久しぶりの風景 2020 J2第4節 vs栃木SC ●0-1

久しぶりの風景 2020 J2第4節 vs栃木SC ●0-1

2020/07/11(土)19:00
フクダ電子アリーナ
J2第4節
千葉 0(0-1,0-0)1 栃木

<得点>
34分 栃木 29矢野

千葉公式
栃木SC公式
Jリーグ公式

中断中、何度フクアリを訪れただろうか。
試合が開催されるはずだった日に、何度、青空に佇むフクアリを見上げ、
コロナウイルスの蔓延を恨めしく思っただろうか。


開幕戦から、4か月半。
厳しい制限付きながら、ようやく、ようやく。
スタンドに入る事が許される日がやって来た。

顔馴染みのサポ仲間に、「久しぶり」「元気だったか」と声を掛け合う。
が、遠方である事を厭わず、毎試合のようにフクアリにやって来ていた仲間はおらず、まだ今はスタジアムで観るべき時期ではないと、自らを律して観戦を控えた仲間も大勢いる。自分自身、フクアリで観る事が、いま、正しい判断なのかは、正直わからない。

が、観戦が許されるのであれば。
何某かのサポートをしたい。
その思いでチケットを買った。


15時過ぎ、事前搬入。横断幕を貼るために階段を昇る。
中に入ってゴール裏から見る、久々の眺め。
この景色を見る事が、こんなに難しい日が来るなんて思いもしなかった。

いつも通り、ではないフクアリ。
アウェイ側にも、ホーム側同様に横断幕が掲げられ、緩衝帯も設けられていない。
折からの強風。横断幕が煽られて、なかなか固定出来ない。

ふと、サマナラのマスターに気が付き、挨拶を交わす。
このコロナ禍の間、そして今も、フクアリに出店している店も厳しい状況を強いられていた。

クラブを取り巻く、様々な立場の人たちが、耐えて、待ちわび、準備に準備を重ねて、ようやくたどり着いたこの試合。
改めて村井チェアマンをはじめとした、Jリーグのスタッフ、各クラブ、もちろんジェフの関係者、それに医療関係者をはじめ、この危機に向き合っている全ての方々に尽力に感謝。

本当にありがとうございます。
後戻りすることなく、一歩一歩、前に進んでゆきましょう。

さて、前置きが長くなりました。
試合について書いてゆきます。


16時50分頃発表になった今日のスタメン。
メンバーは前節と変わらず。
壱晟、山下は、これで3試合連続のスタメン起用。

サブには、中断前に怪我を負った為田がメンバー入り。
他にも、見木、船山、川又が控える、非常に攻撃的なベンチだ。


ウォームアップ時には、大きな拍手が選手たちに送られる。
今出来るのは、この拍手と、タオマフを掲げる事くらいしか許されていない。
思いの籠った、熱い拍手が全周囲から沸き起こる。

遅れてピッチ練習に現れた栃木の選手達にも、大きな拍手。
そして、選手紹介時には、とりわけ佐藤祥への拍手が大きかった。


またしばしの静寂。
メイン側コーナー下から、さあいくぞと、声を掛け合っているのだろう。
普段は聞こえない、選手たちの声が聞こえてくる。

19時過ぎ、アメグレも、あっこちゃんも無い入場。
どちらのチームの判断か、エンドチェンジ。
円陣の後、選手がピッチに散り、キックオフの笛。
また大きな拍手がフクアリを包んだ。



開始0分、キーパー新井のロングキックからフリーキックを得たジェフ。
やや距離はあったが、これを田口が右足で直接狙う。
いきなり、素晴らしい弾道のシュート。
直接決まってもおかしくない一撃だったが、栃木GK塩田が、ファインセーブで弾き出す。


2分には、増嶋のロングスロー。
さらに、米倉が倒されて、今度は堀米のフリーキックと、ジェフの攻勢で試合の幕が開く。

しかし、栃木が動揺する事は無かった。
攻勢を受け止めると、ハードワークで逆にジェフを押し返してゆく。
10分、13分には、早いタイミングでシュートを選択。
ジェフゴールを脅かす。

栃木もシステムは、4-4-2。
互いの布陣は、がっぷり四つ、やっているサッカーの内容も近しい。
組み立てよりも、シンプルで縦に速い攻撃。
ロングスローも積極的に用いる、少ないチャンスを前提とした選択。
試合は、ミラーゲームの様相を呈しはじめた。




