引っかかる。
津田沼止まりの各駅停車のようなもどかしさ。
良い時の為田なら、迷いなく対面の選手に仕掛けるのに、突き抜けられない。

クレーベが、もっとシンプルに俺の頭に合わせてくれと言うようなジェスチャー。
なかなかクロスでは絶好球が来ずに、ストレスを感じているようだった。

ジェフの攻勢を受け止めつつ、何としても勝ち点3が必要な京都は、選手を代え、プレッシャーを強め、流れを変えにかかる。
まず、60分にエスクデロ、79分にはレナン・モッタ。


ジェフの一枚目のカードは、57分に堀米から茶島。
ちょっともったいなかった。
たしかに、前半に比べれば顔を出すシーンは減っていたかもしれないが、まだやれたように思う。
為田が吹っ切れていないプレーだったので、堀米を左に回して残す選択肢は無かっただろうか。
いつも堀米はこれぐらいの時間に代えられるけれども、余力はあるように見受けられるのだが。。。


得点が入らぬまま、時間が過ぎ、70分には小島に代えて勇人が投入される。
小島もようやく戦列に復帰したばかり。
前半に少し削られてもいたので、その影響もあるのだろうが、攻守に効いていただけに京都からすれば、堀米に続き、嫌な選手が下がってくれた、と受け取ったのではないだろうか。

80分を過ぎ、得点が決まれば、それが決勝点になるような時間帯。
ジェフは左サイド、茶島、下平が崩しにかかるが、下平のパスは呼吸が合わず、相手キーパーへ。
いつも堅実な下平にしては、というプレー。

その直後、京都のカウンター。それを防いで下平が前線にフィードしようとしたボールを仙頭がゴール前でかっさらってシュートを放つ。完全にやられたと思ったが、ポストを叩き、何とか事なきを得る。
が、ここが勝負所と京都は、立て続けに下平のサイドを攻略にかかる。
84分、福岡選手が2人を振り切ってグラウンダーのクロス。一人スルーして、その後ろから今度こそ仙頭。
京都の執念がとうとうゴールへと繋がった。


ジェフは、浩平に代えて見木を投入するも、いかんせん時間が無い。
イエロー覚悟でも、勝ち点3。逃げ切りに入った京都。
その集中を最後まで崩せず、そのままタイムアップとなった。
歓喜に沸く京都ゴール裏、京都は生き残った。
ビッグフラッグが再び展開され、歌声が響く。

「最後の精度」

チャンスを作りながらも決めきれず、試合後、江尻監督は同じ言葉を繰り返した。
今季は、最後までその最後の精度が煮詰められなかった。

エスナイデル前監督が掲げた「理想」。
圧倒的なボール支配率と、ハイラインハイプレスの超攻撃的サッカー。
「理想」と「現実」の狭間で破綻したそれを引き継ぎ、その先を目指した江尻監督もまた、攻撃面という良さを残しつつ、守備面という課題を解決する事は叶わず、「どっちつかず」のまま、今季は迷いの中で終了する事になってしまった。

あと一試合を残しているが、昨年よりも得点は26点減り、失点も9点減。
良さは薄れ、課題は克服しきれなかった。
チームとして、「エスナイデル監督でダメならば、江尻監督に切り替えればいい」という、中途半端な覚悟の無さが、この結果を招いたと言えるだろう。江尻監督は、エスナイデル監督では無いし、ミラー監督でも、オシム監督でもない。江尻監督が目指すサッカーとは、どんなサッカーだったのか、それをシーズン前の編成、キャンプからしっかり準備をして、任せることが出来なかったのが、残念でならない。

チームとしての芯の無さが、16位、降格圏まで勝ち点6、2ゲーム差という結果だ。
これが現実だと受け止めて来季に臨まなくては。

京都はホーム最終戦。
夕暮れの西京極、勇人が京都側に挨拶を終えて、ジェフ側まで回って来た。
ジェフ側に二度挨拶する形になって照れ笑いの勇人だったが、最終戦こそは勝って終わりたいものだ。

が、その最終戦は、残留がかかる栃木SC。
引退試合の花試合の空気では、恐らく負けるだろう。
最終戦、このメンバーで戦う最後の試合、チームとして、この試合にどう臨むのか。
来季への戦いは既に始まっている。