「魔境」J2を思い知る敗戦 2022 J2第1節 vs岩手 ●0-1

「魔境」J2を思い知る敗戦 2022 J2第1節 vs岩手 ●0-1

2022/2/19(土)14:00
フクダ電子アリーナ
J2第1節
千葉 0(0-1,0-0)1 岩手

<得点>
26分 岩手 18宮市(17中村のFKをダイレクトボレー) 

千葉公式
岩手公式
Jリーグ公式


何もジェフの良さが出せないまま、開幕戦が終わってしまった。
こんなはずではなかった。励ますべきか。怒りをもって叱咤激励すべきか。
挨拶に来る選手たちに、何をどう伝えていいか分からず、ゲーフラを掲げて選手達の表情を見る事しかできなかった。

昨年終盤の積み重ねを継続して、勝負の年と位置づけた2022シーズン。
開幕の期待感は、この一戦の結果をもって、危機感へと裏返ってしまった。

開幕戦の相手は、J3から昇格した岩手。
「そういう相手」に、これまで何度も苦杯を嘗めさせられて来た。
監督も、選手も、サポーターも、それは嫌というほど分かっていて。
開幕戦、それに続く序盤戦が、シーズンを決めるといって過言で無いことも分かっていた。

にも関わらず。

試合時間が進むほどに認めねばならないのは、
「力負け」と言っていい試合内容。
そしてホームでの敗戦に、
この「魔境」と称される、J2リーグの厳しさを改めて思い知らされたのだった。


肌寒い2月の曇天。
スタメンには、ちばぎんカップから、左WBを秋山→末吉に変えただけのメンバーが並んだ。

新戦力は、風間1人のみ。
既存戦力の引き止めに成功した一方、新戦力による上積みは、開幕戦の時点ではほぼ出来なかったとも言える。

観戦したちばぎんカップ以外、開幕前の詳しい状況は伝わって来ない。
ただ、練習試合では勝てていないことと、その原因として特にディフェンスのメンバーが直前まで揃わず、ベストメンバーを揃えて活動が出来なかったらしいことは、公式の情報などから読み取れる。コロナの影響もあったが、それはどこも同じこと。
要は、開幕に合わせられたか、どうかだ。


キックオフから主導権を握ったのは、アウェイの岩手だった。
秋田監督の作ったチームは、ほとんどの選手が180cm以上。フィジカルに長けた選手が、シンプルで決断力のあるプレーをする、魅力あるチームだった。

初めてのJ2、アウェイだからと言っても気後れすることなく、序盤からジェフに前からプレッシャーをかけボールを自陣に運ばせない。フィールドを大きく使った展開も、反対に狭いエリアにボールを通すチャレンジも、躊躇することなく仕掛け、フィニッシュで終わることを目指す。

前線のブレンネル選手がボールを収めて起点になり、周囲の攻め上がりを促す。
彼の周りを固める選手も、シンプルで球離れが早い。
そして、何より元ジェフの中村太亮が、左からゲームをつくり、セットプレーで厄介極まりない危険なボールを供給。それを体格に優る選手が競り勝ち、決定機に繋げる。

先制点も中村太亮のアシストだった。
岩手の右サイド、センターサークルから少しジェフ側に入った浅い位置から、逆サイドのペナルティエリアの大外で待ち構えていた宮市剛へ、糸を引くようなボール。それをダイレクトボレーで叩きつけられた。まさにゴラッソ。
あの位置から一気にゴールに繋げられてしまうとは。。。

ゴールへの道筋、チームとして生かす強みがハッキリしている、迷いの無さ。
これまで戦って来た、J3上がりのチームに共通する、「このサッカーで昇格したんだ」と言う自信が伝わってくる。

ジェフは、その反対にプレーに迷いばかりを感じた。
悪い時にありがちだが、矢印の向きがバラバラで、出しどころを見つけられず、手数をかけ、バックパスやパスミスが続く。


ソロモンにはボールが届かず、届いたと思っても、囲まれ、収めきれない。
両翼も、シャドーも、ボランチも、去年の終盤のような、あるいはちばぎんカップでみられたような、密度の濃い連携が出来ない。
守備がハマらず、焦りばかりが目立つ。


末吉が抜け出して得たFKも、田口が壁に当ててしまう。
先制点を食らったのは、その直後だった。
流れを変えられそうなきっかけになるシーンを掴めず、逆に先制点で勢いづく岩手。
追加点だけは何とか許さず、ほうほうの体でハーフタイムに逃げ込んだ。

「慌てることはない。後半の時間を有効に!
 相手を揺さぶるプレーを心がけること。
 まだ何も終わってない。ミスを恐れずに!」

後半に向けて、尹晶煥監督が発した檄は、思うに任せない前半を端的に表していた。

だがその後半に向けて交代もなく、前半と同じような展開が続く。

イキイキとプレーしていた、中村太亮。
その反対に持ち味を出せず、太亮を押さえる事も出来ていなかった福満。
ここのマッチアップには早めにメスを入れるべきと見えていたのだが。

最大のチャンスは、63分。
田口のCKに新井一耀が頭で合わせたシーン。
ライン上にいた、中村太亮にヘッドでクリアされてしまう。

交代1枚目は、そのCKを蹴る前。62分に風間に代えて、サウダーニャを投入。
しかし、彼までなかなかボールが通らない。

終盤、77分には、米倉と高木を入れ、前線をソロモンとサウダーニャの2トップに変更。ボランチを田口、見木の組み合わせとし、その前に高木を配置する。
ようやくヨネからソロモンにクロスが供給され、サウダーニャも強引にミドルを打ち始める。
が、精度は低く、焦りもあってか、決定機とは言えないものだった。


末吉のドリブル突破、高木のミドルなど、個々の意地は感じるが、チームとして畳みかけられない。5分のアディショナルタイムも、活かしきれず試合終了。

ピッチに崩れる選手たち、スタンドの重苦しい沈黙。
試合終了と共に落ちてきた大粒の雨。
苦い開幕戦となってしまった。

この試合の結果は、もう一度ジェフの置かれた立ち位置を再確認するものになった。

シーズン前の期待は大きかったけれども、その期待感は現実の強さにまだ繋がってはいない。かといって、昨季まで2年間で積み上げたチームとしての骨格が無くなるわけでもない。

そして、この試合では、個々の持ち味も、チームとしての良さも発揮できなかった。
誰かに敗戦の責任を負わせようとするのも意味のないことだ。

結果は重たいが、42試合の中の一試合。
開幕からの10試合を一つの区切りにするなら、そこをどんな戦績で終えられるか。
シーズンを俯瞰し、否定のループに陥ることなく、客観的に勝敗をとらえてゆかなくては。

切り替えて次節に臨むこと。
敗戦を引きずるのは、これから対戦する相手チームに利するだけだ。
残り41戦に向けて顔を上げよう。