16分には、ジェフのこの日一番の連携攻撃。
田口のサイドチェンジから、米倉が右クロス。弾かれたボールを壱晟が拾い、そのままゴールラインまで一気に吶喊。
ラインギリギリから、折り返したクロスに、ダイレクトで山下が合わせる。

決まったか、と思ったが、シュートは惜しくもサイドネット。
多くのサポが腰を浮かせて、こぶしを握り締めていたが、歓声を上げる事なく、溜息と共に席に腰を下ろし直す。

この攻撃にも栃木は怯まない。
むしろ、さらに前からガツガツと守備をさぼらず、ショートカウンターを狙って来る。
その栃木の中心で、ハードワークの中心になっていたのが佐藤祥。
あらゆる場所に顔を出し、プレッシャーをかけてくる。

飲水休憩をはさみ、
27分には、この日三度目の決定機。


増嶋のスローを受けた下平がクロス。
ゴール前の混戦から、堀米が後ろ向きでヒールで蹴ったボールが、相手に当たってふわりと上がって絶妙なループシュートに。塩田の頭を越えてゴールへの軌道を描くが、これも間一髪で塩田が弾き、栃木は命拾い。

そして、ジェフにとっては、決める事が出来なかった事が、致命傷となってしまった。

34分、栃木の攻撃。
高い位置で奪ったボールを森が持ち込み、左サイド(ジェフの右サイド)の瀬川に展開。
間髪入れずにクロスを上げると、これが矢野貴章の頭にドンピシャ。
チャン、増嶋が挟んでも潰せず、強烈なヘッドを叩き込まれてしまう。


ジェフからすれば、また矢野貴章かといったゴール。
警戒していてもやられてしまう。
本当に彼はジェフ戦に強い。

アウェイで先制点を奪った栃木。
望外の得点だったろうが、田坂監督はやり方を変えずに、そのまま0-0のように、変わらずに前からの守備を継続。
ジェフは、堅い栃木の守備を攻めあぐね、時間の経過とともに、ボールをこね回すシーンが多くなってしまう。逆に栃木は、安定した守備をベースに手数をかけずにゴールを狙う。

まるで、ジェフがやりたいことを栃木にやられてしまっているかのようだった。

前半は、そのまま0-1で終了。
時間の経過と共に試合から、硬直感を感じる。


後半。
スタートから2枚替え。
左の堀米に代え、船山。
クレーベに代え、川又。
この交代は、前節もあった。

今のクレーベと、川又を比べると、
クレーベはどちらかと言うと起点になる動きが多く、
川又のは流れの中でボールをシンプルに前へ運ぶことが出来ている。
尹晶煥監督は、よりフィニッシュの回数を増やしたかったのだろう。

一方、船山の左サイドはしっくりこない。
堀米のように一直線に縦に突破してクロスを上げる、そんな選手じゃないのは分かってる。
やっぱり船山は、「王様」として中で起用した方が、攻撃力が格段に生きる。

この4年間ほど、外で起用されてはハマらずにベンチに追いやられ、シーズンが後半になると、結局中央の定位置に戻されて、「船山システム」のキングとして君臨する。そんな事を繰り返しているが、今年もそうなってしまうのだろうか。どうにも歯痒い。

交代は功を奏さず、さらにじりじりと停滞した時間だけが流れていく。

栃木は相変わらず前から、前から。
積極的な守備に自信を深めて、ジェフを網に引っ掛けようと待ち構えている。
その中心には背番号25。何度煩わしいと思ったろうか。時にはイエローも厭わず、
生き生きとプレー。猟犬のようにボールに食らいついて来る。

61分には、栃木の決定機。
一つ前のFKのこぼれ球を左で繋いで、ペナルティエリア内からクロス、右から突っ込んだ矢野がダイレクトでスライディングシュートを放つも、新井(章)が間一髪でブロック。本当に新井様々だ。最少得失点差を保ち、同点、逆転へ望みを繋ぐ。

