PASIONを引き継いで 第14節 vs岐阜 ○5-1

PASIONを引き継いで 第14節 vs岐阜 ○5-1

試合前から、ジェフサポは何だかざわついていた。

一つは、『乾先発』 の情報。
事前の報道だけでなく、スタメンが発表されても、彼が何処で使われるのかは意見が割れていた。
3バックの左なのか、それとも今日は4バックなのか。

そして、ふいに飛び込んで来た、
どうやらエスナイデル前監督が観戦に訪れるらしいと言う報せ。
解任された後に、外国籍の監督がこんなに早く古巣を訪れるなんて、聞いたことがない 。

そんなざわついた空気のまま、キックオフが近くなっていた。
ジェフは、GWの上位三連戦(大宮、甲府、山形)を 、 1勝1敗1分の五分で終了。
ただ、先週の山形戦は、力の差を見せつけられて、1-3で逆転敗けを喫している。

得点力不足が深刻で、スタミナ不足も顕著。
時間の経過と共に、スタミナと攻め手を失い、苦しい展開を強いられている。

そんなチームに、試合前、江尻監督は気持ちの面の大切さを強調していた。
出来るのに、やっていないのは何故なのかと選手達に檄を飛ばした。

順位が近いチームとのホームゲーム 。
スタンドもその意味の重さを感じていた。


選手達は、大怪我を負った田坂の6番が入ったシャツを着て入場。
増嶋の300試合出場セレモニーを挟んで、ピッチへ散った。

そして、キックオフの笛が鳴ると、
前節までとは見違える攻撃的なジェフが姿を現した。

システムは、3バックでスタート。
公式twitterでは、スタメン4バックを4バックにして配信したが、撹乱だった。

守りから入るこれまでの試合とは、明らかに違う。とにかく、縦に速い。

ボランチからだけでなく、センターバックからも縦パスが、次々と前線に送り込まれる。
クレーベがタメを作り、為田、茶島、堀米、船山が、DFラインの裏へと抜け出していく。
シュート、クロス、コーナーキック。
次々とチャンスが作り出される。
これまでなら、試合を通じて数えるほどのチャンスしか無かったが、ものの5分でそれを上回る勢いだった。

面食らった岐阜も、それならばと撃ち合いを仕掛ける。
ハイラインの裏を狙ってボールを送り込むも、優也が飛び出してカバーする。

・・・エスナイデル元監督のPASIONが乗り移ったかのように、ハイライン・ハイプレスで岐阜をゴール前に釘付けにするジェフ。コーナーキックを立て続けに獲得すると、クリアボールを矢田が頭で繋ぎ、船山がバックヘッドで先制。
さらに2分後には、堀米のCKに新井が合わせて、2点を奪う。

攻勢は止まず、ほとんど前線はやりたい放題だ。
ルーズボールは ほぼ確保し、裏を狙う選手の前の前のスペースにボールが出る。
やること為す事が、ことごとくハマる。

余裕があるからだろう、CKをダイレクトボレーで叩き込む「スリーピング」のバリエーションも見せてスタンドを盛り上げると、22分には、左でボールをキープして、熊谷に戻し、そこからまたも縦パス。受けたクレーベが、走り抜ける船山へエロスティックなヒールパスを送り、美しい流れの中でゴールを奪ってみせた。

これまでの鬱憤晴らしのような一方的な攻勢。

皆、生き生きとプレーしていた、その中でも。
為田はスペースに出るボールを堪能していた。
クロスを上げる、 コーナーキックを奪う、あるいはカットインしてシュートを撃つ、持てる攻撃力をフルに発揮して、岐阜の先手を常に握り続けた。

彼だけでなく、堀米、茶島も、後ろからどんどん縦パスが送られるので、前を向いてプレーする機会が多く、攻撃時には常に4~5人が絡む厚みのある攻撃が出来ていた。

前半は、36分にクレーベが矢田のボールカットを上手く収めて、コースを狙った豪快なミドルで4点目を奪い、最後まで攻めきって、大きな拍手と共にハーフタイムを迎えた。

岐阜の立場からすれば、流れに飲まれたとはいえ、こうまで容易く縦パスを許す状況は想定していなかったのだろう。布陣、人選、様々な要因が、悪く出てしまっていたように思う。ゆえに、どの試合でも再現性のある攻撃とも思えなかった。

そして、岐阜とは往々にして点の取り合いにこれまでなっている。
それを思えば、ハーフタイムの大木監督の修正で、流れがどう変わるのかは恐ろしかった。

迎えた後半、やはり、前半のような一方的展開とはならなかった。
前に出る岐阜を、ジェフは慎重に受けてしまい過ぎて、立て続けにシュートを受けてしまう。岐阜の前線には、前田遼一が居り、虎視眈々と反撃の機会を狙っている。
53分には、カウンターから、その前田にシュートを振り抜かれてしまったものの、コースを外れて事なきを得ると言う、危ないシーンがあった。

ジェフは、為田、茶島の両翼で徐々にペースを取り戻すと、
シュートまでは至らないものの、五分の展開へと持ち込み、
63分には、クレーベが船山とのパス交換から、前半のヒールパスへの「返礼」とも言えるような、鮮やかなスルーパスを船山から受け取って、ゴール。この2人が噛み合って来たのは大きい。
5-0と、試合を一方的なものとした。

その後は、アラン、浩平、寿人と、攻撃的な駒を次々と投入。
守りには入らないという、江尻監督のメッセージ。

最終的な布陣は、為田、茶島の両サイドバックと言う、
極めて実験的かつ、不安定なものに。
試合終盤は、スタミナを使い果たして、選手の間隔も開いてしまい、布陣のバランスが悪くなってしまっていた。クリーンシートで終えたかったところだったが、これも前監督の時代によく見られた、「DFラインの裏へ一発のパス」でにあっさりと失点。

大勝ではあるものの、前監督時代の良さ、悪さが同居。
滑らかに機能した前半の出来を喜びながらも、何故試合を締められなかったか、冷静な分析が必要なゲームに最後はなってしまった。

この試合、前半の攻勢はなぜ出来たのだろう。
江尻監督が檄を飛ばした意識の問題もあるにせよ、それに加えて岐阜対策が功を奏したという事なのではないだろうか。岐阜は、専守防衛ではなく、前に出るチーム。ここ2試合、それぞれ2得点。攻撃には明るい兆しが出始めていた。その出鼻を挫き、守勢に回らせてしまう作戦が、この日はハマっていた。

より早く、ボールを前へ。
その為に、守備の問題はあるものの、乾をDFラインで先発させたのではないだろうか。
繋ぐだけでなく、ドリブルでもボールを前に運べる力のある乾。
攻撃を最大の防御と腹を括った起用が、岐阜の意表を突き、攻撃を機能させ、勝利を導いた。

が、どの相手にも、このサッカーが出来るかと言えば、それは難しい。
その一方で、これまで眠っていた攻撃サッカーを、「出来る」と確信させる、きっかけとなった勝利であったと思う。試合後のクレーベのお立ち台。田坂のシャツを着て、一緒にオブラディをする選手達。順位や状況にも関わらず皆が明るかったのは、この勝利が、逼塞した状況を打ち破る、ターニングポイントにきっとなると感じていたからではなかっただろうか。。

観戦したエスナイデル前監督も、チームの雰囲気にひとまずホッとしたのでは。
彼がこのチームに注いだ情熱、PASIONは、確かに選手達の中に宿っていた。
残る試合も、今日の前半のような戦いを一つでも多く出来るよう、磨き上げていって欲しい。
そうすることが、彼への恩返しにもなる。