「こういう試合」を勝ち切った意義 2023 J2第33節・ロアッソ熊本戦

「こういう試合」を勝ち切った意義 2023 J2第33節・ロアッソ熊本戦

2023/9/3(日)19:00
フクダ電子アリーナ
J2第33節
千葉 1(0-0,1-0)0 熊本

<得点>
86分 千葉 11米倉(20高木のクロスをGKがファンブル。拾った9呉屋が11米倉に繋いで押し込む)

千葉公式
熊本公式
Jリーグ公式

藤枝、磐田に連勝して迎えた9月最初のホームゲーム。
相手は熊本。非常に難しい相手だ。
ここまで、11試合勝ち無しと苦しむ一方、水曜日には天皇杯でJ1神戸をPK戦までもつれ込む熱戦で撃破している。疲労に加え、長距離移動、さらに出場停止に怪我人も。
どこまでもアウェイチームに不利な条件が重なっている。

が、「そういう相手」に対して滅法弱いのが、過去のジェフだ。
有利、有利と言われるほど、思い通りの試合運びが出来ない。塩試合の末に、スコアレスドロー、あるいは主導権を握りながらミスで、カウンターで、セットプレーで、0-1で敗れる。そんな苦い思いばかりが頭に浮かぶ。
加えて、今季のアウェイでは、試合終了間際に失点しドロー。

スタメンは前節負傷した佐々木に代わって新井一耀が13試合ぶりにスタメン復帰。
ベンチにはメンデスが初めて入った。

雨予報だったが、試合前は何とか天気がもって、夕焼けがフクアリを染めていた。

熊本は疲労が残るだけに、もしかしたら戦い方を変えてくるのではとも予想したが、大木監督、その選択はしなかった。これまで通りにボールを繋ぎ、素早く前線を目指し、ジェフがボールを握れば、前からのプレスで奪いに来る。

ジェフからすれば、籠られるより、出て来てくれた方がやりやすい。

それにしても熊本の各選手、疲労を感じさせない動き。
全員がランナーズ・ハイ状態で、ネジが飛んでるんじゃないかと思わせるほどに運動量がある。プレスもサボらないし、容易にはサイドからのクロスも上げさせないし、何よりキーパーも含めて全員が、危ないシーンで身体を張れる粘り強さがある。

前半、全体的にはジェフのペースではあった。
が、要所を押さえられて得点が出来ず、攻めあぐねては熊本を釣り出す為、囮の餌を撒くように、GK鈴木にまでボールを戻して組み立て直しを強いられる。

5分の田口のFKに始まり、CKのこぼれ球に田中の強烈なロングシュート、ショートカウンターから風間のパスにドゥドゥが抜け出したコントロールショット、高い位置でボールを奪って風間のクロスに小森がダイレクトで合わせバーを叩いたシュート、さらに風間のパスから田中の右からの至近距離のシュート、日高が倒されてあわやPKのシーン、、、と、惜しいチャンスは作る。

が、決めきれない。
嫌な空気、焦りが、じわりとジェフに漂う。
熊本は、数は多くないものの、攻勢をかけるジェフの裏を狙って、シンプルにゴールを狙う。前半は、0-0のまま終わった。

後半に入り、ジェフにも疲れが見え、双方の運動量の差が埋まって来る。
前半攻め込んだ分、そこで体力を消耗した感じだ。

熊本は、GK田代が前半のセービングで気を良くして当たっている。
前半をゼロで凌いだ事で、勝機を見出しつつあったのだろう、各選手の動きもさらに粘っこく、ジェフの攻撃がなかなか思うようにテンポが上がらない。ゴール前を固められると、シュートを撃つよりも、より確率の高いポジションの選手を探してしまう悪癖が顔を出し、押し込みながらもシュートの数は増えず、逆にカウンターを浴びる機会が徐々に増える。

状況を打開するため、1枚目のカードはドゥドゥに代えてヨネ。
田中が左MFにポジションを変更。

後半も半分が過ぎ、0-0のまま飲水タイム。
スタンドからは大きな「WIN BY ALL!」のコール。
さらに選手交代で、田中、風間に代わって高木、小林がIN。
見木が1つ前にポジションを上げる。

「守備の強度を維持することを最優先にした」と小林監督。

終盤戦は一進一退。
是が非でも勝ち切りたいジェフと、アウェイであろうと勝利するしかない熊本。双方の勝利への執着心がぶつかり合って激しい戦いに。ジェフは「WIN BY ALL!」「あっこちゃん」、熊本は「カモンロッソ」と、スタンドの応援合戦も激しい。

どちらに転んでもおかしくなかったが、86分、ゲームを動かしたのはジェフ。
左サイド、途中出場の高木のライナー性のクロスを、GKが掴み切れず、こぼれたボールを呉屋がしぶとく拾ってゴール前に詰めていた米倉へ。

倒れ込みながら右足で放ったシュートは、ゴール内で掻き出されたものの、ラインを超えていた。

ついに先制。
歓喜の米倉、呉屋、小林が、ベンチに向かって駆け出し、大きな輪が出来る。

試合時間はまだ残っている。ATは6分。
完全に籠る事はせず、攻めの選択肢は残しながらも時間を使うジェフ。
一方の熊本は、ボールを奪えば即前線へ。足は止まらない。
ATにも同点を覚悟しなければならないシーンもあったものの、シュートは枠を捉えず。

かろうじで凌いで、勝利。三連勝をもぎ取った。

倒れ込む熊本の選手達、特に奮闘していたGK田代選手の姿が、この試合に賭けていた熊本の選手達の思いを物語っていた。ほんの僅かな差で、倒れ込んでいたのは、ジェフの選手達だったかもしれない。しかし、勝ち切った。

劇的な勝利だった。決勝点を決めたのが米倉と言うのも大きい。
最初に心配していたように、「こういう試合」で勝てないのが、過去のジェフだった。
だからこそ、「こういう試合」で勝ち切った事に大きな意義がある。

ここで勝たなくては。その繰り返しが、J2降格以来のジェフだった。
それを覆してみせた。
これまでとは、何かが違うと見せつつある。

これを続けられれば。
もう一歩前に進めるかも知れない。
上位との差はまだある。けれど、勝ち続ければ手繰り寄せられる距離に近づいて来た。

その為には、6,339人。
フクアリでこの人数では全然足りない。

風間が“「良い試合」で終わらせず勝ち切れたのはみんなが作り出してくれたフクアリの圧のおかげです。”と、投稿していたけれども、この先に行くには、もっともっと「圧」力が必要だ。

終盤戦。
一人でも多くのジェフサポをフクアリに結集して後押しを。