両軍、力を出し切ったドロー 2021 J2第17節 vs山形 △1-1

両軍、力を出し切ったドロー 2021 J2第17節 vs山形 △1-1

2021/06/06(日)14:00
フクダ電子アリーナ
J2第17節
千葉 1(0-0,1-1)1 山形

<得点>
59分 千葉 10船山(39見木のサイドチェンジを、33安田が右クロス。14小島、49サウダーニャの裏に、10船山がフリーで飛び込んで頭でゴール。)
79分 山形 41中原(素早いFKのリスタートから、右の41中原に繋ぎ、22小田を対面に置いたまま、カットインして左足ミドル。)

千葉公式
山形公式
Jリーグ公式

久しぶりに「面白い試合」を観た。

ホームゲームだから、勝ちたかったのは当然だったが、
今の時点での両チームの力が拮抗した上でのドローだったのではないだろうか。
試合中のプレーはもちろん、試合後の選手達から感じた悔しさも、今後に繋がるものだった。


雨模様のフクアリ。
メンバーは前節と全く変わらず。
サブでは、壱晟→小林、大槻→ソロモンの変更があった。

この日の相手は山形。
石丸監督でスタートしたものの、思うような成績を得られず、監督交代。マリノスでポステコグルー監督の下でコーチを務め、昨年は清水で監督として指揮を執ったクラモフスキー氏が就任している。

果たして、試合は正に生まれ変わった山形の攻勢に苦しむ展開となった。
正直、なんでこんなに短期間で、ここまで戦術が浸透しているのか訝しんだほどだった。
山形は、GKから繋ぐサッカーを徹底し、それをワンタッチ、ツータッチでシンプルに前線へと運んでくる。この日の水を含んだピッチも奏功したのだろうか。ボールが良く回る。選手達の距離感が非常に良く、山形の選手の方が人数が多いかのように、ルーズボールが次々と山形側へとこぼれていく。いや、システマティックに回収されてしまう。

特に、中盤の藤田息吹が厄介極まりなく、あちこちに顔を出してはボールを循環させていく。その藤田を中心に、ボールを受ける選手達も、受けたボールの選択肢はパスだけでなく、自ら仕掛けて前に運ぶ意識も同時に持っている。
だから、パスコースを塞ぐ動きだけでは侵攻を止める事が出来ない。

加えて、プレーが速い。セットプレーも、スローインも、リスタートがとにかく早い。
守備陣形が整う前に、と言う意思統一が明々白々だ。

山形への賛辞が並んでしまうが、本当によくもこの短期間で。ここまで。

実際、かなり危ないシーンも作られた。
10分頃に、カウンターからパスを何本もダイレクトで繋がれ、最後はフリーの林に撃たれたシーンは決定的だった。決められていれば、本当に苦しい展開になっただろう。

が、この苦しかった前半にはスコアは動かなかった。

これまでのジェフであれば、深いラインでブロックを作り、ガードを固めて、ひたすら耐える展開だったろう。弾き返すのが精一杯で、いずれやられると言うギリギリの展開。

しかし、今日はそうではなかった。
確かに決定機も作られたが、這う這うの体になる事はなく、相手の攻撃をしっかり受け止めて、弾き返していた。そして、数は多くは無くとも、サイドアタックとカウンターを駆使して、相手ゴールに迫るシーンも作っていた。

サウダーニャが徹底マークに遭い、なかなか前を向いて受けられないものの、その分、他の選手がフリーになれる。それが、後半への布石になっていた。

迎えた後半、ジェフは田口から小林に交代。
彼をアンカーに、その前に小島と見木が入る。
田口がまだ90分難しいのもあっただろうが、それ以上にこの交代で中盤の劣勢を一気にひっくり返しにかかった。田口、小島は二人とも、守備よりも攻撃が持ち味の選手。対して、小林は戦って奪う事が出来る選手。前半、やりたい放題だった藤田のプレーエリア、小林が食らいつく。それでも藤田は脅威であり続けたものの、山形のハブが砂を噛んだように動きを制限されるようになる。

右から右から。
クロスを入れて崩しに来る山形の攻撃を一つ一ついなし、ジェフも右の安田が何度かクロスを上げるシーンを作る。そうして迎えた59分。見木の目の覚めるようなサイドチェンジが、ピッチを斜めに切り裂くと、それを受けた安田が狙いを定めたクロスを送り込む。

走り込んだ小島、そしてサウダーニャにマークが集中するその裏で、フリーで待ち受けた船山が頭で突き刺した。
それぞれの持ち味が組み合わさって、まさにチームで1点をもぎ取った。
素晴らしいゴールだった。

その後も両チームの持ち味が発揮された試合展開が続く。
先制を許しても、やり方を変えることなく、選手を入れ替えて運動量も維持しながら、攻撃の手数を緩める事の無い山形。
山形の攻勢を受け止めて、追加点を狙うジェフ。
両翼、中央、ピッチのあちこちでコンタクトプレーが相次ぐ。

そして、次の1点は、山形だった。
79分、徹底した素早いリスタートから、右の中原へ。
カットインしながらペナルティエリアの僅かに外から左足で放ったミドルが、美しい軌道でゴールへ。対面には小田が居たが、これは相手を褒めるしか無いだろう。

残り時間は、アディショナルタイムも入れて15分と言うタイミング。
小田が雪辱とばかりに突破を仕掛け、勝ち越し点を奪うために鈴木大輔も自らボールを持って前に上がるシーンが増える。
ジェフも交代で選手を入れ替え、ピッチには、福満、岩崎、さらにソロモン、新井一が送り込まれる。89分には、その福満の左クロスに、岩崎がボレーで合わせるも、カバーに遭って弾き出されてしまう。

試合終盤、AT、ジェフがボールを持つたび、大きな手拍子がフクアリの屋根に響く。
この試合勝って終わるぞと、スタンドも一つになって劇場の空気を作っていた。

しかし。
最後まで攻め合ったが、スコアは動かず。
1-1のまま。タイムアップとなった。

倒れ込むジェフの選手達。
小田は涙していたという。

選手達を迎えたスタンドも、一様に拍手だった。
結果は満足出来るものでは無かったけれども、これまでのドローとは違う、前向きな内容を皆が感じ取ったからだろう。

山形も、ジェフも、それぞれが今作ろうとしているサッカーをぶつけ、その結果がドローだった。双方の得点も、ミスや偶然から生まれたものではなく、それぞれの狙いの延長線上にあるゴールだった。

試合を通じての攻守の切り替え、局地戦でのぶつかり合いも見応えがあった。
最初に書いた通り、面白いと言えるゲームだった。

ジェフは、ようやく土台が出来つつあるように思う。
昨年の4-4-2でブロックを作る守備のやり方を基礎に、
そこから発展した、3-5-2、5-3-2を時間帯によって使い分け、
ダブルボランチや、アンカーと言うバリエーションも試合の中で組み換え、状況に対応している。

一つの型に嵌めることなく、個々の選手の持ち味が発揮され易くなっているように見える。

その結果、徐々にではあるものの、攻守の切り替えが出来るようになり、攻撃が仕掛けられるようになっている。

一試合、一試合の変化は、小さい。
けれど、少しずつ前に進んでいる実感はある。
結果を積み重ね、自信を得て、大きく飛躍して欲しい。
その予兆は皆が感じていると思う。