67分 さらに交代。壱晟に代え、見木。壱晟にはスタンドから大きな拍手。
   見木はそのままボランチへ入る。

69分 飲水タイムを挟んで田口のFK。
   川又、山下と繋いでシュートまで持ち込むも、不発。ゴールが遠い。


前半の初めころのような、連携した攻撃はなく、
ボールの出しどころに窮してバックパスが増える。
そこからは、シンプルに前線の川又をターゲットにする割り切りもあるのだが、川又には栃木の30番田代が張り付いている。なかなか良い形でボールが受けられない。

セットプレー、あるいは、増嶋のロングスローが、ほとんどジェフの攻め手。
スタンドからは自然と、走り幅跳びの前のような手拍子が沸き起こるが、これは厳戒態勢下のルールではNG行為。

両翼は、オーバーラップを組み合わせた2枚刃、3枚刃の厚みがない。
ほとんど、後半は米倉の単騎突破か、あるいは下平のアーリークロス。


単調な攻撃に業を煮やした、尹晶煥監督は、
78分 米倉に代えて、負傷が癒えた為田を投入。
為田は左MFに入り、船山が右へ移動する。
しかし、為田の前にスペースが無い。
栃木にしっかりケアされ、良いボールがほとんど入る事が無かった。

結局、終盤にかけても、栃木の集中力が途切れることは無く、綻びを見出すことは出来なかった。


4分のアデシショナルタイムが過ぎ、最後の田口のFKも不発。
試合終了の笛が鳴ると、ため息がフクアリを包み、
新井(章)が、悔しさを露わに何やら叫んでいた。

田坂監督をして、「会心のゲーム」と言わせてしまった試合運び。
ここまで勝利の無かった栃木に初勝利を献上。
昨年の最終戦に続き、フクアリでの勝利を許してしまった。

前節水戸戦が、相手をハメたゲームだったなら、
今節は、相手にハメられてしまったゲームだった。

前半、いくつかあったチャンスを決められず、逆にワンチャンスを生かされてしまった。
まるで、立場を入れ替えた水戸戦のよう。
そして、そのビハインドを最後まで覆せなかった。

中断の影響があったとは言え、猛練習で鍛えて来たはずのフィジカルで栃木に上をいかれ、その中心に佐藤祥が居たのは、二重にショックだ。
(半面、成長が嬉しくあるのも歯痒い)

守りを固められた時に、ガードの上から殴りつけるような攻撃のオプションはまだない。
厚い戦力も、この日は流れを変える効果的な交代とはならなかった。

試合後の尹晶煥監督のコメントには「フィジカル」、相手の「強固な守備」と言った言葉が並び、やりたいことを相手にホームでやらせてしまった悔しさが滲む。

紙一重のゲームではあった。
守備については、再開後3試合、大きな問題は無い。
ただ、いずれの試合も、相手にボールを持たれる時間が長く、セカンドボールをジェフが拾えていない。ブロックを作って守備をした後、どうマイボールにして攻守を切り替えて反撃に移るか。その部分の詰めが今後必要になる。

イメージするのは、2001年のベルデニック監督が率いたジェフ。
奪った後の速攻の意思統一をし、攻撃の手数と、鋭さを磨いていってほしい。


試合後、選手達の場内一周。
声をかける事は出来ないが、サポからは、拍手が送られ、ユニフォームをアピールしたり、タオマフを掲げていたり、何とかそれぞれが思いを伝えようとしている。選手たちも、普段の試合よりも、まじまじと、サポーター一人一人を見つめて、応えてくれていたように思う。

幸い、雨に降られずに良かった。
横断幕を片付け、階段下では、馴染みのスタッフと挨拶を交わし、敗戦の悔しさと、再開できた喜びを語り合う。ふと振り返ると、普段と変わらないフクアリが夜闇に浮かび上がっていた。


この風景も久しぶりだ。
負けてしまったが、こうしてその悔しさを顔を合わせてぼやき合えるのも。
やはり、スタジアムは良い。フクアリは良い。

2,717人のと言えど、拍手をし、ザワつき、落胆し、身を乗り出し、試合の流れに乗る観客たち、それに応えようとする選手たち。スタジアムは、一体で作るものだと再確認した一日だった。

それだけに、本当の日常、いつも通りのフクアリが一日も早く戻って来てくれる事を、やれることをやって願うばかりだ。
誰一人欠けることなく、フクアリで「WIN BY ALL!」を叫べる日まで。