集中保てず、6ポイントマッチに敗れる 2024 J2第1節・モンテディオ山形戦

集中保てず、6ポイントマッチに敗れる 2024 J2第1節・モンテディオ山形戦

2024/2/25(日)13:00
フクダ電子アリーナ
J2第1節
千葉 2(1-0,1-3)3 山形

<得点>
11分 千葉 13鈴木(CK4田口→ヘッド)
54分 山形 36高橋
60分 山形 36高橋
90+2分 千葉 14坂本
90+5分 千葉 16横山(14椿の左グラウンダーのクロスに合わせる)

千葉公式
山形公式
Jリーグ公式

昨季5位の山形と、6位のジェフ。
共にプレーオフで敗退した両チームの対戦は、さながら実現しなかったプレーオフ決勝戦のよう。昨年はダブルを食らい、近年も全く勝てていない山形との対戦は、緊張感を持って開幕を迎えるにはこれ以上ない相手だった。

チケット発売と同時に、アウェイ席を埋めてきた山形サポからは、今年に賭ける強い覚悟を感じる。対するジェフも、優勝を目標に掲げ、自らのサッカーに磨きをかけてきた。

自分たちのサッカーをやりきるだけと語る小林監督に対し、
山形の渡邉監督がぶつけて来たのは、自らのサッカーの強みを活かしつつ、ジェフの良さをも潰す対抗策。

試合は、開幕前に高まったジェフサポの期待に冷や水を浴びせる展開となった。

スタメンは、ちばぎんカップから2名変更。
CBには主将の鈴木大輔、左MFにはドゥドゥ。
藤田、横山の新加入2名は、引き続き先発を確保した。

キックオフと同時に双方がプレスを掛け合い主導権を握りにかかる激しい展開。
縦に速く、サイドにボールを展開し、やや山形が押し気味に進めるも、先手を取ったのはジェフ。前半11分、1本目のCK。田口のボールに鈴木大輔が頭で合わせ、ネットを揺らす。

しかし、振り返ると、この早い時間の先制点が試合を難しくしたようにも思う。
リードを許し、前に出る必要があったのは山形だが、安易に前からボールを奪いに来ない。
山形が前から来れば、カウンターと言う腹だったろうが、そうはして来ないので、無理をせずに出方を窺う。

この状況こそが、既に山形ペース、渡邉監督の術中だった。
GKも含め、じっくりとボールを回す山形。
最後尾での繋ぎは、こちらのプレスにも動じる事が無く、ミスを起こさない。
焦れたジェフがボールホルダーに圧を強めてバランスを崩せば(前線と後方の間が空けば)、そこから一気に縦にボールをサイドへ送って攻撃を仕掛ける。

ただ苦し紛れの長いボールなら、これを奪って反撃に移る事も出来る。
ところが、山形は狙いを持ってこの状況を作っていた。
こちらを引き付けて、サイドの裏を狙って送られるボール。日高に当てられていたのは、イサカ・ゼイン。高さ、強さ、速さを持つ彼は、しっかりとボールを収めて奪われない。
起点を作られ、前に運ばれ、なかなか前に出る事が出来ない。
膠着させられる。

試合後、どこかで前に出れば良かったと選手たちはコメントしていたが、山形は失点にも動揺せず、恐らくは当初から狙いとした対策を徹底することで、心理戦で優位に立っていたように思う。

散発的な攻撃に抑えられ、前半は1-0で終了する。
リードしているのだから、スコアは上々だったものの歯切れは悪い。

後半、山形はこの試合で2得点1アシストを記録することになる高橋を前線に投入。
ジェフの交代は無し。前半のようなじりじりとした展開が後半も続く。

勝負の分かれ目は、ミスをモノに出来たかどうかだった。
山形が一度だけビルドアップでミスを犯し、小森がシュート体制に入ろうかとしたシーンがあったが、これを素早い戻りで山形はカバーし、追加点を許さない。

すると、そのすぐ後に得たCKのこぼれ球、高橋選手をフリーにしてしまい、狙いを澄ましたボールを流し込まれてしまう。大挙して詰めかけた山形サポーターの前でのゴール。
少なからず、悪い流れを意識してしまったのかもしれない。

さらに畳みかけられ、今度は鈴木大輔がボールをセーフティにクリアすれば良いところを、「繋ぐ」事に拘り過ぎてしまったのか、2人マークのついたドゥドゥに預けようとして奪われてショートカウンター。日高の左を破られて、クロスを高橋に頭で合わされて逆転を許す。

前に出ざるを得なくなって攻勢を仕掛けるも、山形の落ち着きは変わらない。
ゴール前、何十センチかまでは攻め込むものの、そこでゴールを許さない集中力が彼らにはあった。

封じられてしまっていたドゥドゥを69分に椿。
80分には、田中→米倉、風間→エドゥアルドを投入して反撃するも、流れを変えるにしては交代が遅かった。特にエドゥアルドのミドルが際立って脅威を与えていた事もあり、もう少し早めに動いても。また、5枠を使い切るべきだったのではとの思いは残る。

AT、山形が追加点。
大きくジェフ陣内に蹴り出されたボールに、藤田が出る事も、田口が寄せ切る事も出来ずにボールを持たれると、折り返され、つり出された藤田の上を狙われて決定的なゴールを許す。

スタジアムの空気が淀み、席を立つ者が出始める中、椿のクロスに横山が合わせて意地を見せる。ボールをセンターサークルに戻し、次の一点を奪おうと構える。しかし、時間が無い。じきにタイムアップのホイッスルが鳴り、横山は天を仰いで倒れ込んでいた。
試合後には涙を見せていたという。

その横山の姿を見るまでもなく、フクアリで6ポイントマッチに敗れたダメージは大きい。

小林監督は試合後、『本来やりたかった事がほとんど出来なかった』『「より安全に」と言うプレーが多く見られた』とコメント。悔しさを滲ませていた。

試合全体を通して、山形にしっかりと対策をされてしまい、心理戦で優位に立たれ、こちらの持ち味は削がれ、逆に山形の良さがソリッドに表現された試合だった。

プレーの正確性、局地戦でのフィジカルの強さ、ボールを奪った後の意思統一。

加えて、勝負を分けたのはミスに対する対処だった。
ミスの回数そのものが少なく、ミスをしてもそれをカバーする集中力を見せた山形に対し、同点弾に気落ちし(これはスタンドも)、直後のミスから失点に繋げられてしまったジェフ。

これから先、山形を追走するには、ジェフはもっと変わる必要がある。
昨年小林監督が柄では無い自分を変えて、周囲にも届く形でモチベーターとして振る舞うようになっように、選手や応援するサポもまた、失点した時に、劣勢となった時に、下を向くのではなく、より熱く冷静に振る舞えるようになること。それをもっと、周囲に伝わるように表現し合うこと。

少なくとも、同点、逆転、ダメ押し弾を食らった後のフクアリは、劇場とはほど遠い、「またか」という諦念に包まれていた。優勝を狙う以上、変わらなくてはならない。

ただその一方で、昨年よりも良かった点も多々あった。
3失点したとはいえ、GK藤田は最後尾からゲームを組み立てる司令塔として早くも機能していたし、MF横山は水を運ぶ役割だけでなく、プレーでも立ち居振る舞いでも、ゴールと言う結果でもチームを牽引した。途中出場のエドゥアルドも、短い時間ながら劣勢を覆すゴールに直結するプレーで大きな可能性を見せた。

新戦力は、昨年足りなかったものを補う以上の力を発揮しつつある。

開幕戦で物足りなかった前に出る意識を強く持って、次節・藤枝戦でまず一勝を目指したい。